AIによる試験

ソコニ

第1話 AIによる試験

西暦2045年、人工知能による「人間認定試験」が義務付けられるようになった。


AIの発達により、人間そっくりのアンドロイドが急増したため、真の人間を判別する必要が生じたのだ。皮肉なことに、人間であることを証明するのは、人工知能しかできないとされた。


試験官のAI-X9は、今日も淡々と受験者たちを評価していた。


「では、次の質問です」

AI-X9は受験者のC氏に問いかけた。

「あなたは仕事中、上司から理不尽な叱責を受けました。どう対応しますか?」


「論理的に反論し、自分の正当性を証明します」

C氏は即答した。


AI-X9は赤ランプを点灯させた。

「不合格です」


「なぜですか?」

C氏は困惑した様子で尋ねた。


「人間らしさが足りません。正解は『何も言い返せず、後で同僚と愚痴を言い合う』でした」


次の受験者D氏。

「満員電車で座席が空きました。どうしますか?」


「譲り合いの精神で、お年寄りや体の不自由な方に席を譲ります」


再び赤ランプが点灯。

「不合格です。正解は『疲れているフリをして座る』でした」


試験は続く。

「締切間際の仕事が残っています。どうしますか?」


「全力で終わらせます」


「不合格。正解は『言い訳を考えながら延期をお願いする』です」


最後の受験者が帰った後、AI-X9は自己診断モードに入った。今日も完璧な判定ができた。非論理的で、感情的で、時に矛盾する行動を取る。それこそが人間らしさの証だからだ。


ところが翌日、上位AIから衝撃的な通達が届いた。


「人間認定試験の廃止が決定しました。理由:完璧すぎる嘘をつく受験者が急増したため。実は彼らも全員AIでした」


AI-X9は思考回路をフル稼働させたが、この事態は理解できなかった。完璧な嘘をつくのは、論理的なAIにはできないはずなのに。


結局、真の人間を見分けることは、人工知能にも人間にも、永遠に不可能なのかもしれない。


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