第2話 第一戦

 雄三がグビリとビールをラッパ飲みする。


「受けてみよ! 武冷功一の型『雄野次虐愚オヤジギャグ』」

 背広をバサッと一瞬で脱ぐとマントのようにうずめの目の前に広げる。


(マズイ)

 うずめのコメカミに電流のようなピリピリとした感触が走る。

 彼女の戦闘感がこの場に居るのはマズイと警鐘を鳴らす。


 体制を崩しながら後ろに飛び退くと、今いた場所に筋肉質の脚が横一閃に飛んできた。


 上段を背広で目眩しさせてからの下段回転蹴り。

 ありがちな技だが、洗練されたその動きは必殺の一撃になりうる威力を持っていた。


「スーツを脱いでスーッとする」

「オヤジギャグは言うんかい!」


「コレはオヤジギャグであって、オヤジギャグであらず! 自らの動きを言葉に乗せる事で最大のパフォーマンスを発揮する! 言わばマントラ!」


「言ってることが全部分からないし! マントラも分からない!」


「おのれの無学を恥よ! 二の型『刹苦破裸セクハラ』」

「うぉぉ! あぶな!」

 横一閃の手刀紙一重でかわす。


「髪切った?」

 うずめの前髪がハラリと数ミリ落ちる。


「ちょっとぉ! なんてことしてくれんのよ!」

「二の型もかわすか!」


「かわすか! じゃ無いわよ! 乙女の髪の毛を何だと思ってるのよ!」

「数ミリ切れただけだろう? 別に何も変わってないぞ?」


「あ! 今言ってはいけないこと言った!」

「問答無用! 三の型『加冷集かれいしゅう』」

 雄三は、うずめから一気に距離をとり、仁王立ちの状態で息を吸いながら瞑想する。


「どうやら貴方には乙女の髪の大事さを教えなければいけないようね」

「最早手遅れ! 最終型『乱血気騒技らんちきさわぎ』」


 突然辺りの気温が急激に下がる。

「さ、寒い!」


「ハッハッハ! 寒かろう! オヤジギャグ、セクハラ、カレイシュウにより、私の周囲の空気は冷え切っている! 寒くてもう服を脱げないだろう!」


「それ、ただの嫌なオヤジじゃ無い!」

「う、うるさい! くらえ!『腹芸乱舞』」

 雄三が腹部に力を込めると、ワイシャツのボタンが弾け飛ぶ。

 それにより露出した太鼓腹を器用にカクカク動かして攻撃してくる。


「え、ちょ、シンプルにキモい!」

「いちいち傷つく事を!」


「髪の毛切る方がずっと悪い事でしょ!」

「たかが髪の毛だろうが! それが数センチでも誰も気づかんわ!」


「ふぅ……お前は私を怒らせた……」

 今までと雰囲気が一変した。


 無言で上着を一枚脱ぐ。

 そして、人差し指を一本相手に見せつけるように立たせた。

「一枚よ、貴方を倒すのに一枚で充分だわ」

「舐められたもんだな! ならば我が奥義受けてみよ! 奥義!『猛狼堕志モロダシ』」

 パァンという破裂音と共に雄三の衣服が全て弾け飛ぶ。


「うぉぉぉ! くらぇぇぇ!」

「四十八手裏の三『釣瓶落とし』」


 突進してくる雄三の勢いを殺さず、巴投げのような体制で迎え撃つ。

 そのまま溝落ちに向かってオーラを込めた渾身の蹴りを喰らわす。

「ゴボオァァ」


「私の技でおイキなさい」


 雄三の身体がくの字のまま浮き上がった。

 そのまま無防備な相手に向かって流れるように脚を絡ませ、顔面を床に叩きつけた。


 全裸でうら若き乙女の脚に顔を埋めながら昇天する雄三。


「いつ何時でも挑戦を受ける! 全門下生に伝えぃ!」

「お父さん! 何言ってるの!」


「ははっ!」

「え! 嘘! 他にも人がいたの?」


「当たり前だろ、見届け人連れてきてるに決まってるだろ!」

「そんな当たり前知らないわよ!」


「だが、油断するなようずめ! こやつは一門の中でも最弱の部類、今後第二、第三……」


「お前がいうなぁ! 冗談じゃないわ! こんな事やってられるかぁぁぁ!」


【後書き】


色々新作出してるんでよければ見てください。


  ・転生した先の物語、原作者が俺なんですが……誰よりも設定知ってる俺が世界最強じゃね?

   

   長編なんで、そこそこPVもらえてるけど離脱率が大きい、やっぱりもっと前に盛り上がりポイント持ってくるべきだったと反省

   https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826


  ・何も合成出来ない合成師、追放されてから本当の能力を知る


  短編では今一番人気。

  ただ、これも完全なザマァ展開の方が面白かったかなぁ?と悩んでおります。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093086772837717


  ・ワガママ言ったら、女神に木に転生させられました。

   

  これは長編のプロローグみたくなってしまった作品。

  でも、全作品で一番上手くまとまった気がする。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093088297802725


  ・殺人人形と欠陥研究者の歪な愛情表現

  

  これはラブコメか? と物議をかもした作品。

  個人的には好きな作品です。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093086434951652


  ・魔王になったんで世界征服しようと思ったら聖女が可愛かったんで、人間に化けて勇者になります。

   

  一応ラブコメとして完成した作品。

  割と頑張ったんだよなー

  https://kakuyomu.jp/works/16818093089228504531


  ・私と世界征服どっちが大切なの

 

  ラブコメとして頑張ったんだけど中途半端になった作品。

  これはこれで、色々展開できそうで、今の所中途半端。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093088764915127


  ・ダンジョン裁判!法治国家の規律と秩序を守る為、今日も私の拳は血に染まる。


  これも、裁判シーンをもっと考えれば良いんだけど、俺書くと某逆転〇〇みたくなってしまって、流石に良いのか?って躊躇しました。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093078672786232


  ・雫 ー無能無力なヴァンパイアハンター物語ー


  これ、もう少し色々案があるんだよね。

  気になる人居たら(星つけて)気になるよ宣言して欲しい。

  https://kakuyomu.jp/works/16818093085810402406


  ・愛する人がゴーレムになりました。(カクヨムコン短編参加用)


  これはまぁ、個人的に気に入ってるだけの作品の記念参加

  https://kakuyomu.jp/works/16818093087225038526


忌憚のないコメントお待ちしています。

あ、小説読まないでコメントするのは無しね。

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裸漢拳遣いの乙女〜四十八手の身技にて、いかなる漢も昇天よ!〜 山親爺大将 @yamaoyajitaisho

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