第3話 翌日の苦痛

「うう……」


「おはようございます、よく眠れましたか?」


「一睡もできなかったよ」


 寝不足とめまいの感覚がものすごくつらい。そう思いながらベッドから思いっきり出てスキップを始める。


「ど、どうかしましたか……?」


「どうもないよ、ただ多動を消費してるだけ」


「多動……?」


 エニフンを飲まないと、口が軽くなってひたすら動きまくるようになる。アスペドンを飲まないと、罵倒が多くなったり目上の人に対してタメ口になったりする。どちらも必要だから飲んでいるのにね。


 ああ、あの家にある薬だけでも持ってこれればいいのに。


「今日の予定は何?」


「今日は適性検査の結果を聞いてもらいます」


「誰が分析しているの?」


「最初は別の人がやっていたのですが、今はライラ・イザード様がやっておられます。」


 当然だけど聞いたことない名前だ。ただ、様をつけているところから偉大な人なのかと推測できる。


 そう思っていると、侍女の一人が部屋に入ってきた。


「適性検査の結果が出ましたので、こちらにお越しください」


「わかりました!」


 私は侍女さんについていくことにした。




 現在、私は目を極限まで見開いている。適性検査をしていたところっぽい研究室に行ったところまではよかった。


 問題は、目の前で薄紫色のシンプルなワンピースを揺らしながら走ってきた人のことで。


「玲香ちゃん?」


「初めまして、大賢者のライラ・イザードと申します。よろしくお願いします」


「玲香ちゃん、だよね?」


「……まあ、ごまかしても無駄だよね。知ってた」


「適性検査の結果は何?」


「膨大なMPと強い魔法の力……魔力を宿していることがわかったわ。その反面、力は弱そうね。攻撃魔法と回復魔法と補助魔法のどれも強そうよ。以上のことから、神代有紗は賢者や大賢者に向いていることがわかったわ」


「いや、賢者って何?」


「賢者は三種類以上の魔法が使える魔法使いね。四種類以上の魔法が使える人は大賢者と呼ばれたりするわ」


 とりあえず、適性があることは理解した。魔法を使うのも楽しそうだ。ただ、一つだけ気になることがある。


「それってこの世界の人たちのお眼鏡にかなうものなの?」


「……今日アスペドン飲んでないわよね?」


「飲み忘れたんじゃなくて飲めなかったの!」


「冗談よ。お眼鏡にかなうどころか、度数がきついコンタクトをつけていてもかなうのではないかしら?」


「そうなの?」


「もともと有紗ちゃん自身に用があったのですから」


「え?」


「……有紗ちゃんは何も知らないようね」


「な、なに?」


「ところで私、ちょっと野暮用があってさ」


「いや、ちょっと待ってよ!」


「……あの家にエニフンとアスペドンがある場所知らない?」


「キッチンの上真ん中の引き出しに袋があるから、まとめて取ってきて?」


「お安い御用ね。じゃ、このお城の人のいうことを聞くのよ!」


 ライラさんはそう言って多分現代日本に行ってしまった。お城の人のいうことか。ライラさんもお母さんみたいなこというんだな。まあ、家庭教師だしその毛も入ってるのかもしれない。


 そう思っていると、研究室に人が入ってくる。


「次にアリサ様にはとあるエルフに会っていただきたいのです」


「エルフ?」


 なんか異世界ファンタジーっぽくなってきた。エルフって長耳で長命なあの種族だよね?そうだよね?なんかワクワクしてきた!


「そして、アリサ様の仲間でございます」


「え、そうなの?勝手に決めないでよ」


「とてもお強いお方ですので……」


 そういわれてもな……自分の仲間ぐらいは自分で決めたいけど……そうもいかないのかもしれない。強いって言われてるし、一回ぐらいなら会ってみてもいいかも。


「そういうなら連れてきて?」


「わかりました」


 去っていく侍女を見ながら思った。さっき強い人って言ってたとき、なんで少し口ごもったんだろう?ってね。


 とにかく、逃げれなさそうなのでとりあえず会うことにした私でした。

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異世界召喚された王国がやたらホワイトな件〜この異世界、発達障害持ちに対してやたら優しいんですけど〜 Mtoo @Mtoo

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