シュレディンガーの猫は金庫に眠る
夢神 蒼茫
シュレディンガーの猫は金庫に眠る
行員
「お電話ありがとうございます、四津菱USSR銀行、浦塩斯徳支店でございます」
客
「あ、行員さん? ちょっと尋ねたい事があるんですけど?」
行員
「はい、私、
客
「瀞月さん、えっと、なんかさ~、ニュースで聞いたんだけど、銀行の貸金庫で窃盗事件があったって聞いたんだけど、そちらの銀行、大丈夫かい?」
行員(瀞月)
「照会いたしますので、お客様のお名前をお願いいたします」
客(孔明)
「姓は諸葛、名は亮、
行員(瀞月)
「孔明様ですね。いつもご利用いただき、ありがとうございます」
客(孔明)
「うむ。んで、私の貸金庫は無事かね?」
行員(瀞月)
「孔明様の金庫番号は“114514-234”で間違いありませんか?」
客(孔明)
「うむ、その番号だ」
行員(瀞月)
「それでしたら、盗難被害にはあっておりませんので大丈夫です」
客(孔明)
「どうやら間抜けは見つかったようだな」
行員(瀞月)
「!?」
客(孔明)
「なぜ、開けていない金庫の中身が無事である事を知っている!?」
行員(間抜け)
「!☆@*><¥!?」
客(名探偵)
「早く答えろ!」
行員(間抜け)
「えっと、その」
客(名探偵)
「開閉記録がないなら問題だし、あるならば犯人はすぐに割り出せるはずだが?」
行員(間抜け)
「か、開閉記録がないならば、何も問題が起きていないという事では!?」
客(名探偵)
「大ありだよ。なぜなら、前に金庫を開けた際、金庫の内側に開閉したらすぐ分かるように、独自のセンサーを仕込んでおいたからな!」
行員(間抜け)
「!?」
客(名探偵)
「センサーに反応したから、こうして電話かけたんだぞ!」
行員(間抜け)
「そ、それは……」
客(名探偵)
「なんという事をしてくれたのだ! あそこには純金で出来た銅雀台が保管してあったのだぞ!?」
行員(間抜け)
「純金なのに“銅雀”とは、これ如何に!?」
客(名探偵)
「うるさい! それに、玉璽だって入ってたんだ。もし無くなっていたらこの落とし前、どう付けるつもりだ!?」
行員(名探偵)
「どうやら間抜けは見つかったようだな」
客(間抜け)
「!?」
行員(名探偵)
「金庫室は防音、防弾、電波遮断は完璧。外部から電波を送受信できる環境にありませんので」
客(詐欺師)
「!☆@*><¥!?」
行員(名探偵)
「いるんですよね~。例の貸金庫の窃盗事件以降、ありもしない中身の損害賠償を求めてくる輩が」
客(詐欺師)
「!☆@*><¥!?」
行員(名探偵)
「通話は音声記録を取ってありますので、恐喝・詐欺事件としてしかるべき場所に訴えさせていただきますね、お・きゃ・く・さ・ま」
客(詐欺師)
「ガチャン! ツー、ツー、ツー」
行員(名探偵)
「バカだな~。何件来るんだよ、この手の奴はよぉ」
行員(同僚)
「お、やっと終わったか」
行員(名探偵)
「ああ、もう大丈夫だ」
行員(同僚)
「んじゃ、金庫を物色しますか」
行員(詐欺師)
「詐欺事件で起訴されて、社会的信用はがた落ち。中身を失敬しても、誰も咎める奴はいないさ」
行員(盗人)
「中身が盗まれたって騒いだところで、誰も信じないしな」
行員(詐欺師)
「架空の被害をでっち上げるような詐欺師だ。誰も信用しない」
行員(盗人)
「バカな奴もいるもんだ」
行員(詐欺師)
「ちょいと言葉に詰まってこっちがしどろもどろになった途端、アホみたいに突っ込んでくるからな」
行員(盗人)
「余計な事を口走って、逆にこっちに訴えられかねない材料をご提供っと」
行員(詐欺師)
「誘い受けからの一転攻勢ってな」
行員(盗人)
「中身の記録がないからこそ、こっちも心置きなく物色できるってもんだ」
行員(詐欺師)
「別支店の阿呆がヘマやって、貸金庫窃盗が公になった時はどうなるかと思ったが、意外と何とかなるもんだな」
行員(盗人)
「一手間加えて、ワンクッション! 俺達の副収入を潰させやしないぜ!」
行員(詐欺師)
「まあ、こっちも開けてみるまで、何が入っているかは分からんがな」
行員(盗人)
「換金しやすくて、かつ足の付かない物だったらいいんだけどな」
行員(詐欺師)
「本当に純金製の物だったら、鋳つぶしてしまうかな」
行員(盗人)
「いやはや、いい小遣い稼ぎだぜ、貸金庫業務はよ!」
~ 終 ~
シュレディンガーの猫は金庫に眠る 夢神 蒼茫 @neginegigunsou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます