第4話
「うーん! おいしーい!」
今日のトレーニングメニューが終わった頃にはもう夕方になっていた。帰り際にいちごクレープを二人分買って食べなから、家に帰っているところだ。
「えへへ、お兄ちゃん大好き」
フラがいちごクレープを頬張りながら満面の笑みを見せる。それがミラにとってとてつもない程、幸せである。
「ありがとう。お兄ちゃんにとってはそれだけで十分過ぎるぐらい幸せだよ」
言いながらフラの頭を撫でる。すると嬉しかったのかフラは頬を赤らめた。
「僕……お兄ちゃんの妹で……お父さんとお母さんの娘でよかったよ……」
「……そう。それなら嬉しいよ」
もし、ああならなくても、フラはこんな事を言ってくれたのだろうか? いや、考えても仕方ない、過去は変えられないのだから。ただ、一つだけ言える。自分の選択は正解の部分もあり、不正解の部分もあると。
「おう、帰って来たみたいだな。って、それクレープか? 二人共、夕飯前に腹一杯になるなよ?」
家の前には父のブレンが立っていた。
「ただいま、父さん」
「ただいまー、お父さん」
二人共に無事、家に帰り着いた。
「……あ、そうだった! お父さん、はいこれ!」
フラが慌てたながらポケットに入れていた小さな四角形の箱を取り出す。すると箱は大きくなって開き、二つのいちごクレープが区切られて入っていた。
「お、もしかして……俺達の分も買ってきてくれたのか?」
「うん! 二人共、甘いもの最近食べていなかったでしょ?」
「ありがとうな……でも、もうそろそろ、二人がイゼアに行くって考えると、なんだか寂しいな……」
イリアットがあるイゼアはシルロから現在の技術を持ってしても、最低三日はかかる。イゼアに行くだけでも費用は大変多く必要である。
「やめてよ、父さん。こっちまでも寂しくなるから……それに合格したって決まったわけじゃないし」
そうまだ、受験前なのだ。卒業まであっちに滞在するとは限らない。
「まあ、そうだけどよ……」
なんだか、悲しそうな表情をするブレン。二人の実の子供に応援したい気持ちもあるのだろうが、少しか長くかは分からないけど、居なくなる寂しさがあるのだろう。
「もう! お父さんったら、そんな顔しないしない!」
フラが頭を横に振りながら言った。
「……それもそうだな。二人共! 絶対、シュゲルに入れよ!」
ブレンは両手を使って二人の肩に触れる。
「もちろん!」
「当たり前だよ。父さん」
それから一週間が経ち、二人はイゼアにやって来ていた。
「すごい! ここがイゼア!」
まだ、イゼアの駅を降りて、中心地ではなくイゼアの端っこだが、イゼアの巨大さは十分伝わってくる。人口、約九百三十万人の大都市イゼア。中心地に向かうにつれ近代的になっていき、中心地にはシンボルであるイゼアタワーが立ち構えている。
「そうだね……フラ、絶対ここで活躍しよう」
「もっちろんだよ! お兄ちゃん!」
元気よく答えるフラ。そんな時だった。
──あまりにも綺麗で可憐な少女が見えたのは。
「……え?」
あまりの可憐さに目が奪われる。青色の美しくきらびやかなサイドテールに青色で全てを魅了するような美しさを持つ瞳。
思わず、眺めてしまった。
何秒かたった後、異変に気づいたのか、フラが話しかける。
「……? どうしたの……お兄ちゃん……?」
「……! い、いやなんでもない!」
誤魔化そうとした。
だが、気づくとその少女は目の前に居た。
そして、直感で気づく。
──この子は人心だと。
「私、何かおかしいところでもありましたか?」
首をかしげ、聞いてくる。
「いえ……なんでもありません……」
しかし、動揺は隠せていなかったようで、少女は首をかしげたままだ。
「……ってええ!! お兄ちゃん!! この子、人心だよ!!」
フラがミラの袖をぐいぐい引っ張りながら、驚く。
「や、やめろ。それにこの人にそういうのは失礼だ……!」
すぐにフラを落ち着かせる。
すると少女はかしげていた首を元に戻す。
「……駅に行ったってことは、私と同じで、遠くからやって来たんですよね……なるほど。都会じゃないところは人心が居るのは珍しいですもんね……あっ! すみません! 出身を都会じゃないところなんて言ってしまって!」
少女は慌てる。
「お、お気になさらず。事実ですから……それよりもあなたのお名前は?」
「……アイ・ゼルグエンドです」
イリアットの特異体 すずか @87905432
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