第6話 Chapter6 「鉄騎兵米子 2/2」

サムライチームのミントとパトリック、ニンジャチームの樹里亜と瑠美緯は前進を開始した。 

《こちらビーナス、ニンジャは右からゆっくりマップD(デルタ)5に向かって》

《ジュピター了解、マーキュリーと移動を開始する》

「パトちゃん、私達はマップB(ブラボー)4に移動しよう。狙撃に注意してね、敵は迷彩服だよ」

「おう、B(ブラボー)4から撃ちまくるぜ」

《こちらジュピター、敵を発見。11時の方向と1時の方向。11時はマップC(チャーリー)2に1人、距離300。1時はマップD(デルタ)3に2人、距離250》

《ビーナス了解、11時の敵を『A』、1時の敵を『B』と命名。引き続き前進せよ》

樹里亜が敵を発見した。

「あと3人を早く発見したいね」

ミントが言った。

「11時は1人か。なんか嫌な予感がするぜ。普通なら2×3か3×2で来るはずだぜ」

《こちらビーナス、サムライはB(ブラボー)4に到着。敵Aを確認。距離80。敵Bも確認、距離150。敵Aに掃射を行う》

「パトちゃん、掃射よろしくね」

ミントが双眼鏡を覗きながら言った。

「いくぜ」

『ドドドドドドドドドドド』 『ドドドドドドドドドドド』

パトリックがM240を撃った。敵Aの周りに土煙が上がった。敵Aは伏せて姿を消した。

「くそっ、外したぜ!」

「大丈夫、敵を釘付けにできればいいよ。次は少し遠いけど敵Bに撃って」

《こちらビーナス、敵Bを掃射する。ジュピター、可能なら狙撃お願い》

ミントが双眼鏡を覗きながら言った。

『ドドドドドドドドドドド』

敵Bの周りに着弾する。敵Bの2人が走って窪みに向かう。

《こちらジュピター、敵Bの1人を狙撃、ヒット、戦死判定確認》

《こちらマーキュリー、敵が飛び込んだ窪地に接近します》

《ビーナス了解、ジュピターはその場で待機して》

《ジュピター了解》

ミントが双眼鏡を覗く。瑠美緯が走るのが見える。

《こちらジュピター、2時の方向に土煙!!》

ミントが2時の方向に双眼鏡を向ける。背の高い車両が猛スピード戦闘エリアに入って来た。ランドクルーザーを改良した機動 車だった。車体には装甲板を貼っている。

「車だよ!」

ミントが叫んだ。機動車の屋根から人の上半身が現れ、ミニミM249軽機関銃を撃ちだした。機動車は土煙を上げて走りながら撃ち続ける。瑠美緯が倒れた。

《こちらマーキュリー、被弾、戦死判定。敵の車両にやられました》

瑠美緯が倒された。

「くそっ、やつら汚ないぜ! 車なんてありかよ!」

パトリックが言った。

「きっと2回戦とも負けたんで焦ってるんだよ」

樹里亜が立ち上がって機動車に1発発砲した。ペイント弾がサイドウィンドウに当たってガラスを黄色く染めた。実弾なら左座席の男は戦死だ。機動車は左にカーブして樹里亜のいる方向に向かった。

《こちらジュピター、敵に見つかりました。退避します》

『ダダダダダダダダダダダ』

機動車が樹里亜に向かって銃撃する。樹里亜がボルトを引き、狙いを付けて発砲する。樹里亜の撃ったペイント弾が運転席のフロントガラスに当たって黄色い液体が弾ける。機動車の撃った軽機関銃の弾丸が複数樹里亜に命中する。

