彼女にしたい彼女が50%の確率で死ぬ箱に入って2時間後に開いてみたら生きてる彼女と死んでいる彼女の二人になっていた

ナインバード亜郎

ロイヤルおつむのコペンハーゲン彼女

「じゃーん!」


 と、九花ここのかは言った。

 なんだそれは半鐘でも鳴らしたのかそれともこれから三国武将でも登場するのか、なんてどうツッコミを入れてあげようか考えながら振り返ると、九花同士が肩を組んで立っていた。


「なにそれ!?」

「じゃーん!」


 九花との付き合いはそれなりに長いし深いつもりではあるけれど、良く似た姉妹がいたなんて聞いたことがない。


「じゃーん!」

「いや、じゃーん! は分かったからどういうこと!?」

「なんかね、脱皮した!」


 九花はあっけらかんとした表情で答えた。

 そうか、九花はどこか人間らしからぬとは思っていたけどまさか本当に人間ではなかったなんて……。

 って、そんなわけあるか。


「あのね九花、人間は脱皮なんてしないのよ」


 私は人間の常識を、丁寧に九花に説明する。

 人の皮は剥ける事はあってもそんな風に脱皮はしないのだと。


「それに脱皮したら皮だけになるでしょ? 髪の毛なんて抜けちゃうし」

「あ、そっか! リリエあったまいい!」

「だからね、それは抜け殻じゃなくて……」


 じゃなくて、なんだろう?

 九花をモデルにした等身大サイズの人形ラブドールだろうか。三桁万円クラスになると肌まで本物そっくりの質感を出すと聞くし、中身はともかく見た目は美女の九花をモデルにしようとする気持ちは非常によくわかる。

 だとしたら、そんな高価なものを一体どこから?


「えっと、それはどうしたの?」

「拾った!」

「ひ、拾った?」

「おうよ!」


 ぐっとサムズアップで答える。

 捨て猫を拾う感覚で拾うものではないんだけど、九花にそんなことを言っても仕方がない。

 ……いくら動物以上に奇想天外のアホだって置き配の品を拾ってはこないだろう。

 と、思いたいが。


「えっと……その、どこから?」

「あっちにあった箱から!」


 それは箱ではなくて、やはり置き配なのでは?

 いよいよ心配になった私は九花に案内され(彼女のあっちは予想以上に離れていた。よく人形を肩を抱えながらここまで歩いてきたな)、河原の橋の下までやってきた。


「これ!」


 と、九花はそれを指差した。

 それは、確かに箱としか形容するしかない箱だった。

 ちょうど人一人がピッタリ入れるくらいの大きさで、パッケージなんて何もない白無地で、もし他の形容の仕方があるとすれば、冷蔵庫みたいと言えなくもないけれど、しかし箱と呼ぶ他ない扉付きの箱だ。


「これに入ってたら出てきた!」


 九花もそこまでアホではないと知り、私はひとまず安堵した。きっとこの人形は誰かがゴミ捨て場に捨て置くのが忍びなくなってここに置いていったのだろう。

 けれどそれはそれ、これはこれだ。

 

「あのね、いくらこの箱が気になるからって普通は開けないでしょ」


 私は九花を諭すように言う。

 歳だけは私と同じなのに中身は小学生男児並のアホ――もとより輝かしいばかりの天真爛漫さをいつまでも失わないので、親友の私が守ってあげねばならない。


「ましてや中に入ってたものを持ってくるなんて――」

「違うよ」


 しかし、珍しく私の言葉を遮って九花は否定した。

 

「違うって?」

「これに入ってたら出てきたんだって」

「……うん?」

「見てて」


 と、言うが早い。九花は箱の中へ入ってしまった。この子に衛生観念は無いのか。と思っていると、


「――ちょっ!」


 箱の扉がそのまま自動で閉まってしまった。


「九花! 九花!」


 閉じ込められてしまった九花を助け出すために、私は必死で扉を開けようとしたが、女の細腕程度ではびくともしない。いくら大声で呼びかけても中から応答が無い。その辺の石で叩いて壊そうと一瞬考えたけど、それで中にいる九花が怪我でもしたら一大事だ。


