37年前の私へ

クライングフリーマン

37年後の私から

 今日、君が大阪のアパートから運んだ衣類の整理をしたよ。

 君が引っ越してから、色んなことがあった。

 彼女と別れて失意の中、この家で再スタートして、プログラマの勉強を始めた。

 そして、プログラマになったものの、なかなか仕事に恵まれずにやっと運が向いてきたと思ったら、「二次派遣禁止」なんて法律作られたお陰で、孫請け・ひ孫請け・玄孫受けの仕事が出来なくなった。

 尿道結石、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、慢性鼻炎、膝関節症、脊柱管狭窄症、耳鳴り治ったら難聴。『病気の鎧』だらけだね。

 私は、労働意欲はあったものの、何でも仕事する気だったものの、交通事故が基で、車椅子生活していた父が亡くなった後、母と3年7ヶ月同居し、『介護的生活』していたら、脳梗塞で入院、退院後、自宅でリハビリして貰う積もりが、自分の病気のせいで困難になり、母は介護施設を転々とし、先日やっと母の介護生活が終った。

 詰まり、亡くなった。

 いつの間にか、父が亡くなった時に「預かり」扱いになっていた預金の一部がかなり目減りした。(赤字になった)

 親族会議で赤字分は免除されたものの、質素に暮らせざるを得なくなった。

 月日が長すぎたなどと言い訳はしないが、ギャンブルや投資で減った訳ではない。

 介護費用は、色んな「雑費」がかかるのだ。

 私は、「断捨離」は断固反対と意気込んでいたが、遺品整理のついでに自分の荷物も整理し始めた。

「想い出と共に取捨選択する」作業に入ったのだ。

 君が、衣装懸命、スーパーから運んだ金属製の行李もいつか廃棄することになるよ。

 去年、私自身が脳梗塞になった時は、母の面倒を見切れずに先に旅立つことになるのかと思ったが、何とか回復した。

 だが、8年間の「介護疲労」は半端じゃない。

 母が亡くなってから、3回点滴を受けたよ。

 それでも『長男の義務(当主としての義務)』は果たさなければいけない。

 法事は満中陰までこぎ着け、遺産分割は結局行政書士に一任することになった。

 だからこそ、片づけ始めた。

 寝たきりの母へのプレッシャーが大きいこともあり、流行病(まだ流行って欲しい輩がいる)の陰鬱さもあり、小説を書き始めた。

 友人に馬鹿にされて、君が「断念」したシナリオや戯曲の代わり、Web小説の投稿を始めた。

 告別式と満中陰法要の日以外は、毎日12カ所に日替わり投稿している。

 体がボロボロでも、君より熱量が、エネルギーがあるかも知れないね。

 SFと違い、先回りして君の困難を回避させてやることは出来ない。

 また、とうとう家族を持てず、地位・名誉・財産も持てず享受する人間になることを回避させてやることも出来ない。

 でも、君は、色んな『時の氏神』と出逢い、君自身が『時の氏神』になっていく。

『壁』だと思えば打ち破れない、『ハードル』だと思えば乗り越えられない。

 一言だけヒントをあげよう。君がいた『演劇の世界』は無駄じゃない。

 いざとなれば、『登場人物』を演技すればいいんだ。

 勝ち負けなんか拘らなくていい。

『無手勝流』でいいんだ。

 37年後で待っているよ。

 ―完―


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37年前の私へ クライングフリーマン @dansan01

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