初恋はなんとやら

@josefyinu

第1話

無為に流れてしまった時の中で君に一度でも好きだといえていたらこの後悔は、この虚しさは、消えていたのだろうか。




友達と東京に遊びに行った僕はそこで恋人を連れた彼女に出会った、茶髪というには少し明るい髪と上手くなった化粧で、昔よりも綺麗になった君は


「久しぶりだね」


っとそう言って笑っていた。


そんな君に僕はよくわからないまま返事をして、そしてそのまま別れてしまった。


ありきたりな話だけれど僕と彼女は幼馴染で、昔はよく2人で遊んでいた。


そしてまた、これもよくあることだけれど、思春期が近づいてくるにつれて相手のことを妙に意識してしまう気恥ずかしさから少しずつ2人の距離は広がっていってしまった。


はっきりした時期は曖昧だけど、多分この頃からだろう僕が彼女のことを好きになっていたのは。


学力は同程度だったから、同じ高校に進学した、僕は小学校の頃から続けていた野球部に入って、彼女は、バドミントンを始めた。


彼女とはこのまま離れていってしまうのかな、なんて思いはじめたころ、下校途中に彼女と会って。


「こうやって話すの、なんか久しぶりだね」


本当に久しぶりに彼女と話して昔みたいに2人で笑った。


話の流れで部活の終了時間が同じだってわかった僕は少しだけ勇気を出して


「よ、良かったら明日からも一緒に帰らない?」


なんて言ってみたんだ、そんな僕のたどたどしい問いかけに彼女は


「いいよ」


そう言って笑ってくれた。


それから毎日、彼女と話して笑って、まるで昔に戻ったみたいだった。


けれど僕の勇気はあの日枯れ果ててしまったみたいに好きだってことだけは彼女に伝えられなかった。


そんな日々が続いて、卒業の日が来ても、僕は彼女に告白できなくって、帰り道のいつもの分かれ道で


「じゃあね」


そう言って笑う彼女の黒髪が風になびいてとても綺麗だったのを覚えている。


それが彼女が東京に引っ越す前に会った最後だった。

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