「痛い!」

樹里亜が悲鳴を上げる。

《こちらジュピター、被弾、戦死判定です。何発も喰らいました、痛いです!》

機動車が向きを変えてミント達に向かって突進する。

「パトちゃん、撃ちまくって!」

「くそ、ペイント弾じゃ効き目がないぜ!」

ミントがM4A1アサルトライフルを、パトリックがM240汎用機関銃を撃つ。機動車が土煙を上げてグングン迫ってくる。

「パトちゃん、ヤバいよ! 一旦退避だよ!」

ミントが叫んだ。

「俺は撃ちまくる。ミントは退避しろ!」

パトリックが叫ぶ。

『ドドドドドドドドドドド』

パトリックの撃ったペイント弾が機動車に当たり、フロントガラスが黄色に染まる。機動車との距離は60m。


《マーズから各位、これより敵車両を撃破する!!》


インカムから流れた声にミント達は耳を疑った。甲高いエンジン音が聞こえて来た。黒いバイクが走ってくる。操縦しているのは紺色の戦闘服着た人間だ。

米子はハンドルから両手を離して背中に担いだM72LAWロケットランチャーを掴んで肩の上に構えた。ステップを踏んで立ち上がり、しっかりと狙いをつける。

『バシューー』

後方に炎と煙が噴きだす。走行するバイクからロケットランチャーが発射された。

『ボーーーーン』

ロケット弾が機動車の後部当たり、白煙を噴いた。機動車の後方についたパトランプが光って回転する。撃破判定だ。弾頭は演習用で少量の火薬で白い粉を炸裂させるのだ。機動車は停止した。

「米子だよ!!」

ミントが叫んだ。

「わおっ! やっぱり米子はすげえぜ! カッコイイじゃねえか!」

パトリックも声を上げる。戦闘を見ていた樹里亜と瑠美緯も歓声を上げ、右腕を振り上げて飛び跳ねながら喜んだ。

《こちらマーズ、サターンは敵の車両の陰に移動して弾幕を張って。ビーナスは敵Aに接近して仕留めて》

米子は地面に左足を着けてバイクを素早くUターンさせると敵Bに向かって突進した。

上半身を倒し、体をバイクに密着させてバイクを蛇行させた。米子は文字通りバイクと一体になっている。

『ダダダダダダダダダダ』『パパパパパパパパパ』

敵Bの2人が米子のバイクに向かってアサルトライフルとサブマシンガンをフルオートで射撃する。米子は僅かに体を起こすと左手で首から下げたMP7のグリップを掴んで腕を伸ばした。敵との距離は20m。

『パパパパパパパパパパパパパ』『パパパパパパパパパパパパパパ』

  弾がアサルトライフルを撃つ敵に命中する。米子はバイクで一旦敵の横を通り過ぎると右足を地面に着けてUターンした。MP7のグリップから手を離すと再びバイクで突進した。残った敵の1人は窪地に伏せた。距離は15m。バイクは敵に近づく。米子は右手で胸に付けた手榴弾を外し、左手で手榴弾の安全ピンを引き抜くと窪地に向かって手榴弾を投げた。

『ドーーン』

模擬手榴弾が窪地の中で炸裂した。

《こちらビーナス、敵Aを射撃、戦死判定確認》

ミントが敵Aを仕留めた。

《こちらギャラクシー、タイムアップだ、全員ベースに戻れ》


 ベースの前にみんなが集まった。米子はバイクに跨っている。

「みんなよくやった! 3回戦も勝利だ! 奇跡だ!」

木崎が叫んだ。

「米子、ありがとう! 来てくれたんだね。インカムで米子の声を聞いた時には鳥肌が立ったよ! あの場面で敵の車両を撃破したなんて涙ものの感動だったよ!」

ミントが叫ぶように言った。

「遅くなってごめんね。高速が事故で渋滞してたんだよ。ここに着いて準備しながらインカムを聞いてたら、敵チームが車を使ってるみたいだからそのままバイクで参戦したんだよ」

