【連続ムシ小説】ムシたろう

第1話 どんぶらこ

　むかーし、むかしあるところに……

　カブトムシから進化（しんか）した、凶暴（きょうぼう）な『オニカブトムシ族（ぞく）』と、ガの一種（いっしゅ）から進化（しんか）した、『モモ・メッチャダイスキ族（ぞく）』がいた…

　ある時（とき）、二（ふた）つの種族（しゅぞく）の間（あいだ）に戦争（せんそう）が起（お）きた。オニカブトムシ族（ぞく）率（ひき）いる『オニカブトムシ帝国（ていこく）』が侵略（しんりゃく）を始（はじ）めたのだ。その結果（けっか）、モモ・メッチャダイスキ族（ぞく）の姫（ひめ）はさらわれてしまった！

　そこで、モモ・メッチャダイスキ族（ぞく）の王様（おうさま）は、こう考（かんが）えた。

「我（わ）が一族（いちぞく）はピンチじゃ……。このピンチを救（すく）えるのは、伝説（でんせつ）の勇者（ゆうしゃ）の生（う）まれ変（か）わりである『ムシたろう』だけ……」

　しかし、ムシたろうはまだ幼虫（ようちゅう）でした。王様（おうさま）は、ムシたろうをチキューという星（ほし）に避難（ひなん）させ、チキュー人（じん）に育（そだ）ててもらうことにしました。

「ムシたろうよ……そのモモ型（がた）カプセルに乗（の）り、親切（しんせつ）な人（ひと）に拾（ひろ）ってもらうのじゃ。そしていつか……ワシら一族（いちぞく）を救（すく）ってくれ……」

　するとムシたろうは元気（げんき）よく返事（へんじ）をしました。

「わかりました！ガンバります！」

　カプセルは空（そら）に向（む）かって打（う）ち上（あ）げられ、雲（くも）を突（つ）き抜（ぬ）け、宇宙（うちゅう）を飛（と）び、星々（ほしぼし）の合間（あいま）を縫（ぬ）うようにして、チキュー星（せい）へとたどり着（つ）きました。カプセルはそのまま、チキューのとある川（かわ）へと落下（らっか）します。

　ザッブーーン！！！

　水（みず）しぶきの上（あ）がる音（おと）が、谷間（たにま）に響（ひび）きわたります。カプセルはそこから、水（みず）の流（なが）れに乗（の）って、川（かわ）を下（くだ）っていきます。

　どんぶらこっこ、どんぶらこ……

　そうしてモモ型（がた）カプセルが川（かわ）を流（なが）れていると、川（かわ）で洗濯（せんたく）ものをしているオバアサンの前（まえ）を通（とお）りました！！

「オバアサン……ぼくをひろって！」

　しかしムシたろうの願（ねが）いは届（とど）きません。オバアサンは洗濯（せんたく）ものに熱中（ねっちゅう）していたのです！！

「くそっ……ムシだけに、ムシってか……！」

　ムシたろうの冒険（ぼうけん）はつづく！！