𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲2
案内された場所は
街の雰囲気に合わなさそうなお城だった。「どうぞどうぞ、入ってください」
「はぁ...」
中は案外シンプルで見かけ騙しだなって
思っているとそれに気づいたのか
「外見に費用を使いすぎたんです。だから中はシンプルになっちゃって...」
と笑いながら言っていた。
長い廊下を歩いて、着いた場所には
『シウの部屋』と書いてあった。
「シウって誰?」と私が聞くと
「シウは僕の名前です。リカがつけてくれました」
と答えた。
私のおばあちゃん、どんなにすごい人だったんだろう...。
というか使いってことはおばあちゃんは本当に魔法使いだったってこと?
でもどうしてずっとここで暮らさず
あの駄菓子屋にいるんだろう...。
「こちらへ座ってください。僕は向かいの席に座るので」
「あ、うん...」
というかこの猫しっかりしてるなぁ...。まるでおばあちゃんみたい...。
「じゃあ本題を話しますね」
「リカは昔、魔女だったんです。それで僕を生み出して街1番の魔法使いになったんですよ!」
「でも、幸せはそう長くは続かなかった」
どんどん話していくうちにシウの表情は
暗くなっていった。
「いつからか隣街の犬達が僕らの街にやって来たんです」
「僕は皆が怖がるから直ちに帰って欲しいって頼んだところ、建物や看板などを壊して暴れ始めました」
「え...」
「なので仕方なく僕はそいつを剣で斬りました」
「今思えばあれは間違いだったのかもしれませんね」
そう言ったシウは悲しげな表情をした。
「ねぇ、その犬達って今もまだ暴れてるの?」
と私が聞くとシウは
「そうですね....」
と言いながら窓の外の景色を見た。
その時、お城内に警報音が鳴り響く。
「最悪だ。彼らが来てしまった!」
そう言い残してシウはお城を出ていった。
私は状況を理解できなかったが、
出ていったシウを追いかけた。
「もうこんなことはやめてください!」
外に出ると犬達に剣を向けているシウが居た。
「俺は正しいことをしてるだけだ!」
「そんなわけない!どれだけ皆が悲しんだと思ってるんだ!」
シウがリーダー的存在の犬にそう告げると「お前だって何も知らないくせに...」
と呟きながら私たちに背を向けて帰って行った。
周りからは
「シウ流石!!」
「無暴力で敵を倒したぞ〜!!」
などという声が上がっている。
もし、あの犬はなにか理由があってこんなことをしてるのだとしたら...。
そんなことを考えながら私は
シウの横顔を見た。
「街がボロボロになってしまいましたね...」「でも、みんなで直せば問題ないですよね!」
そんなことを言いながらシウは笑顔で
私に問いかけてきたが、
私は上手く返事をすることが出来ず、
ただ頷くことしか出来なかった。
夜になった猫の街はとても静かなところだ。そんな中、私はシウに借りた家で
ある準備をしていた。
私は今晩、シウに内緒で犬の街へ行く。
どうしてもあの犬のことを忘れることが
出来なかったからだ。
私はしのび足で家を出て、
静かにドアを閉める。
猫の街には街灯が少ないと思っていたが、
案外多かった。
これもおばあちゃんが置いてくれたのだろうか。
猫の街から犬の街はそう遠くはなかった。
猫の街の雰囲気は寒色系だったが
犬の街は暖色系だった。
私はお城の門の前でドアをノックした。
すると、出てきたのは先程の犬だった。
その犬はとても驚いた顔をしながら
「先程はすいませんでした!!」
と言った。
私がぽかんとしていると
「僕達だって暴れたくて暴れてないんです...」
「これはしょうがないんです...」
と先程とは別人....いや、別犬のような態度で謝ってきた。
「とりあえず中で話しますから入ってもらっていいですか?」
と言われ私は食い気味に
「いいよ」
と返事した。
「まず、僕の名前はキユと言います」
「私は鈴です」
「僕の父さんは初代当主様で、種族関係なく誰にでも優しくしていました」
「ですが、猫の初代当主様は自分の言うことに従わないやつは殺して、しかも完璧主義でした」
キユのお父さんが初代当主ってことは
シウのお父さんがこの話の初代当主様かな...?
「猫の当主様の名前はカクル。犬の当主様..まぁ、つまり僕の父さんの名前はカークでした」
「ですが問題はここからです」
「カクルが父さんの土地を欲しいと言ったんです」
「優しい父さんでもこの頼みだけは頑なに拒否しました」
「すると、カクルは問答無用で父さんを....」
そう言ってキユは俯いてしまった。
多分、キユのお父さんはシウのお父さんに
殺されたからそれの復讐でってことか...。
あまりにも酷い話すぎる...。
「あ、そういえば鈴さんはあの金平糖を持っているんでしたっけ?」
「うん、そうだよ」
「昔、父さんがコレクションとして集めていた本になにか書いてあるかもしれません...」「本当に!?」
「多分ですが...」
「案内してくれる?」
「僕の復讐を手伝ってくれるならいいですよ」
「まぁ、無暴力ならいいけど...」
「約束ですよ!」
「分かった」
そう言って私たちはキユのお父さんの
書庫へ向かった。
この時はまだあんなことになるなんて
思ってもいなかった...。
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