「九花! しっかりして! 返事してよ!」


 私は焦りながら必死で扉を叩く。が、返事はなかった。


 どれほど経っただろうか。泣き疲れてもたれ掛かっていた箱が、突然カタリと音を立てて開いた。


「九花!? 大丈夫!?」

「おっはー!」


 箱から出てきた九花に、私は思わず抱き着いた。


「もう、リリエは大袈裟だなぁ」


 九花に抱き着く私に、隣から九花は言った。


「えっ!?」


 私は思わず驚嘆の声を上げた。

 私は確かに九花に抱き着いていた。けれどそれは九花であって九花ではなかった。

 その九花は全裸で――その触れている肌がやや生温かった。


「ええええええええええっ!?」


 思わず全裸の九花を箱の中へ押し飛ばしてしまった。

 箱は元からそういう仕組みなのか、再び自動で閉まった。


「どういうこと!?」

「だから言ったじゃん。入ってたら出てきたんだって」

「いや、確かに言ったけど……」


 そんなあっけらかんと言われても、九花アホにはこの箱のヤバさが伝わらないんだろうか。その人そっくりの人形を造れるなんて、この箱があれば億万長者にだってなれるのに。


「見て見て! 幽体離脱!」


 ……九花はどこまでも九花アホだった。

 なにもそんな双子ネタをこんなところでやらなくてもいいじゃないか。服が汚れるとか気にしないのか。


「そういえばその服、どうしたの? その、下の人形が着てる方」

「私の部屋から持ってきて着せた!」

「持ってきたんだ」

「だって裸の人形持ち歩くわけにはいかないし」

「いや、持ち歩かなくてもよくない?」

「私そっくりの人形だよ? そんなの見せたいに決まってるじゃん!」


 そんな綺麗な石を拾った小学生男児みたいなことを言う。


「それにスカートの下もそっくりだし」


 と言って、人形のスカートを捲り上げた。

 人形が服を着ているのは持ち歩くためだと九花は言った。

 つまり、当然パンツは履いてなかった。


「か――隠しなさい!」


 私は思わず目を背けた。

 一緒に温泉に行ける仲なので見たことがないわけではないけれど、そういう問題じゃない。


「ちゃんと見てほらほら」

「他の人に見られたらどうするの!」

「――あ、そっか」


 そこでようやく九花は人形のスカートを下ろした。

 さすがの九花ドアホでも羞恥心というのは最低限にあるらしい。危うく禁断の果実を探す旅に出るところだった。

 ともかく、これでアホな事はもうしないだろう――


「あ!」


 本物の衝撃的な行動のせいで、存在が忘却の彼方になっていたもう一つの人形の存在を思い出す。

 目の前の箱は今はまだ閉まっているけど、開いたら全裸の九花人形が露わになってしまう。それは非常にまずい。


「九花、ちょっと待ってて」

「どうした?」

「急いで人形の服買ってくるから」

「私も行くぞ!」

「あなたは箱と人形を見張ってなさい」


 私は自腹で人形の服を買ってきた。念のため上下二着ずつ。あくまで隠す目的なので下着は無いが、緩めのジャージなら履かせるのも楽だろう。

 そして戻った頃には不安的中、箱の扉は開いて人形が飛び出ていた。

 ただし、人形は一体だけだった。


「誰も――来なかった?」

「おう、誰も来なかったよ」

「よかった」


 私は袋を開封し、飛び出していた九花人形に服を着せる。

 秋らしい少し大きめのパーカーを直接着せるのは美学に反するけれど、今はそんなことは言ってられない。そのままジャージも履かせて紐を締める。

 しかしこの人形、肌の質感だけじゃなくて重さも本物そっくりだ。ここまで精巧に作れる箱がどうしてこんなところにあるんだろう。


「よし、完成」


