止まらない姫騎士の愛情
フィリアの屋敷での生活が始まって数日。
セレナは、豪華な環境には少しずつ慣れてきたが、フィリアの「過保護」だけはどうにも馴染めなかった。
「セレナ! 朝だぞ! あっ、そうだった」
フィリアはドアを勢いよく開け、思い出したかのように開いたドアを三回ノックした。
「だからノックの意味ないじゃん!! 何度も先にノックしてって言ったよね!?」
セレナは布団を引っ張り、体を隠した。しかし、そんな彼女を見たフィリアは満面の笑みを浮かべる。
「すまない。早くセレナに会いたいがあまり忘れてしまうのだ。しかし、やっと砕け口調になってくれたな。うむ、凄く尊い」
「だから尊いとか言わないで! それに、そんなにジロジロ見ないで!」
「安心しろ。私はセレナのことなら全て見守る覚悟がある!!」
「だからそれが嫌なんだってば!!」
全力でツッコむセレナを気にも留めず、フィリアは部屋に入りカーテンをシャッと開けた。
部屋に眩しい朝の光が差し込む。
「今日は素晴らしい天気だぞ。君にはこの美しい朝が似合う」
「似合うとか言われても眩しいんだけど!!」
セレナが目を細めながら起き上がると、フィリアはすかさず手を差し出した。
「よし、まずは朝の一歩から支えよう」
「いや、そんなに気を使わなくていいから!!」
(本当、この人過保護すぎるよ……)
◎
「ほら、セレナ、朝食を用意しておいたぞ」
フィリアに案内されたテーブルの上には、山盛りの豪華な料理が並んでいた。
パンや果物、スープはもちろん、キラキラと輝く宝石のようなデザートまで……どれも目を見張るほどの豪華さだ。
「これどこの王様の朝ごはんよ!! 豪華すぎるでしょ!!」
「君の健康も考えて、完璧な栄養バランスにしてあるぞ」
フィリアは胸を張る。
「いや、そこまでしなくていいから!! 私なんてトースト一枚で十分よ!」
「これでも足りないくらいだよ」
「いやいや、これで満足してないの!?」
渋々フルーツを一口齧ったセレナは、その美味しさに驚いた。
「……美味しい」
「だろう? 君のために最高の素材を集めたからな」
「最高の素材って……このフルーツ、まさか超高級品とかじゃないよね?」
セレナが訝しげに尋ねると、フィリアは得意げに笑った。
「それは『真月の実』という貴重な果実だ。この国の王族ですら、年に一度しか口にできない」
「いや、それ絶対私の口に入れるものじゃないでしょ!? そんな貴重品を!」
「そんなことはない。私にとっては、君が代わりのきかない最も貴重な存在だからな」
優しく微笑んでそう断言するフィリアに、セレナは頭を抱えた。
(いや、この人本当に話が通じない……でも、ちょっと嬉しいって思っちゃうのが悔しい!!)
◎
朝食を終えたセレナは、フィリアの案内で庭に出ることにした。
広々とした庭には色とりどりの花が咲き乱れ、風に乗って甘い香りが漂っている。
「……これ、庭っていうかもう植物園だよね……」
セレナは呆然と立ち尽くし、目の前の光景を眺めた。
「すごいだろう?」
フィリアは自慢げに胸を張る。
「君が歩く庭だ。この程度の美しさは当然だろう」
「いやいや、私普通の人だから! こんな豪華じゃなくていいんだってば!」
「普通……?」
フィリアはわざとらしく眉を寄せて、セレナに顔を近づけて呟く。
「君が普通などという言葉で片付けられる存在なら、私は騎士を辞める」
「いや急に辞職しないで!? もう…… 重すぎるって!!」
フィリアのテンションに振り回されながらも、セレナは庭を歩き始めた。しかし、ふと足を止めて噴水を見つめる。
「本当に綺麗ね……こんなところで暮らせるなんて、夢みたい」
「セレナ、もしこの庭に気に入らないところがあれば、すぐに言ってくれ」
「え? 別にないけど……」
「遠慮しなくていい。たとえどんなに綺麗な花だろうと、君が邪魔だと思うならこの庭から取り除こう」
「いや、そんなことしなくていいから!! あとそんな事思わないわよ!!」
「そうか、ならば……」
フィリアは何かを考えるように空を見上げた後、にっこりと笑みを浮かべた。
「ここに君の彫刻を作ろうと思うんだが、どうだ?」
「彫刻!? いや、そんなのいらないから!」
「君が歩く庭にはさらなる輝きが必要だと思ってな」
「必要ないよ!! あと彫刻とかすごく 恥ずかしいわよ!!」
セレナが全力でツッコむ中、フィリアはさらに続けた。
「ならばどうだ、君の金像を作ろう!! 黄金で君を形作り、この庭の中央に飾るんだ! 純金で!!」
「彫刻とほとんど変わらないじゃない!! あと余計に恥ずかしくなってる気がするわよ!!」
次の更新予定
2024年12月17日 19:00
元限界OL。異世界で美少女になったらなぜか姫騎士に溺愛される イチゴオレ @Ore_Ichigo
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