ライダーに負けた日
加加阿 葵
祭囃子
「今買われたの誰だ?」
「……またライダーだよ」
「またかよ!? 今日何枚目だよ! 毎年大人気じゃん!」
「そらそうっすよ。俺らテレビで毎週変身してるもんなぁ」
「地味でおっかねえ能面。みんなスルーですって」
「おま、地味とかいうなよ! 俺たちは伝統なんだよ! 伝統!」
「でもさあ、今日のお祭りで伝統って売れてます?」
「……いや、売れてない」
「俺なんて、さっき浴衣姿の女子高生に怖って言われたんだぞ!」
「般若が怖いのは仕事だろうが。怖くなかったら意味ねーだろ!」
「良いなぁ。毎年フォーム変わるライダーたちは」
「あんたらはずーっと同じっすね」
「変わんないのが良さなんだよ! 伝統の重みって奴! 事あるごとにフォームが変わるやつにはわかんないでしょうけどね!」
「やめとけよ。多分その口喧嘩勝てないからよ」
「あ、俺呼ばれたっす。能面の皆さんお先に失礼しますわぁ」
「もう10枚以上売れてるよな」
「俺達0なのに」
「0なのに」
「やっぱ俺達もテレビとかでないとダメじゃね?」
「たまーに出るだろ。それこそ伝統工芸紹介みたいなコーナーで」
「あー、くやしい。急にバズったりしないかな」
「俺達もフォーム変えようぜ」
「急に伝統捨てるじゃん」
「それでは小面フォーム!」
「他の能面にチェンジしても意味ないでしょ」
「ライダーが憎い! でも、ちょっとかっこいい……」
「お前嫉妬してるくせに憧れてるだろ!」
「嫉妬と憧れは表裏一体なの!」
「あれ、今度はあれが売れたよ。あのキラキラしたピンク髪の女のお面」
「名前忘れたけどな」
「魔法少女って奴らしい」
「魔法少女も毎年違うのいるよな」
「みんなかわいいよね」
「まあ、キラキラしてるもんな」
「俺らもするか」
「般若がキラキラしてたらちょっと嫌だろ!」
「おい! そんなこと言うなよ! 般若さんは俺らのエースだぞ!」
「エース。本日の売り上げ0です」
「あ、まってまって。あの親子こっち見てる! めっちゃ目が合ってる!」
「怖ーいって指さされただけだったな」
「今年もダメか」
「来年もたくさんお祭りありますって」
「なんでライダーに励まされてんの」
「来年までまたこの箱の中で埃をかぶるだけか」
「埃も伝統の重みって言ったろ!」
「初めて聞いたよ」
ライダーに負けた日 加加阿 葵 @cacao_KK
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます