第4話 姫魔王はタワマンに住んでいる。
あれから涼子は俺の奴隷になった。
どうやったかって?
ふふっ。
詳細は省くが、当然「目には目を」だ。
すると、なぜか、涼子に変化が起きた。放課後待っているし、手を繋いできたりする。
それと、新事実が分かった。
元々は居なかった生徒が、ある時「前から居たこと」になってるのだ。
その生徒とは、隣のクラスの『神里乃亜(かみさと のあ)』だ。亜という文字は、勇者国では「戦士」を意味する。
つまり、神の里の戦士。
非常に怪しい。というか確定だろう
でも、コイツ、何しにきたのだろう。
瑠夏を殺しにきたか、それとも俺か。
そして、どうやら。
神里は、瑠夏の家の隣に住んでいるらしい。
こういうことは先手必勝。
週末に、瑠夏と神里の家に突撃訪問することにした。
当日、待ち合わせに指定されたのは、どデカいマンションだった。
俺の家は、中の下って感じなのだが。
随分と扱いが違くないか?
元老院のクソジジイども。
ケチったな。
瑠夏は先に待っていてくれた。
「よっ」
「……」
「どしたの?」
「しらないっ」
昨日、涼子と手を繋いでいるのを見られてから、どうも機嫌が悪い。
「知らないなら、不機嫌にもなるなよ」
「別に。エイルが誰と手を繋いだって、わたしに関係ないし」
分かりやすいヤツだなぁ。
こいつ、こんなので外交の駆け引きとかちゃんと出来てたのかな。
俺は瑠夏の手を掴んだ。
「ち、ちょっと……」
「なんだよ? 俺の手はイヤか?」
「つなぐなら、ちゃんと指を交互にして欲しい……」
どうやら恋人繋ぎをご所望らしい。
希望に沿ってあげたら、瑠夏の機嫌は直った。
エレベーターの中で、おれは神里が勇者陣営の刺客だった場合について考えていた。
瑠夏は……、戦力外だ。
俺1人でなんとかせねばならない。
勇者は対魔特化スキルが多い分、PVPは苦手だ。
大丈夫かな。おれ。
死ぬのかな。
どうせ死ぬなら、美女の胸を鷲掴みにしてから死にたい。
瑠夏の胸をみた。
残念だが、ストンとしていた。
揉む余地がなさそうだ。
前世ではリンゴくらいはあったと思うんだけど。今後の発育に期待なのだろうか。
瑠夏がこっちを見ている。
「ウチ、寄って行く?」
瑠夏の家の中に入ったら劣等感で泣いてしまいそうだ。
「いや、いいや……。それより、神里の家となりだろ? さっさと済ませようぜ」
ピンポンをする。
出てこない。
ピンポンを30回ほど連打した。
1分ほどしてドアが開いた。
中から、気怠そうな女の子が出てきた。
頭ボサボサでジャージのズボンかズリ下がっている。
下着は紫らしい。
ん?
コイツ。どこかで見たことあるぞ。
パタンッ。
俺と目が合うと、無言のままドアが閉まった。
そして、ドアの向こう側から何やら声が聞こえる。
「エイル。なんで。ちょっと。ウチ、普段はもっと可愛い服きてるから。来るなら言ってよ」
俺は確信した。
コイツは里の幼馴染のアイリスだ。
コイツに負ける気がしない。
千回やって万回勝つ自信がある。
用は済んだ。
俺は満足して帰ることにした。
身体を翻すと、中からバタバタという音とともに声が聞こえてきた。
「ちょっと待ってよ。ウチのイメージ、ボサボサパンツのままで帰らないで!!」
「いや、別にお前に用事ないし」
つか。同じ勇者の陣営なのに、男女で待遇違いすぎだろ。あのジジイ共、やっぱり皆殺し……。
そこで、おれはある事に気づいた。
「瑠夏。お前さ。さっきからふうーに馴染んでるけど、いきなり神里の家に行ったり、俺のこと不審に思わないわけ?」
瑠夏は首をかしげる。
「なんで? だってエイルは勇者だし」
「え? いつから知ってたの?」
まじか。
今までの苦労はなんだったんだよ。
「わりかし最初からだよ。だって。エイル同じ名前だし」
「分かってるなら言えよ!!」
「……」
でた。コミュ障。
意味わかんないところで会話が進まない。
俺は黙った。
沈黙でプレッシャーを与えるのだ。
瑠夏は耐えかねて口を開いた。
「だだだだって。魔王が勇者を好きとか恥ずかしいじゃん……」
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