 ひとまずこれで問題は片付いた――いや、どうすんだこれ。

 今は裸を隠しただけで、ここに置いとけばどうなるかなんて火を見るより明らかな訳で。本人はそれを気にしないかもしれないけど、私は、私だけは気にする。


「九花はこの人形どうするつもり?」

「んー、家に持ち帰っても置く場所が無いからなぁ」

「……ひとまず、私の部屋に避難させようか」


 問題はどうやって私の部屋まで運ぶかだったが、幸いにも近くに台車が捨てられていたので、それに載せて運ぶことになった。道中色んな人に奇異の眼で見られてしまったけど(逆の立場なら当然見るだろう)、なんとか私の住むアパートまで辿り着いた。今日ばかりは一階に住んでいた事を幸せに思う。


 一体ずつ二人で中に運び入れ(気分は死体を隠す犯人だ)、人形の足の裏を綺麗に拭く――九花が先に拾った方の人形は大分引き摺ったのだろう、痛々しいくらいにボロボロで、少し血が滲んでいる様に見えた。

 最後にうまく足を曲げて壁の前に座らせ、私達も一息ついた。


「私が分身したみたいだな」

「服と顔でバレバレだけどね。あとうるさい」


 本物は血色がいいが他の二体はやや肌が青白い。

 まるで本当に死体みたいに。


「それで、リリエはこれどうするんだ?」

「これからじゃなくて?」

 

 さっきの聞き違いを反省し、私は聞き返す。


「この私そっくりの人形」

「それはむしろ九花に決めてほしいんだけど。全部九花の物だし」

「えー」

「いや、えーじゃないでしょ。あの箱に飛び込んだの九花でしょ」

「えー」

「……さては飽きたな?」

「うん」


 この小学生男児が。


「動くんなら楽しいかもしんないけど、ただの私そっくりの人形だし」

「さすがの私でも九花が三人もいたら寒気がするよ?」


 精根尽き果ててもなお付き合わされる、破滅的未来しか見えない。


「そういうわけだからリリエにプレゼント」

「どうせもらえるなら本物一人だけでいいんだけど」

「そんな正直者には九花人形AとBを差し上げます」

「金の斧と銀の斧みたいに言うけど、そんな価値はな……、無いからね?」

「なんで一瞬躊躇ためらった?」

「躊躇ってない」


 金の斧銀の斧よりも間違いなく価値はあるし。


「まぁそういうわけだからさ」


 九花は大きく伸びをして、それから立ち上がった。


「後は頼んだ」


 ぽん、と私の頭を軽く叩く。


「何を言ってるのかな?」

「台車の事は私に任せて、リリエは先に行けって言ってるんだ!」

「私がどこに行くのよ。人形を私に任せて行こうとしてるのは九花でしょ」

「これはリリエにしか頼めない、重要な任務なんだ」

「格好いい台詞言いたいだけじゃない――あ、待て!」

「翼を広げて私はクールに去るぜ」

「あんたが広げたのは風呂敷とトラブルだけでしょうが!」


 私が玄関に着く前に逃げられてしまった。


「……本当にどうするのこれ」


 残された二体の死体のような人形を残された私は途方に暮れる他なかった。


 なんてことはなかった。

 私にはこの人形について確認することがあったからだ。

 棚にしまってあった体温計を取り出し、人形の耳に当てる。

 34.7℃だった。

 もう一体の人形の耳にも当ててみる。

 34.4℃だった。


 今の室温は20℃前後。外は当然ここより寒く、今の時間から逆算すると古い人形の方は四時間以上は外にあっただろう。その時間中に気温が30℃を超えたことはない。

 もしこの人形が特殊素材で保温性を持っている、あるいは内部で熱を発しているのであれば納得できるけれど、仮にだとするとこの人形は、かなり精巧な人間を模して造られたことになる。

