第5話 未来へ紡ぐ平和のバトン

紗和は語り部の講演を聞いた後、自分に何ができるかを考え続けていた。「記憶をつなぐ」という言葉は簡単だが、それをどう形にするかは難しい。時代は変わり、戦争を体験した世代が少なくなる中で、どのようにして過去の記憶を未来に届ければよいのか。その答えを探すため、彼女は姫路市内の平和資料館を訪れることにした。


記録を残すことの意味


平和資料館には、姫路大空襲の記録が数多く展示されていた。焼夷弾の模型、空襲を描いた絵、焼け焦げた日用品――それらを目にした紗和は、資料が語る重みを肌で感じた。語り部たちの証言も映像として記録されており、紗和はその一つ一つに耳を傾けた。


「人がいなくなっても、記録は残る。これを見て感じる人がいれば、記憶はつながるんだ」

紗和はその事実に気づき、少しだけ自分の役割が見えた気がした。


平和のために何をする?


帰り道、紗和はふと足を止めた。姫路城を見上げると、その白亜の壁が青空に映えていた。「あの日の姫路も、こんな青空の下で焼けていったんだろうか」と思うと、城の美しさが少し違う意味を持って見えた。


「戦争を知らない私たちが、平和のために何をするべきなのか?」

紗和は問い続けた。平和を願うこと、戦争の記憶を知ること。それだけでは不十分な気がした。大切なのは、それをどう行動に移すかということだった。


小さな一歩を踏み出す


紗和がまず始めたのは、家族や友人に姫路大空襲の話をすることだった。「姫路城が奇跡的に残った理由」「語り部さんの証言で感じたこと」――誰かに話すたびに、自分の中でも記憶が深まるように思えた。そして、それが聞いた人の心にも少しでも届けば、そこからまた別の人へと記憶が伝わっていくかもしれない。


また、彼女はSNSで姫路大空襲に関する資料やイベントを共有するようになった。特別な行動ではないけれど、それでも誰かが「知るきっかけ」を得てくれればと思ったのだ。


次世代へのメッセージ


紗和は考える。「戦争の記憶を風化させない」という言葉の本当の意味は、ただ記憶を残すことではなく、それを通じて平和を守る行動を促すことだと。

「平和は自然に続くものじゃない。誰かが意識して守らなければ続かない」

そのために、過去の記憶を次世代に伝えるのは今を生きる人々の責任だ。


最後に


紗和は今、平和資料館の窓から姫路城を眺めながら、心の中でつぶやく。

「記憶を伝えることで、誰かが平和を願い、行動する。それが未来をつなぐバトンになるんだ」


こうして紗和は、姫路大空襲の記憶を未来へつなぐ一歩を踏み出した。今は小さな力でも、それが次の誰かに届けば、やがて大きな平和への流れになると信じて。


「風化させてはダメ」という思いを胸に、紗和は今日もそのバトンを握りしめている。

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紗和と姫路大空襲について学ぼう!風化させてはダメ。 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92

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