略奪! 奪われた自由意志! 絶対隷属を誓わされる俺の口!
――催眠。
それは誰しもが一度は妄想するロマン。
高嶺の花である美少女を、自分だけの物に出来るという背徳感あるロマン。
どんなに酷い命令だろうと、催眠に成功すれば喜んで従わせる事が出来るという、する側が絶対強者にならざるを得ず、される側は絶対弱者にならざるを得ないという隷属を誓わされる。
自分だけの意志を他人に容易く奪われ、自分の身体が自分の意志に反して動く……いや、相手の為に動くのが最高の幸せであると刷り込みさせる事が出来るのであれば、自分の意志だと思い込ませながら他人の欲望を満たす事が出来るだろう。
……そう、欲望。
例えばそれは人間の3大欲求の1つであり、その欲望によって人間たちは現在に至るまでに人口を大幅に増やす事に成功した。
そんな秘めるべき欲望を解き放っても許される――より正確に言うのであれば、問題になりようがない――そんな夢のような道具が、そんな人道に反するような闇の誘惑が手元があれば。
そんな、秘めたる思いを寄せる人間を好き放題に出来てしまえる大義名分ときっかけを得てしまえば。
どんな人間でも狂う事は想像に難くない。
「オラッ! 催眠! ほ、ほら! ハンバーグとか頼んでいいから! ね? ね! もちろんドリンクバーとかも付けていいからね! ほら見てコレ株主優待券! ドリンクバー無料だよ⁉」
「いや俺は安いヤツでいいので」
「オラッ! 催眠! 私に遠慮せずに好きなモノを頼んで! 食後に頼むアイスも頼んじゃって! 何なら全メニュー頼んじゃおっか⁉」
「いや流石にそんなに食べられな」
「オラッ! 催眠! お会計は全部私が出すから安心して! 後輩くんとこうしてファミレスで期末試験お疲れ様会デートをする為だけに株で一山当てたから! めっちゃお金あるから! お金だけはあるから!」
「いやそれは流石にお疲れ様会の範疇を超えて」
「オラッ! 催眠! もう何でもいいから私と一緒にファミレスでイチャイチャしようよぉ……⁉」
そんなロマン溢れる催眠アプリを開発しておきながら、被験者に餌付けをしたがる悪の女科学者になりきれないポンコツな先輩がいるらしい。
なんなら目の前の席に座っている。
というか、どうしてこの人は自分のスマホの電源の充電が0%になっている事に気がついていないの?
アレなの?
そういう催眠に掛かってるのこの人?
自分のスマホの充電が0だっていう事に気が付かない催眠にでも掛かっているの?
もしかしてこの人って馬鹿だったりするの?
「じゃあ、デザートを頼みます」
「オラッ! 催眠! 遠慮しないで! 黒毛和牛ハンバーグとか頼んで!」
「一応、俺には夕食を作って待ってくれている家族がおりまして……あんまり食べられないかなーって」
「え、あ、そ、そうなんだ……オラッ! 催眠! ちゃんと家族に報告した⁉ 帰りが遅れるよってちゃんと報告したの⁉」
いやだからその何と言いますか。
そんなエロ同人で聞くような台詞を連呼しないでくれません?
ここは幅広い年齢層の方々がご利用なさるファミレスであらせられるので、そういうワードに思わず反応してしまう人がちょくちょくいるんだよ?
「先輩とこうしてお疲れ様会をする為に予め連絡を入れてますよ、疑う様子でしたらスマホを見てください」
「え? あ、本当だ……ちゃんとこういう報告が出来て後輩くんは偉いね」
「先輩は俺を何だと思っているんですか」
「こうして催眠に引っかかってくれる馬鹿な人? うん、底抜けの善人だよね、後輩くん。そういうところ、大好き」
指に顎を当てながら可愛い表情を浮かべて何て酷い事を言うのこの人と思ったけど、後半部分で俺の事を好きと言ってくれたから好き。
というかそれを言うのなら、俺を催眠に掛けていると錯覚しているこの先輩の方がかなり馬鹿じゃないの?
だがしかし、ここで下手に彼女の事を馬鹿にでもしようものならば、俺が催眠に陥っていないという事に気が付きそうで怖い。
確証はないけれども、そういう嫌な予感だけはひたひたとするものだから黙っておく事にする。
今の俺は先輩の催眠奴隷……いやまぁ、奴隷と言うには余りにも好待遇であるという自覚はあるのだけれども。
「さて、何はともあれデザートを選ばないとだね……オラッ! 催眠! 何か食べたいものある?」
「いえ、特に何も……先輩と同じものでいいですよ?」
「じゃあパンケーキ頼もう! ここってカップル限定の特別メニューあるんだよね! もちろんこれも株主優待券で安くできるから安心してね!」
「え」
「すみませーん! カップル限定メニューのジャンボラブラブハートパンケーキを1つ!」
何その催眠に掛かって無理やりに命名させられたようなバカ極まりないパンケーキの名前。
次の更新予定
甘え下手な銀髪先輩様が催眠アプリでエッチな命令した時の対処法 🔰ドロミーズ☆魚住 @doromi
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