 間違いなく、あの箱はオーパーツと呼べる代物だ。この時代にあっていいような代物ではない。


 私は人形の口に直に指を入れて、周りを撫でまわしてみる。

 勿論本人の口に対してこんなことをしたことはないけれど、それでもわかることはある。

 口の中はわずかに湿っていた。

 人形ラブドールとしての使用を考えているとするならばまだ納得しよう。

 私は二体の人形から服を丁寧に脱がし、横に倒す。

 この人形はまるで血の気が薄れた肌の色をしている。乳房の色、形も人間と見まごう程の精巧さだ。ここまで来れば下は確認するまでも無いだろう。屍体性愛者ネクロフィリアにはさぞ高く売れるに違いない。


 足がぼろぼろの人形をお風呂場へ引き摺って連れて行く。私の予想が当たってしまった場合、リビングが汚れてしまうことになる。

 キッチンから持ってきた包丁を人形の足の親指に当て、深く切りつけてから、湯船に人形を落とした。

 湯舟はゆっくりじんわりと赤黒く染まっていった。


「……やっぱり」


 私たちが人形だと思っていたそれは、死体の様な人形ではなく、死体の様な死体だった。

 あの箱がどういう理屈かはわからない。しかし、これでわかったのは、これが紛れもなく死体であることだけだ。

 そしてもう一つ、解剖してみなければわからないが、どうもこの死体は自然には変質しないように思える。

 あの箱がオーパーツであるなら何もおかしな話ではない。根本からおかしいのだから枝葉末節にこだわるべきではないだろう。 

 なるほど、全く私にしかできない重要な任務だ。

 自分の死体の処理なんて――それも二つも、一体誰に出来ようか。

 勿論本人にそんなつもりはなかったんだろうけれど、今回だけは彼女の言葉に従おう。


 私も服をすべて脱ぎ、少し軽くなった九花を持ち上げ、マットの上に寝かせる。こうして静かに寝ている姿を見ていると、思わず口角が上がってしまうほどに愛らしい。

 私は九花の太腿の上に跨り、臍の下に包丁を思いきり突き立てた。血は勢いをつけた分、少しだけ飛び出したけど、それだけだった。包丁の歯をそのまま臍へ、臍から上へ這わせて、ほうちょを引いては入れ、引いては入れを繰り返しながら腹を切る。


 鋭利な肉切り包丁ならもう少し楽に切れたかもしれないけれど、家にある三徳包丁では粗雑な切り口になるばかりだった。だが別に問題ない。どうせ処分する死体だ。

 開いた切り口に両手を入れ、力一杯横に広げてみた。が、死体とは言え脂肪と筋肉の塊、その弾力に弾かれて肝心の中身が見ることができなかった。

 私は手を変え、包丁の刃を横にして、同じ手順で切り口を十字に裂く。なるほど、これはかなりの重労働だ。死体遺棄をするのにどうしてバラバラにしないのかと思っていたけれど、道具も無しに死体をバラすなんて無謀な事だ。ましてや骨まで潰すとなれば、そんなことするくらいなら見つからない事を祈る方がまだ生産的だろう。何を生産しているのか知らないけど。


 秋だというのに汗が垂れ、九花の身体に落ちる。浴室が鉄臭い。

 ようやく腹の中が確認できるようになった頃には包丁の刃はだいぶ欠けていた。骨に当てたつもりはないのに、肉だけでここまでするなんて、死体になっても面倒を押し付けてくるなんて、本当にいいところが見た目しかないのかお前は、なんて毒吐きたくなる。

 腹の中に入っていたのは当然ながら内臓だった。ネットのグロ画像でしか見たことのない様な内臓だ。もしこれが体温を維持しているなんらかのギミックだったとしても驚かないつもりだったけれど、残念ながら熱は失われていた。


