CROSS INTERSECTION
釣ール
自分や相手をとじこめる理想を食いやぶれ!
書店で
私にとってはアンハッピーバースデーでしかない。
別に死にたいわけじゃないけど、
精神科にも通いながら周りの
彼氏ともとっくにわかれて、だいたいの経験を終わらせた後に待ち受ける私になにが待ち受けるのか。
それでも自分にはできることがあまりにも少なかった。
今日はどうしよう。
────戦いに生きた者は
くそっ。
また負けた。
怒りに身を任せてやつあたりしてみたらつい理性が働いて数人にボコられた。
バカみたいだろ?
自分から吹っかけておいて「これは良くないんじゃないか?」だなんて考えるとは。
生きてていいことなんてもうないかもしれない事は自分が一番よくして知っているのに。
試合で負けたくやしさ以外の感情がただ
産まれてから今日までずっとそんな毎日だ。
「立て。」
もう立ってんだよ!
「お前に言われなくても別に死んじゃいねえ。くっ。また余計な血が流れただけだ」
強い口調とは裏腹に手を差し伸べてくれる彼の手をつかみ、さっきまでのストレスは忘れておく。
「またお前に助けられちまったな」
「
「いつもお前はよく分からないジャンルを欲しがるな。この前はエロ漫画。その次は古いCD。今回はBLか。お前の強さといい、変な優しさといい何者だよ」
同い年でケンカが強く、得体の知れない彼の趣味はあまり聞かない方がいいとは分かっていてもせっかくの友人なので大切にしようとは考えていた。
「いくらお前の頼みとはいえ、BLを書店で買うのは現代でも勇気がいる。こんなことならインターネットであらかじめ買っておけばよかったな。お前の
お
そんな世の中上手くいかねえからこんな生活してるんだ。
ケンカに負けてBLをお礼に買わないといけない。
そんな現実。
はあ。
何が楽しくて生きていたっけ。
もう忘れていた。
◇
他の人にBLを買ってもらおうとしていたがやめた。
誰かにたのんでばかりじゃ仕方ない。
たまには慣れない書店に行って何か面白そうな本があるか自分でも確認しよう。
レンタルDVD店を冒険するくらいの趣味をガキの頃はあったのに。
近年じゃ書店もおたかくまとまった本ばかりで帯に書いてある売りたい本音がすけて見えて嫌気がさす。
たまたまあったBL本を手に取り、タトゥーを隠す
「す、すみません」
「いやこちらこそ。先どうぞ」
同じBLを持っていた。
小説でも欲しがるんだ。
漫画のBLを買うと思っていた。
よけい買う気が失せる。
それでもレジへ向かい
すっかり
ってさっきの女性?
「すみません後をつけたような形になって。落ちてましたよ?」
ふつうのハンカチとは違う目立つ柄。
明らかに
「ありがとうございます。よく分かりましたね」
「
はっはっはっはっ。
この女性はさっきすれ違っただけなのによく見ている。
バレちまったか。
そのうえ同じBL本買ってたしな。
好みが分からないからぶなんなジュースにした。
「え?そ、そこまでやらなくてもお気持ちだけでいいです」
「別に何かしたりしない。さっきあなたが買ったBL本かぶっちゃって恥ずかしいから口止めしたいだけ」
なんだか不思議な
女性も少しだけ心を開いたのか一緒にしゃべることになった。
彼女の名前は
就活を終えて今の都会へ引越し、大学卒業を待つだけらしい。
ケンカばかりの男には大学生やら社会人やら再興のステータスだと洗脳されているから。
でも彼女は精神科に苦しめられ人間が嫌になっているらしい。
救いはBL。
もうじきBLも
二人は笑みがこぼれ、問題ばかり多い現代を自分たちなりに生きている今を生きていた。
連絡を取ろうか話しているうちに迷っているとなんだか気はずかしくなってきた。
「簡単に連絡取らない方がいいな」
「うん。今日あっただけのイベントにしよう」
さみしいやり取りに思われるかもしれない。
でもそれでいい。
たがいの生活を邪魔しないために。
今手に持っているBL本のタイトルさえ忘れなければまた会えると信じて。
BL本のタイトル名は「CROSS INTERSECTION」
【了】
CROSS INTERSECTION 釣ール @pixixy1O
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