星の欠片を口にして
こむぎ
𝐒𝐭𝐨𝐫𝐲1
私に家族は居ない。
というより
" 居なくなった "
の方が正しいだろう。
私の親は離婚をし、
私はお父さんのお母さんに預けられた。
つまり、私のおばあちゃんだ。
おばあちゃんの家は駄菓子屋でいつも子供たちが来ている。
その子供たちの親を見ていつも私は
寂しい気持ちになる。
そんな時におばあちゃんは必ずしも、
私に金平糖をくれる。
その金平糖は不思議なことに食べた日の夢の中に1匹の猫が現れる。
その猫は毎回柄が違くて不思議に思っていた。
それをおばあちゃんに話すと
おばあちゃんは毎回
「あたしはね魔法使いだったんだよ」
と言う。
『魔法使いだよ』なら分かるけど、
なぜ過去形なのだろうか。
ある日の夢の中、
その日も金平糖を食べた日だった。
猫はいつものように現れたがいつもと違うのは猫がいる場所だった。
その場所は私の学校の門の前だったのだ。
その猫はこちらを振り向いては鳴いて、
前を見てはこちらを振り向く。
ただただそれを繰り返していた。
まるで私に呼びかけるように。
次の日、気になった私はいつもより早めに家を出て校門へ向かった。
だが、そこには猫なんぞ居なくてただの行き損だった。
でも、その日から同じ夢を見るようになったのだ。
私は自分が気になったことは何でもかんでもおばあちゃんに聞いていた。
もちろんこのことも聞いていて、
おばあちゃんはこう答えた。
「やっぱりすーちゃんもあたしと同じ運命を辿るのかねぇ...」
と呟いた。
まるで私に言っているだけでなく自分に言い聞かせるように。
その時の私は頭の中がハテナだらけだった。そんな私をよそにおばあちゃんは
戸棚の奥からほのかに光っている
色とりどりの金平糖を私に渡した。
それと同時におばあちゃんは
「食べ過ぎはダメだからね。あと、このことは誰にも言っちゃいけないよ」
と口に人差し指を当てながら言った。
私は迷いに迷って金平糖を食べたのは
この日から3日目の夜だった。
その金平糖を口にすると、
どこかからか沢山の猫の声が聞こえた。
玄関に近づくにつれて声はハッキリと聞こえてきた。
私は驚きながらもそっとドアを開けると
そこには何も居なかった。
私は不思議に思いながらも、
Uターンをして家に戻ろうとした。
だがそのとき、
足の上に何かが乗った気がした。
下を向くと、そこには青白く光った猫の姿があった。
気づかなかったが周りをよくよく見てみると青白く光った猫達はどこかへ向かうように
歩いていた。
そのとき、
私はその猫達の中に居る黒猫を見つけた。
途端、私はあることに気がついた。
今、ここにいる猫達は全員私の夢の中に出てきた猫達だということに。
よく見ると先頭には夢の中で私に何かを呼びかけているような仕草をした黒猫も居た。
私は気になったので着いて行くことにした。歩いていくうちに周りはどんどん薄暗くなってきていた。
怖がりな私には猫達が茂みを歩いている音ですら不気味に聞こえていた。
後ろを振り返ると
今、自分が歩いてきた場所は真っ暗で 何も見えなかった。
途端、私の足はこの先へ進むのを拒絶した。だが、ここに止まったものの怖い気持ちは消えずただただ不安だった。
気づけば猫の足音も鳴き声も消えていて、
無の空間が広がっているようだ。
その時、どこかからか
『金平糖を食べなさい』という声が聞こえてきた。
私はその声を信じていいのか半信半疑だったが周りの静けさを紛らわすために
その声に従うことにした。
私はビンの中から月の色をした金平糖を
取り出して口にした。
その瞬間、私の口が勝手に動き
【ミラ】と声を出していた。
それと同時に私の周りはほのかに光りだした。
私は驚いて周りを見ていると遠くにいる猫達が目に映った。
すると猫達は、私の方を見て一斉に鳴き出した。
まるで『早く来い』と言っているように。
私はさっきよりも早めに歩いて猫達に着いて行った。
というかさっきの声はなんだったのだろうか。
それよりもこの金平糖って一体...。
猫達に着いて行って30分くらいが過ぎると足元の道は歩きやすくなっていた。
今思ったけど猫達はどこに向かっているのだろう。
もし、どこにも向かっていなかったら?
そんなことを考えていると
遠くに街灯りのような明るさが見えてきた。気づいたら先頭にいた黒猫は私の傍に居た。「初めまして鈴。」
「え?」
急に声がして周りをキョロキョロと
見回すも、人影は一切無い。
「僕です。足元の猫です」
私は目を見開きながら驚いていると
その黒猫はにゃははと笑っていた。
「あなたのおばあ様は佐藤 里香。合ってますね?」
「なんでおばあちゃんの名前...」
「僕は佐藤 里香...いえ、リカの使いの黒猫です。」
使いって何?
どういうこと?
「とりあえず、人間の手を借りたいんです」「それ私じゃなくても...」
「いいえ。貴方じゃなきゃダメなんです。」「だって貴方、『金平糖』を持ってるでしょう?」
その黒猫は不気味そうに言った。
だが、外見が猫なので何も怖くない。
「まぁ話は中で話します。とりあえず着いてきてください」
と言いながらその黒猫は
私に背を向け歩き出した。
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