脇役、やられ役に愛を!

素通り寺(ストーリーテラー)

さぁ、脇役ややられ役を愛そうじゃありませんか

 どうも、素通り寺(ストーリーテラー)と申します。ペンネームだけは立派ですが、実際にはカクヨムで流行らない小説をセコセコと書いている底辺作家であります。


 ただ、うぬぼれさせて頂くなら私は、自分が書く小説に自信と誇りを持っております。ランキングや評価は低いし出版社からの打診もありませんが、それはただ単に時代が自分に追いついていないだけだと思っております(えらそう)。


 そんな『次に来る』(はずの)作家の私が、新たに巻き起こるムーブメントに皆様が乗り遅れないための次世代の小説の書き方、読み方などを知ったかぶりでつらつらと書いていきたいと思います。



 さて、皆様。今のラノベがいわゆる文学小説や大ヒット映画、人気漫画や人気アニメに対して欠けているモノとはなんでありましょうか。

 ないとは言わせませんよ? 昭和の時代と違って漫画やアニメが『作品』として世間に認められる今の時代になっても、ラノベは相変わらず世間の多くの人に認知すらされていません。

 動画サイトなんかで『今期のアニメ特集』の類のPVでも、ラノベやWeb小説が原作のアニメの紹介になるやいなや「これはパス」「はいはい、な〇う系〇ろう系」等のお断りコメントがつらつらと流れ始めます。


 同じアニメでも、ジブリ作品や新海作品、庵野エヴァや富野ガンダム、細田地図作品、押井守の世界。そんな名作世界の数々には比べられる事すらないでしょう。


 ラノベのコミカライズ作品にしたって、果たしてドラゴンボールやワンピース、うる星やつらやうしおととら、金田一少年の事件簿や博徒黙示録カイジ、それら超一流の漫画に比肩するほどのラノベ原作の漫画が果たして存在するでしょうか。うん、無いですね。少なくとも世間一般の認知としては。



 果たして、この差は一体どこから来るのでしょうか。


 もちろん、みんなうすうす気づいていますよね。それはまずもって『世界観の違い』なのです。


 波乱万丈、驚天動地、どこまでも広くて深い世界観の中で、冒険、恋愛、恐怖、勇気、友情と、あらゆるドラマを自在に描いていく名作漫画やアニメ、映画や文学小説に対して――


 あまりにも、あまりにもペラッペラの世界観しか持たない。それはラノベなのです。

 だってを、つらつらと描いているだけなのですから。


 まぁだからこそ『ライト』ノベルというのでしょう。読み手がストレスなく、自分と主人公を重ねてトントン拍子でイイ思いをする。

 普段の仕事や勉強でなにもかも思い通りにならない人生を味わってきた、そのストレスを解消するために、そんなうっすい物語に逃げ込むのでしょう。


 そりゃ気分はいいですよ? な-んにもせずに大金が手に入ったり、美女や美男子が無条件で寄り付いて来たり、今の嫌な世界を全部投げ捨てて異世界に行って、神様から貰ったインチキチート能力で好き勝手するのはねぇ。

 挙句に現実世界の嫌な奴を投影してラノベの中でざまぁリンチする作品とか、さぞ気分がいいでしょうね。現実にやったら犯罪ですし、返り討ちに会ったり報復をされる心配も、警察にバレて身内もろとも人生を台無しにする心配もありませんからから。


 そう、残念な事にこれがラノベの実態なのです。そしてWeb小説の方でも人気取りのために、こんなペラペラしたお話をカク人、ヨム人が実にたくさんおられます。


 全く、嘆かわしい事です。


 努力せずに成功するのを望む、嫌な奴を罪にならずに貶める。こんな妄想世界をつらつら描いている限り、ラノベは決してには認められないでしょう。


 じゃあ、どうすればそんな状況を覆せるのでしょうか。職場でオッサンもオバサンも「あのラノベ小説面白いわよねぇ」「早く次の巻が出ないかな」と話題に上げ、広告やニュースでも広く作品が紹介される。果ては子供にまでラノベやWeb小説を推奨し、ラノベ作家になる事すら認める。

 そして次代にはついにラノベの世代が来る。そんな未来になるためには、カク人やヨム人が何をするべきなのでしょうか。


 先程書いた通り、世の名作とラノベの差はひとえに『世界観の違い」であると言えます。

 名作が宇宙のように果てしない世界観を持っているのに対して、ラノベはせいぜいグラウンドくらいの広さ、矮小なものなら自分の部屋の狭さしかないでしょうね。

 狭い部屋に引きこもっていれば、自分=主人公に都合の良い事ばかり、でも不思議はないのですから。


 しかし、だからと言ってカク人に名作並みの世界観を持て、描け。ヨム人に名作並みの深さを受け入れろ、と言ってもまず無理でしょう。活字アレルギーの今の世代なら尚更、文字で深く広い世界を追うのはさぞしんどいでしょうからね。


 ですが……ここに本エッセイの最大のキーがあるのです。ラノベやWeb小説を世の名作並みに引き上げる、たったひとつの意識改革が!


