第9話 新たなる挑戦
キャンパスでの対話
翌日の大学キャンパス。蒼井ヒロキと西野アレトは、昨日の首都高での白石コウスケとのバトルについて話していた。
「白石さん、あのテクニック...正直、敵わないって思ったよ。」
西野は苦い顔で呟いた。その声には悔しさとともに、自分の力量不足への苛立ちが込められていた。
「俺も同じだ。でも、あの走りから学べることは多かったと思う。」
蒼井は西野を励ましつつ、自分自身の未熟さを再認識していた。
「もう少し冷静に走れるようにならないとダメだな。」
西野が苦笑しながらそう言うと、蒼井は静かに頷いた。
ファミレスでの再会
大学の授業が終わると、蒼井はいつものファミレスのバイトに向かった。厨房で皿を片付けていると、店の入口に寺田リョウ、白石コウスケ、牧野カレンの三人が現れた。
「いらっしゃいませ!」
蒼井が慌てて声をかけると、三人は軽く挨拶し、席に着いた。蒼井が注文を取りに行くと、寺田が笑顔で話しかけてきた。
「昨日は白石が悪いことをしたみたいだな。」
蒼井は少し驚きながらも、すぐに返した。
「いえ、とても勉強になりました。ありがとうございました。」
寺田が満足げに頷く横で、牧野はパフェのメニューを指差して注文し、白石はシチュー、寺田はナポリタンを頼んだ。
食事を待つ間、三人の雑談が始まった。
「最近、蒼井も西野も首都高で頑張ってるみたいだな。」
寺田が軽い口調で話しかけると、白石が笑顔で答えた。
「西野はともかく、蒼井の成長には驚かされるよ。昨日の走りだって、まだ無意識なんだろうが俺のペースに合わせてきていた。もうあと少しで俺に追いつきそうだった。」
「うそばっかり。あの差は簡単に埋まらないわよ。」
牧野がシニカルに笑うと、白石は肩をすくめた。
「まあ、そうかもしれない。でも、潜在能力は高い。これからが楽しみだな。」
「私だって教えた甲斐があるってもんよ。」
牧野が誇らしげに胸を張ると、寺田がからかうように言った。
「その分、自分の走りが雑になってきてないか?」
「なってないわよ!今日これから勝負する?」
牧野の剣幕に寺田が笑い出し、テーブルは和やかな空気に包まれた。
注文が運ばれてきた後、牧野が寺田に何か耳打ちし、それを聞いた寺田が思い出したように蒼井に声をかけた。
「バイトが終わったら芝浦に来い。」
蒼井は頷き、三人が食事を終えて店を後にするのを見送った。白石が優しく微笑みながら「待ってるよ」と声をかけてくれたのが、妙に印象に残った。
芝浦PAでの決意
バイトを終えた蒼井は、自分のFDに乗り込み首都高へ向かった。芝浦PAに到着すると、「プロジェクトα」のメンバーが全員集まっていた。
寺田が皆を見渡し、口を開いた。
「全員揃ったな。話がある。」
一同の視線が寺田に集まる。
「最近、チームらしい活動も少ないだろう。だから、他所のチームと交流会をやろうと思う。」
寺田の言葉にメンバーがざわつく。
「千葉県を拠点にC1内回りをメインに走るチームと交流があるんだ。奴らもかなり速い。獅童や阪巻とやり合うには、他所でも通用する実力が必要だ。」
そう言いながら、寺田は蒼井と西野に視線を向けた。
「お前らも、そろそろ試される時が来たな。」
そのプレッシャーに西野が思わず声を上げた。
「やりましょう!」
寺田は他のメンバーにも確認を取り、全員一致で交流会の開催が決まった。
「日程は追って連絡する。それまで練習に励め。」
そう言い残し、寺田は86に乗り込み、牧野とともに夜の首都高へと消えていった。
西野が牧野を見送りながら呟いた。
「これ、本気で準備しないとヤバいな。」
蒼井も真剣な表情で頷き、その決意を新たにした。
軽く流すC1内回り
寺田と牧野を見送った後、白石が蒼井と西野に向かって声をかけた。
「それじゃあ、C1内回りを軽く内見してみようか。」
「流すだけ、ですよね?」
西野が少し疑いながら聞くと、白石が笑いながら答えた。
「今日は軽く、だって言ったろう?練習は追い込みすぎないのも大事だよ。」
蒼井と西野は少し緊張しながらも、白石のリラックスした雰囲気に安心感を覚えた。三人はエンジンを始動させ、芝浦PAを出発した。
通常なら浜崎橋JCTを左折して外回りに入るところを、今回は直進してC1内回りに入った。白石が先頭に立ち、蒼井と西野がその後を追う。
「今日は軽く流すだけだ。」
白石の声が無線から響く。蒼井はその言葉を受け入れ、冷静にラインを読みながら走行を始めた。
ネオンに彩られたC1内回りの道路は、いつもと違う景色を見せていた。新たな挑戦の予感に胸を高鳴らせながら、蒼井はアクセルを踏み込んだ。
Midnight EX 冴えない走り屋 @furutaka_san
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