すっかり疎遠になっていた大学時代の創作仲間の同窓会。
まだ書いていて、書くことを仕事のひとつにしている主人公は、書くためのサークルのなかでただひとり読み専だった同窓生を思い出す。
彼女はいつも、説得力のある言葉で自分の作品を酷評していた。
同窓会の場で伝えられた事実。なぜそうなったのかはわからない。
読み専だった彼女がただひとつ書いた作品は、主人公以外に読まれることもない。
いろいろなものが未消化なままで、でもそういう「すっきりと終わらないこと」こそが人生で、すっきりとした答えの枠に嵌め込むことだけが創作じゃない。
そう言われた気がしました。
主人公はきっと、心に刺さった棘を抱えて生きていくのでしょう。
刺さった棘の痛みを時折思い出しながら、たぶんそれでも彼なりに前向きに。
読んだ僕らはどうでしょうか。
僕にとっては、これこそがひとつの棘になりそうな良作でした。