無関心なエンジン
どこ製のエンジンをつかっているのさと
友人に聞かれたのではぐらかしておいた
その後の話の流れの中で
友人やほかの皆々はアレコレを使っていると知ったので
次聞かれた時はそう答えようとメモしておく
未だにその機会は訪れていない
今後訪れるのかも定かではない
夜寝る直前に
エンジン音がうるさくて眠れないことがあると
友人はさも当然のことのように宣うので
あぁきっとそれがあるべき姿なのだと思いなおして
適度な相槌を返す
僕の心音はあまりにも静かで
エンジン音なんてものはどこからも聞こえてこない
耳を澄まして聞こえた気がした音は
薄い壁の向こう側の隣人の音だった
百均で手ごろなエンジンが売っていたので
好奇心に駆られて手に取った
袋は開けてみたけれど、
中身はまだ使えていない
いっときの気の迷いや若さからくる焦りのようなもの
あるいはただ君が惹かれる人でありたいと思う感情が
財布のひもをゆるめてしまう
ただそれでも、人の本質というのは
いっときの感情ではごまかしがきかないようで
売られたエンジンの型は、僕にはどうも馴染まない
ぎこちなく震えた後に、動かなくなってしまう
燃料を買い足しても、少しだけ息を吹き返して
すぐにまた元の置物に変わっていく
友人曰く、百均のエンジンでも十二分に役割を果たせるとのことで
どうにも問題は僕の心象にあるらしい
何度か医者にもかかったが、当たり障りのない処方箋を渡された
初期不良なのか、あるいは長く生き続けるうちにこわれてしまったのか
後者であろうことは明白だ、それは幼心にもわかるものだ
燃え上がるような火が盲目的に体を突き動かして
時には涙のひとつやふたつも転ばして
そんなことが小説に書いてあっても、共感できない
まだ、自分に合うエンジンに出会えていないだけだろうか
問いに答えを出すためには、あらゆるメーカーに触れることが肝要だ
くじけそうにはなるけれど、スタートラインに立つためには必要な手続きだ
kamu ちい @cheeswriter
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