第5話 姫魔王は勝手にデレる。


 おれは半信半疑だった。


 「ほんき?」


 瑠夏は頬をさくらんぼうのようにして答えた。


 「すっごく本気。魔王が勇者好きになったっていいじゃないか……」


  

 本気なのか。

 だって、俺はアナタを殺した相手だよ?


 ありえないでしょ。

 究極のドM?

 やっぱ、こいつやべーかも。


 瑠夏は続けた。


 「あのね。わたし小さな頃から、みんなと遊ぶの禁止されてて。友達いないし、いつか会いに(殺しに)来てくれる同年代の勇者候補の子(つまり、おれ)のことを、いつも水晶玉で見てたんだ」


 「おれって、子供の頃から見られてたの?」


 瑠夏は恥ずかしそうに頷いた。


 「その子は、善行を禁止されてる私と違って、困ってる人をたくさん助けて、毎日笑顔で」


 瑠夏は続ける。


 「気づいたら、その子のことを好きになってた。だからね。わたし刺されちゃったけれど、会えて、とてもとても嬉しかったんだよ?」


 なんか、とんでもなく愛されてるっぽい。

 でも、姫魔王の心臓を貫いた刹那、俺もその美しい表情に心を奪われていた。


 あれ。

 ちょっと待てよ。


 「それって、トイレとか風呂も見られてたの?」


 瑠夏は恥ずかしそうに頷いた。


 ってことは、まさか……。

 俺の心拍数は跳ね上がった。


 「まさか、夜の1人のプライベートタイムは覗いたりしてないよな?」


 瑠夏は真っ赤になった。


 「エイルの気持ちよさそうな顔も、ちょっと早めなとこも。かわいくて好き……」

 

 おーい。

 生涯最悪のプライバシー侵害を受けてるんですが?


 

 すると。


 「おーい。わたしのこと忘れてるぞー?」


 振り向くとノアがむくれていた。


 そうだった。

 こいつに元老院の内情を聞こうと思ったんだ。


 ノアは、なぜか俺の手を握って続ける。

 

 「姫魔王のこと。元老院もだけど、魔界はもっと問題視してるよ。次の魔王候補は、瑠夏さんを殺したくて仕方ないみたい」


 そりゃあそうだよな。


 前魔王が名君じゃ、何かにつけて比較されるだろうし。魔力がなくても、存在自体が邪魔ということか。


 これは……。

 魔界からの刺客が来るのは時間の問題だな。

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高校生の姫島瑠夏は、姫魔王の生まれ変わりである。 おもち @omochi1111

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