エベレストを見に行くのは、彼女を作るよりも簡単だ

佐藤キャベツ

第1話 はじまりは突然に

 2024年10月上旬。仕事をやめてブラブラしていた私のもとに、父親から連絡があった。

「ネパールにエベレストトレッキングしにいくんだが、一緒に来ないか?」

 トレッキングとは、要は山登りである。装備をそろえ、登山道を歩き、目的地を目指す。しかしエベレストトレッキングとはいうものの、さすがにエベレストに登頂するわけではない。エベレストを望む「カラ・パタール」という地点が目的地とのことだった。

 この話を聞いて、選択肢は一つしかなかった。私は即、父親に行きたいと伝えた。

 さて、問題は出発予定日である。父親はもう航空券を買っていたようだが、出発日は10月下旬。あと1か月もない。というわけで私も航空券を買おうとしたのだが、さすがに2週間後出発だと安い航空券を見つけるのは難しい。

 ネパールへは成田から直行便があるほか、第三国を経由しても、最長で1泊程度で行くことができる。だが自分が見つけた航空券は、ソウルと広州で計2泊するという「ふざけた」シロモノであった。だが自分は旅慣れてるつもりなので、むしろソウルと広州も楽しむつもりでいた。

 航空券のほかに、荷物やビザの準備も必要だ。中韓はビザ申請しなくてもいいだろう……ネパールのビザはどうしよう。アライバルで取れるみたいだからそれでいいか。そして登山用具。こちらは高校時代山岳部だったのでザック筆頭にその頃の用具を使う。だがそれだけでは足りない。特に、山登り用のレインコートがなくなっているのがショックだった。替わりに家にある適当な合羽を袋に詰めることになった。

 出発の数日前に準備をはじめたもんだから、てんやわんやの出発となった。これで大丈夫なのだろうか。とにもかくにもエベレストトレッキングが幕を開けた。

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2024年12月22日 09:00

エベレストを見に行くのは、彼女を作るよりも簡単だ 佐藤キャベツ @xchl

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