第3話

 二人がいつもトレーニングする場所はタダで使える、シュゲルがこの街シルロで人材を育成するために作られた場所だ。

 建物は鉄製のドーム状になっており、中はそこそこ広いスペースで個室になっている。個室の中には戦闘用ロボットがおり、ロボットは相手が戦闘を開始出来るようになったら動く仕組みだ。

「じゃあお兄ちゃん! 僕とどっちが早く倒せるかの勝負だよ!」

 頑丈な部屋の後ろと両側に扉があるのだが、左隣の部屋にいるフラがドアをからひょっこり顔を出しながら言ってくる。勝負するのはいつもの事だ。

「いいよ。でも──お兄ちゃんが勝つから」

「ふひゅー。いい感じじゃん!」

 口笛を吹きながら笑顔を見せるフラ。でも、その瞳には闘志が溢れていた。そして、ミラの瞳にも闘志は溢れている。

「じゃあ、勝った方にクレープを奢る……でいいかな?」

「いいよ。お兄ちゃん! さあ、真剣勝負だ!!」

 言った直後、フラは顔を出していたドアを閉め、準備を始めただしたようだ。

 ミラも準備を整えるべく、右側を見つめるそこには鉄製のテーブルの上に様々な武器が置いてあった。だが、使う武器は決まっている。

 ミラはその武器、剣と銃に変形する小さな正方形の箱を取った。最近の武器は持ち運びしやすいように箱から変形するものが多い。まあ、武器に暗証番号を入れて、許可が降りた場合のみ使えて、持つ事が許されるのだが。でも、これはここの物なので暗証番号を入れる必要はない。

 手早く、剣に変形させ、ロボットの方を向く。

『認証中……番号四十七、ミラ・クレイリット様、確認いたしました。戦闘トレーニングを開始いたします』

 白色のロボットは肩口が開き、そこから斧が出てきて、斧を取り出し左手に持つ。

『認証中……番号四十八、フラ・クレイリット様、確認いたしました。戦闘トレーニングを開始いたします』

 隣の部屋からも機械音声が聞こえてくる。あっちも準備は出来たようだ。

 すると前に居たロボットが動き出す。二足歩行で人に近い見た目をしたロボットは高速で移動し、ミラの背後にまわる。

 そして、斧を背中めがけて振り下ろした。

「ふっ……!!」

 しかし、それを簡単に剣で防ぐ。背後にまわっても、一瞬で対応するこの速さ。思わず感情の無いロボットでも、後ろに飛び下がっていた。

「怖気づいた?」

 言いながら剣を振り、銃に変形させる。そして、すぐさま二発発砲。そのスピードに付いていけず、ロボットの胴体に二発とも命中する。

 しかし、ロボットもこのままでは終われないようで、超高速で目の前に現れた。そのまま胴体の右横に攻撃。それでも、簡単に飛び避け、そこから空中でロボットの顔面に蹴りを、入れのけぞらせる。

 次の瞬間、着地したミラは銃から剣に変形させ、十字にロボットを斬る。

 そこから、銃に変形させ、胴体に二発撃ち込んだ後、右足の回し蹴りでロボットを吹き飛ばす。

「──最後だよ。真ノ力しんのちから

 ミラは銃を構え、言った。真ノ力とは行動の名前を言った事により、行動が別物になるもので使えるようになるには五年はかかる。でも、フラは二年、ミラは二年半で習得した。

「──ブロウオフ・ブレッド!!」

 敵をぶっ飛ばす弾丸の攻撃をミラは放つ。そして、見事命中し、ロボットは勢いよく、壁に激突し、壁は破損した。

『戦闘終了を確認しました。ミラ様の勝ちです』

 ロボットは機械音声を出し、機能を一時停止した。

『戦闘終了を確認しました。フラ様の勝ちです』

 直後、隣の部屋からも機械音声が聞こえた。

 するとまた、ひょっこりドアから顔を出してくるフラ。

「……お兄ちゃんの方が早かったみたいだね……でも、今度は絶対勝つから!」

 無傷のフラは高らかに宣言した。

「……期待してるよ。じゃあ、お兄ちゃんと一緒にクレープ食べに行こうか。やっぱり僕が奢るよ」




 




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