「米子、陸自の偵察レンジャーで訓練したのか?」

「はい。木崎さんに書いてもらった紹介状で訓練に申し込みました」

「米子先輩本当にカッコよかったです、ハリウッド映画みたいでした。感動して涙が出ました。もう米子先輩ラブです!」

瑠美緯が目を輝かせながら言った。

「私も嬉しくて、叫びながら飛び上がっちゃいました! バイクからロケットランチャー撃つなんて、あのシーン滅茶苦茶カッコよかったです!」

樹里亜が言った。

「おまえ達みんな凄かったぞ。双眼鏡とモニターで見てたが戦闘チームに負けてなかったぞ。モニターは録画してあるから事務所でゆっくり見よう」

「でも車を使うなんてルール違反だよ。冗談じゃないよ」

ミントが言った。

「そうです。狙撃でヒットさせても戦死判定になりません。ズルいです」

樹里亜が悔しそうに言った。

「まあ向こうも1回戦と2回戦に負けたから焦ったんだろうな。車を使うのはルール違反ではないが事前に申し入れるのが礼儀だ。ルールの調整も必要だ。礼儀を欠くほど焦ったんだろう。お前達が強い証拠だ。それにロケットランチャーの使用も礼儀として申し入れが必要だからお相子だ」

「ミスター木崎、このチーム最高だぜ! チームごとアメリカに持って帰りたいぜ」

パトリックが興奮しながら言った。

「ああ、そうだな。俺も鼻が高い。今度の本部会議が楽しみだ。普段は俺達暗殺チームを見下している戦闘チームの幹部の顔が見ものだな」

「米子が入ると強さ倍増だね。米子、いつ戻ってくるの?」

ミントが言った。

「まだ決めてないんだよね。それより権藤さんの別荘行こうよ」

「それもいいけど米子に戻ってきて欲しいよ」

「そうだな。米子、考えてくれ」

木崎が言った。

「沢村さん、早く戻って来てください。沢村さんがいると安心して戦えます」

樹里亜が言った。

「米子先輩、バイク戦闘教えて下さい。一緒に戦いたいです。待ちきれないです」

瑠美緯が言った。

「まあ、なんにしても戦闘チームの1軍に勝ったんだ。素直に喜ぼう!」

木崎は終始笑顔だった。

「モニターの録画、早く見たいっす」

瑠美緯が言った。

「木崎さん、賞金とか無いの?」

ミントが木崎に訊いた。

「じつは上層部の連中と金を賭けたんだ。上層部はみんな戦闘チームに賭けたが俺はもちろんこのチームに賭けたよ。お前達のおかげで1人勝ちだな。結構な額だ」

「じゃあそのお金で美味しいもの奢ってよ!」

ミントが言う。

「いいぞ、焼肉がいいか? それとも寿司か?」

「両方だね。だって3勝だよ!」

ミントが大きな声で言った。

「そうですよ! 私なんか敵の車両に撃たれていっぱい被弾しました。痛かったです」

樹里亜が言った。樹里亜の紺色の戦闘服とレーザー受光パットはペイントで真っ黄色だった。顔と髪の毛にも飛び散った黄色の塗料がこびり付いている。

「私も全力で走ってるところを撃たれて転びました。顔を擦りむきました! 痛いです。女の子にとって顔は命です!」

瑠美緯が言った。瑠美緯の顔には大きな擦り傷があった。

「わかったわかった、焼肉と寿司だな!?」

「食べ放題とかじゃイヤだよ。焼肉は青山のあの店だよ。お寿司は探しておくよ」

ミントが抗議するように言う。

「俺も参加させてもらうぜ。俺も気分はJKだ。みんなと一緒に女子高生の制服を着たいぜ」

パトリックが笑顔で言った。

「パトちゃんキモいよ。パトちゃんの体に合う制服なんて無いよ」

ミントが言った。

「あーあ、やっぱ仲間っていいなあ。戻りたくなってきたよ」

米子が言った。

「米子、やっぱ変わったね」

ミントが笑顔で言った。

「うん、そうかもしれない。1人だと見える景色が狭くて、風も冷たいけど、仲間が

いると景色が広がる感じがするんだよね。吹く風まで暖かい感じだよ」

米子も笑顔で言った。その笑顔はいつになく明るく穏やかで、爽やかだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

JKアサシン米子 第3部 南田 惟(なんだ これ) @nannan777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画