征きて帰りし物語

ヘンなやつ

第1話

 この海域を通ったのは、はじめてだったが。

「司令官!」

 呼ばれる。

 おれは、振り返りもせずに答える。

「なんだ」

「敵国の支配海域に入りました!」

「こわいか」

 あえて、きいてみる。

「いえ……! 滅相もありません」

「そうだな」

「われわれは、その名に『無敵』を冠する艦隊です」

「おれたちの使命は、なんだ?」

「……女王の島を、砕くこと」

「そうだ」

 そのための、行軍なのだ。

「なるがゆえ! 恐怖など、ありえません!」

「よくいった」

 おれは、この戦船の司令官だ。

 大将の乗った旗艦をとりかこむ、船団の一隻だった。

 これから、女王を戴いた生意気な島国を、討ちにゆくのだ。

「司令官! ……報告します!」

「なんだ」

「ハっ! 会戦想定範囲の海域から、敵の船を確認しました!」

「わかった」

 いよいよなのだ。

「大将の船に連絡しろ。いまから戦闘体勢に入る」

「ハっ‼」

 おれは、望遠鏡を構えた。

 進行方向である、北の海域にだった、確かに敵船が、あらわれている。

(……つまらん船だな)

 そう、思った。

 敵船団は、よほど貧弱なのだろうか。

 あれで苦戦する気は、なかった。

(おれたちは、やはり勝つだろう)

 正直そう思ったのだ。

 

 ……そのときは、だった。

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征きて帰りし物語 ヘンなやつ @sunguorrung01

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