 そう、『脇役』や『やられ役』、『モブ』をもっともっと愛せばいいんです。それだけで間違いなく、世界はビッグバンのように広がって行くでしょう。


 名作の世界では必ず、この脇役ややられ役が実にいい魂を持ち、自在にリアルに行動して、様々な形で主人公に関わり、そして物語を動かしています。

 そしてそれは、その世界観をぐぐぐっ! と押し広げているのです。ただの個人が描いた妄想の世界なのに、まるで実際の世界以上に自由で広大な世界が描けているのです。


 どうしてでしょうか。


 それは取りも直さず『世界』とは、『ニンゲン』だからなのです。


 人間一人一人が日々の営みを生きているからこそ、現実世界はあまりにも広大で、そこには果てし無いロマンがあります。


 もし世界にあなただけしかいなかったらどうでしょう。あなたはただ日々の糧を得るだけの存在であり、アメリカの自由の女神もインドのタージマハールも、近場でない人は富士山すら知らないでしょう。月面の世界や太陽の原理も、地球が動いている事も知る事が出来ませんし、星座や神話すらも存在しません。


 もちろん物語すらも。


 世界にニンゲンがいるからこそ、それらは発見され、伝えられ、創作され、教えられるのです。どれだけ世界が広くても、それをあなたに伝える人が居なければ、その世界は一行に広がらないでしょう。


 だから物語に存在する主人公以外のキャラクターを愛し、魂をぶち込み、彼らの立場に立って考えて動かす。書き手がたったそれだけを意識するだけで、間違いなく物語の世界は大きく広がるのです。

 だってそうでしょ? ヨム人がもし「この脇役なんか俺に似てるなぁ」「このやられ役、好感が持てるわ」なんて思ったらそれだけで物語は立体的になるハズです。

 何故なら読み手が主人公だけでなく、その脇役、やられ役の視点からも物語を見るからなのです。

 一次元しゅじんこうの世界や二次元(ライバルやヒロイン)の世界から、三次元(脇役、やられ役)にまで世界を広げて、初めて物語はになるのですよ。


 そう、つまり世界を深く、濃く、そして広くするのは脇役、やられ役なのです。彼らはなのですから。

 そしてそれはあなたを主人公とするならば、あなた以外の世界中全ての人に当たるのです。そしてそんな不特定多数の中でのが、主人公という存在なのです。


 だから物語をカク時も、そしてヨム時も、常に脇役ややられ役を意識して描き、読みましょう。そうすればきっとラノベは、Web小説は、必ずや次のステージに進めるはずなのです。


 いつまでもいい大人が絵本みたいな『主人公絶対世界』に浸っていてはダメでしょう。

 幼い子供にとっては確かに絵本の世界は適切です。「あなたは祝福されて世界に生まれて来た、世界の主人公なのですよ」と教え、物語を通して世界に希望を与えるべきなんです。


 しかし、もう中高生にもなるラノベ読者世代が、あまつさえ人生に疲れ気味のオジサンやオバサ……もといお姉さま方が、そんな絵本みたいな世界にしがみ付いていてどうすんですか。


 あなただってこの世界じゃ脇役、やられ役の類でしょ? そりゃ大谷翔平選手や藤井聡太棋士のレベルなら世界の主役と言えます。でもそうじゃないでしょ?

 そんな貴方が主役を夢見て創作に逃げるのはいいでしょう。でもそのあまりに都合のいい世界に浸っても、現実は何も変わりませんよ?


 なら自分の愛読している世界を、少しでも誇りに思いたいと思いませんか? 自分が執筆している物語を、世の中のより多くの人々に認めてもらいたいと思いませんか?


 何より今のラノベを、主人公に都合のいい薄っぺらい世界の物語を「売れるから」と言って本にしている出版会社さん。このままで本当にいいんですか?


 ラノベの世界に革命を起こすような一冊を、世に出して見たいと思いませんか?



 私の別作品「愛すべき脇役、やられ役たち」には、私が名作漫画やアニメから個人的に推しの脇役、やられ役たちにスポットを当てて紹介しています。

https://kakuyomu.jp/works/16817330663462802820

 名作が名作であるが所以ゆえん。その脇役、やられ役たちの視点から物語を改めて見ると様々な発見があります。

 そしてそれはカク人にとって、またヨム人にとっても、大きな財産となるでしょう。


 さぁ、愛しましょう。モブを、脇役を、やられ役を。

 そしてラノベを、Web小説を、世の名作に比肩する物語へと昇華していきましょう。

 そのムーブメントを、是非ともこのカクヨムから作り出して行こうじゃありませんか!




    人呼んで『ポストラノベWeb小説家』素通り寺(ストーリーテラー)

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