𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲3

「着きました」


そう言ってキユはある部屋のドアを開けた。中は案外、図書館よりも狭い。


けれども、どことなく高級感が漂っていた。「あ、ありました。これですね」


そう言いながらキユは私に


『星のカケラについて』という本を渡した。本自体は分厚くて辞書みたいだ。


私はペラペラとページを捲りながら本を読む。


すると、あるページが目に留まった。


そこには色ごとについての


金平糖の効能が書いてあった。


✎︎____星のカケラの効能_____


『月のカケラ』


周りをほのかに光らすことが可能


『海のカケラ』


時空を歪ませることが可能


※シュラユ魔法発動


『夜空のカケラ』


空から輝く雪を降らせることが可能


『雲のカケラ』


記憶をリセットすることが可能


※リセットする記憶は指定可能


✎︎_________________


とりあえず月のカケラっていうのは


来る前に食べた金平糖のことかな。


それよりも海のカケラと雲のカケラっていうの気になるな...。


てか


「シュラユ魔法って何...」


心の中で呟いたはずが声に出てしまっていた。


「たしか昔、『過去を変えることができる魔法』って父さんが言っていたような...」


過去を変えれる魔法...。


これがあったらキユとシウのお父さんの


あの出来事をどうにか出来たりしないかな...。


「ん?あれ?このページ、下になんか書いてありますよ?」


そう言ってキユは私が先程読んでいた


ページの下の方を指さした。そこには


┈┈┈┈ ✈︎


【ミラ】


自分の周りをほのかに光らせることが出来る


【クウラ】


夜にすることが出来る


【プシウ】


金平糖の形をしたランプを作ることが出来る


この情報が誰かに役立ちますように ┈┈ ✈︎


という文字が書いてあった。


「この人親切ですね〜」


「というか父さんが手に入れるまでに書いたって考えたら、元々この人のだったのかな?」


「待って、これおばあちゃんの字だ!」


私はまじまじと字を何度も見返したが、


完全におばあちゃんの字と一致していた。「でもなんで父さんがリカの本を持ってるの?」


分からない。


けど、それは


「本人に聞くしかないでしょ」


「どうやって?」


「いいから見てて」


そう言いながら私は青色の金平糖を 口にした。


瞬間、目の前の空間が歪み、


謎のポストが現れた。


「紙とペン、ある?」


「え...?あるけど...」


「早く持ってきて」


「?...はい!」


何かを察したのかキユは急いで


私に紙とペンを渡した。


その紙に私は


[ 初代猫の当主様と初代犬の当主様は仲良く過ごすこと ]


と書いて、目の前のポストに入れた。


すると、その謎の空間は消え、


ボーンという鐘の音が鳴った。


「これで...いいのかな?」


入れたはいいものの変化という変化は


何も起きなかった。


「じゃあ、何かあったら報告するのでって言うことでいいですか?」


「じゃあそれで。というか敬語じゃなくていいよ」


さっき敬語外してた気がするけど...。


「ぁ、じゃあまた」


「うん、またね!」


そう言って私はお城から出ようと、


玄関の扉を開けるとそこにはシウが立っていた。


「え、シウ...なんでここに?」


「僕のこと裏切ったんですね」


「え、なんのこと?」


「しらばっくれてもダメですよ!」


「もうそいつの仲間なんでしょう?!」


そう言ってシウはキユのことを指差した。「なんか誤解が...」


「裏切り者!」


そのとき涙目になりながらシウは私を睨んだと同時にシウは私に剣を向けた。


「鈴さん!」


後ろでキユが私を呼ぶ声が聞こえる。


でも、今はそれよりもこっちをどうにかしなきゃ。


でもこれ、どうにも出来ないんじゃ...。


そう思った途端、


「シウ!剣を下ろせ」


とシウの後ろから背の高くてシウと


よく似ている猫の男性が歩いてきた。


その声にシウはビクリと肩を動かし、


声のした方を見た。


「父さん...?」


「父さん、なんで生きて...」


そう言っていたソウの顔は涙で


ぐちゃぐちゃになっていた。


その時、後ろから


「ねぇ、僕の父さんは!?」


とキユがオドオドしている声が聞こえてきた。


「王室に行ってみるといいだろう」


誰に対してでもないキユの問いに


ソウのお父さんは答えた。


するとキユは話が終わる前に


王室に向かってしまった。


私はキユを追いかけることにした。


私が王室に着いた時には


「父さん!」


と言ってお父さんらしき人に抱きついているキユの姿があった。


なんだか2人を見ていると


おばあちゃんが恋しくなる。


「鈴、さっきはごめん」


私が外に戻ると、


申し訳なさそうな顔をしたシウが居た。


「さっき父さんから聞いたんだ。鈴のおかげで父さんは生きてるんだって」


「本当にごめん」


そう言いながらシウは深々と頭を下げた。


多分、お父さんに怒られたのかな?


そう思った私の口角は少し上がっていたような気がした。


「あと、キユ。」


シウがキユの名前を呼ぶとキユは


「何?」


と素っ気ない返事をした。


「キユも僕と同じ気持ちだったんだね」「.....街、で暴れてごめんなさい」


キユはシウの言葉を聞いたあと、


頷き謝った。


それよりもキユのお父さんが


驚いた顔をしていたのは黙っておこう。


「この後、鈴はどうするの?」


「家に帰るよ」


「「そっか」」


その言葉を聞いた2人は悲しげな顔をしていた。


「あ〜...安心して。また戻ってくるかもしれないし!」


と私は取って付け加えたようなことを言った。


「まぁ、もしかしたら鈴さんの子供が来るかもだな」と後ろでシウのお父さんが冗談を言っていた。


「そうかもしれませんね!」


「じゃまたね!」


「「うん!また!」」


そう言って私はシウ達に手を振って


背を向けた。


てかあの魔法あんまり使わなかったな...。


せっかくおばあちゃんが書いてくれたのに...。


まぁ、もしかしたら誰かのためになるかもsれないからいっか。


あ、そういえば記憶をリセットすることが


出来る金平糖があった気が...。


そんなことを考えながら


私は金平糖が入ったビンの蓋を開けた。


「あ、これだ」


そう言いながら私は雲色の金平糖を手に取った。


私はその金平糖を口先まで持っていったが


食べるのはやめた。


どうせならこの話をおばあちゃんに


話したいと思ったからだ。


『猫たちと別れた少女はある本のページの話を思い出しました』


『その本は少女が持っている金平糖の中には記憶を消すことが出来るという金平糖がありました』


『少女は口先まで金平糖を持っていきましたが、記憶を消すのはもったいないって思いました』


『そして少女は金平糖を食べるのをやめました』


『少女は急いで家に帰り、待っているおばあちゃんにその話をしましたとさ』


「めでたしめでたし」


「ママ!明日もこの話してくれる?」


「うん、いいわよ」


「ママ?ママはこんな金平糖もうちにあるかな?」


「うん、きっとあるわよ」


「そしたら私もこの絵本みたいに────」




𝐹𝑖𝑛

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星の欠片を口にして こむぎ @Okome_komugi

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