私の今年の漢字2024
滝口アルファ
私の今年の漢字2024
恒例の今年の漢字が発表された。
2024年は「金(きん、かね)」。
なんか、
身も蓋もない漢字だが、
今年は、
パリオリンピック・パラリンピック、
さらに、
某政党の裏金問題、
極め付けに、
新紙幣の発行。
これだけ、
「金」にまつわる
社会的な出来事があったら、
文句なしって感じだ。
また、
元日の能登半島地震などの
自然災害に関連した、
「災」や「震」なども上位になっていた。
これも納得である。
一方、
私の今年の漢字を考えると、
「喪(も、そう)」が最も
なかんずく7月。
不幸が鳩のように集まってきた7月。
私がいつか死ぬときの走馬燈に
鮮やかに浮かび上がるだろう7月。
何が起きたかと言うと、
家族全員が新型コロナウイルスに感染したのだ。
コロナに対する意識が、
社会的にも私たち家族の間でも、
かなり希薄になっていた。
その油断の細い足を掬われた。
私は、過去最悪の40度の高熱に苦しんだが、
一番の被害者は、
コロナから肺炎を発症して、
入院から1週間ほどで亡くなった父だろう。
今でも、
父の無念を思うと、
胸が締め付けられる。
それにしても、
唯一ワクチンを2回接種していた、
父だけが命を奪われることになるとは、
名状しがたい運命の
そして、
通夜、葬儀、火葬。
悪夢のジェットコースターに
乗っているみたいだった。
こうして、
私は、いや家族は、
父という存在を永遠に
もっと個人的なことで言えば、
8月になって、
食事をしていたら、
いきなり奥歯が欠けて、
一瞬コロナの後遺症かと思ったが、
慌てて歯医者に行ったら、
原因は虫歯だった。
さらに驚いたことに、
その奥歯の虫歯によって、
歯の神経が3本死んでいたのである。
治療の過程で、
その3本の歯の神経の
処分された。
いつから死んでいたのか分からないが、
あの歯の神経の屍たちには、
申し訳ない思いでいっぱいである。
こうして、
私は私の歯の神経3本という
微少だが大事な部位を、
自分の歯医者嫌いという我がままのせいで、
永遠に喪ったのである。
今年の新語・流行語大賞は、「ふてほど」。
初耳の言葉。
若者言葉か何かと思っていたら、
「不適切にもほどがある」という
ドラマの略称だった。
だけど、あのドラマ、
ヒットしていったっけ?と、
今年も12月に辿り着いて、
このまま平穏に新年を迎えたいなあと、
思っていた矢先のことだった。
我が家の愛犬のポメラニアンが、
心不全、肺水腫で、
動物病院に入院することになった。
さいわい、
2日後には退院できて、
我が家に戻ってきてくれたのだが、
かなり痩せこけてしまっていて、
毎日心臓の薬を飲ませている状態だ。
ああ神様。
これ以上、
私から、私たち家族から、
命を奪わないで下さい。
そう祈らずにはいられない。
最近は少しだけ持ち直して、
パソコンにこの文章を打ち込んでいる、
私の横で、
ポメラニアンは身をかがめながら、
昼寝している。
ほっ。
もちろん、
得たぶんだけ喪ったり、
喪ったぶんだけ得たりするのが、
この世のほろ苦い法則なのだろう。
しかし、
今の感じだと、
ポメラニアンの命は、
例年よりも寒いと言われているこの冬を、
果たして乗り越えられるのだろうか。
死神はもう、
弱ったポメラニアンに、
付きまとい続けているのかもしれない。
そんな新たな喪失の予感に怯える、
2024年の歳晩の私なのだった。
追記。
本作を書き上げて、
さあ推敲に励もうと思っていたところ、
ポメラニアンは心不全で急逝した。
12年と11か月の命だった。
毎朝、
ポメラニアンは父と散歩に行っていたので、
天国へ先に行った父を、
追いかけていってしまったのだろうか。
ポメラニアンは、
翌日、火葬。
今はただ喪に服すばかりである。
本作を父へ、
そしてポメラニアンへ、
ささやかな
私の今年の漢字2024 滝口アルファ @971475
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