足歌

@vok

この耳に雨の音とざす蓋なくば進めぬ吾は空いっぱいのアジサイほし


夜ふかく梅の実おちる音聞こゆひとり目覚めておるまだ暗き床


割り切れぬ式地上にかく四弁の文字列繰り返すアジサイの花


雨もりの拍動ひとつ泊りおり侘しき古家の二階の床に


殻なかに雨のうつ音はきこゆるか葉に泊まる蝸牛漕ぎいでぬつゆの夜


帽子かぶり歌いもします霊長類人科ヲトコの柵みおろすキリン


イヌビワの赤き実ふたつ手にのせて味知らぬ実に口よせ触れぬ


瞼とじあまそらの信号を受く雨傘の外に両手さしだし


暗色の沼に浮かびし河馬の腹宿りし草の見る夢は我


幾光年はなれておるやひとつだけ浮かぶ山峡の小さき空に星


粒光る黒き桑の実にまがう贄にむらがる蟻のかたまり

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