世界最強の魔剣を持つ最弱勇者~異世界で俺だけチートスキルを貰えなかったので、最強の魔剣を手に入れましたが俺自身が弱いので使いこなせないようです

地獄くん

第1話 異世界にて

「次は化学か…移動めんどくさいな…」


そんな独り言も休み時間の教室の喧騒にかき消される。

あっ、教科書忘れた…仕方ない、真衣さんにまた見せてもらうか…


「れいくん、今日は教科書持ってきた?」

「…今日も忘れました」


授業開始の挨拶で席に座るとともに、真衣さんに訊かれる。もちろん忘れたので見せてと言うと…


「このあほっ」

「いてっ!」


脇腹をいつもシャーペンでどつかれる。


学校の話し相手になってくれるのは真衣さんくらいしかいなく、当の彼女はスクールカースト一軍(真衣さんはそういうのはあまり好きじゃないらしい)、男子からは二日に一回は告白され、いつも成績トップ、スポーツもでき、よく部活の試合に助っ人として出ている文武両道の完璧美少女だ。


一方の俺は、学校では友達は真衣さんの一人(真衣さんは俺と友達だと思ってくれているのだろうか…)、馬鹿ではないが、成績じゃ真ん中あたり、運動できない、別にイケメンってわけでもないし…いわば俺と真衣さんは対照的だ。


「…おー…きい…るの?」


今度は左腕に尖った衝撃が来る、


「いてっ!」

「聞いてるの?黒板のほうに実験…見に行かないと…」

「ちなみに俺の左腕に何を?」

「うん?わたしぃ、そういうのわかんない…」


(おもっきしシャーペンの芯が突き刺さってるなぁ)


真衣さんはクラスの女子とともに前のほうに行き、俺も真衣さんについて行くようにシャー芯を抜いて…


「おいてめえ…あんま調子乗ってんなよ」

「橋本君…やめてくれよ…」


今度は右腕を橋本につねられる。最も橋本とは、カースト一軍、馬鹿な陽キャ、ヤリチン、この三単語で片づけられるような男だ。そして、その周りにいる取り巻き三人も。


「ちょっと真衣に好かれてるからって…」

「こらっ!橋本さん!喧嘩はやめて前に見に来なさい、中内くんも」

「ちっ」


そう一言だけ吐き捨てるとやつらは前のほうへ行く、俺もその後ろをついていく形で行く。


「よし、みんな来たね、今日はちょっとだけ面白いをしようか…」


先生の前に用意されているのは魔法陣と紫色に光る怪しげな液体。

最も、この先生はいつもこんな感じなのでみんなは何も触れない。


「では、安全のためにこのカプセルを飲んでもらっていいかな?水はいらないよ」


しかし、委員長の理沙さんがいつもとは違う様子に疑う。


「先生、先生がはっきり言って中二病なのはいつものことですが、このカプセルは一体何ですか?変なものだったら飲みませんから」

「安心したまえ、そこに入っているのは塩化ナトリウムだ。飲みやすくカプセルにしただけだ」


委員長はカプセルの中身を空けると白いざらざらとした粉が入っていた。どうやら本当のようだ、みんなは疑わずにそのカプセルを口に含む。


先生はいつもちょんまげなのだが、そのちょんまげをおろして今日はロン毛だ。

いつもとは違う様子に俺も少しだけ気が付くが…もう手遅れだった。


みんながカプセルを口に含むと同時に、先生はビーカーに入っている紫色の液体を、魔法陣の書かれた画用紙に注ぐ、その瞬間に俺は全身の力が抜けたのを感じ、地面に頭を強打する。


(くそ…どういうことだこれ…ろれつも回らねえ)


それはみんなも同じようで、バタバタとクラスメイトが倒れ、ついに三十人全員が倒れた。


「あぁ、さいこーだぁー」


先生のその声だけが聞こえて、俺の意識はなくなった。


ーーーー


次に目が覚めると俺は服も着らずに、真っ白い部屋の中にいた。


「ごめんねー君、死んじゃった、コースを選んでもらってもいいかな?」


へ?死んだ…あっ、死んだ…だとすればここは死後の世界?


思わず俺は茫然とする…


「君日本人で日本語で合ってるよね?ん?まあ、気持ちもわかるよ。あんな感じでふっと死んじゃうんだもん、だからコースは…」


すると突然、案内の女性の声と表情が曇っていく。


「あっ、君あの死に方なの?じゃあコースはこれしかないね…」


そして女性はタブレットに触ると、俺の目の前にスクリーンが出現する。


「君には異世界に飛んでもらう…飛んでもらうけど、異世界満足度的には星1のところだね、王様による独裁政治が続いていて、治安も悪すぎ、おまけに勇者と魔物の力量の差は顕著で、魔物と戦った勇者はみんな死んでるよ…それもスライムみたいなやつで」

「えっ?もっと、マシなところないんですか?」

「やっと喋ったね。でも残念、なら強制的にここだね」

「…わかりました、ここしかないんですよね…」


俺は肩を落とす、女性は魔法のような不思議なものを俺にかけ、俺は右半身からチリのように消えていく。


「大丈夫だよ、君のクラスメイトさんたちも全員一緒なはずだよ」


(またクラスメイトか…いやだな…)


と思った。


ーーーー


次に目を覚ますと俺は制服を着てまた白い空間にいた。

今度はクラスメイトがいるようだが…なにやら前のほうでみんな楽しそうに何かを選んでいる。


「俺、雷使いがいい!」

「私は魔法使い!」

「俺は剣士でいいよ」


そうして俺も飛び起きて前のほうに向かうもそこには…


【心理学者 レベル1】


しか残っていなかった。


「あーわりいわりい、お前だけ気持ちよさそうに寝てたから笑」

「中内、もうさっさとそれ選んでくんない?」

「まあ俺たちはみんな戦闘向きのジョブだけどよ…お前のジョブは…笑」


俺は黙ってそのジョブに触れる。

そして、目の前のスクリーンがまた出てくる。


【ナカウチ レイ 高校二年生 17歳 12月25日生まれ】

【ジョブ 心理学者 レベル1】

【固有スキル なし】


目の前のスクリーンから目を離すと、あたり一面に草原が広がっていた。

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