「ただいまー!」

「――っ!?」


 玄関から陽気な声が響いた。

 帰ったとばかり思っていた九花が戻ってきた。どこまでも行動が読めないと思っていたけれど、まさか戻ってくるなんて思ってもなかった。


「リリエー? 食いもん買ってきたよー!」


 九花はずかずかと部屋に入ってきた。勝手に出てって勝手に戻ってきてまったく身勝手この上ない。


「あっれー? リリエ、なんか変な臭いしない? ――ってうわ!」


 血濡れになった私を見て九花は叫んだ。

 最低限の感性が羞恥心以外にもあったらしい。


「なにこれ! ホラーじゃん! スプラッターじゃん!」

「九花が置いていった人形を処分してるんでしょ!」

「うっそ! すっげぇ!」


 さっきまで人形に興味が無いと言ってたのに、私の手元を覗き込んだ。血と肉がまざり合った浴室の光景に、何の恐れもなく笑みを浮かべている彼女を見て、私は一瞬息が詰まる。

 彼女にとっては作りものなんだから当然か。


「なにそれ、内臓?」

「静かに」

「えー、ちゃんと見たい!」


 興味津々に顔を近づけてくる九花を、私は無理やり押し戻す。


「邪魔をしないで」

「……はーい」


 私は冷たく突き放すと、九花はリビングへと飛び出していく。その背中を見送ると、再び浴室に残ったのは私と九花の死体だけ。


「……はぁ」


 思わずため息がこぼれた。疲れたのか、気が抜けたのか、自分でもわからない。ただ、九花と一緒にいるといつもこんな風になる。バタバタと騒がしく、物事を真剣に考えさせてもらえない。

 そもそもどうしてこの九花を分解バラしてるんだっけか。


「やっぱり、面倒くさいなぁ」


 夜になり、私は九花と夕食を共に食べた。

 私の状態に気を使ってくれたのか、それとも単純に一緒に食べたかっただけなのか、九花が買ってきたスーパーの総菜で夕飯はすべて賄えた。

 それから九花が先にお風呂に入り――あの死体を見たい気持ちが勝っていたんだろう、浴室でわーわー騒いでいた――疲れが限界に達したのか、着替えるとそのままリビングで寝落ちていた。全裸の自分の死体が目前に置いてあるのに、どんな心理なんだろう。それはそういうものだという、私とは真逆の至極シンプルな考え方を持っているだけかもしれないけれど。

 あれこれ考える私と違って、その単純さが羨ましい。


 お風呂で入念に身体を洗ってみたけれど、全身にこびりついた鉄の臭いは落ちた気がしない。けれど、別にその臭いが嫌だとはあまり思わなくなっていた。

 私は生きている九花の隣に腰を落ち着けた。

 生きている九花。

 死んでいる九花

 相反する二人がこの部屋にいる奇妙さ。特定の地点の死の状態を維持し続けている奇妙な死体。あの箱が何なのかなんて、どちらの九花にとってもどうでもいいことなのだろう。

 ただ、私にとっては重要な岐路だった。


「……うるさいなぁ」


 生きている九花の寝息の僅かな音が、どうしてか耳についた。

 死んでいる九花は相変わらず変わらない。あの時と同じ体温を維持していた。少しひんやりとした、風呂上りには心地よい温もりに心奪われていく。

 いつも騒がしく、無邪気で、何一つ気にしない九花――そんな彼女を愛おしいと思う一方で、どこか煩わしく感じることが増えていた。

 本当は最初からそうだったのかもしれない。

 本当に欲しかったものは、本心から求めていたものは違ったのかもしれない。


 どうせもらえるなら本物一人だけでいい。

 確かにそれは、私の正直な気持ちだった。


「……一つだけでいいね」


 私は目の前の九花の髪をそっと撫でた。彼女は何も言わない。ただ静かに、そこにいるだけ。


「うん……。それでいい」


 生きている九花はどんな夢を見ているんだろう。

 夢の中でもきっと、賑やかで幸せなんだろうな。 

 それでも私の傍には、静かで、穏やかで、何一つ余計なことをしない九花がいる。


 ……やっぱり私には、一つあれば十分だ。

 本物は、二つもいらない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女にしたい彼女が50%の確率で死ぬ箱に入って2時間後に開いてみたら生きてる彼女と死んでいる彼女の二人になっていた ナインバード亜郎 @9bird

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画