手段を目的だと思い込んでしまうとマズイかもしれないという話
たま、
希望〜妥協〜断崖絶壁〜気付き
私は子供の頃から、毎日絵を描いて暮らせたら良いなと思っていた。
出来れば動物の絵を描きたい。図鑑の図解や小説の挿絵などを。
でも当時は絵の仕事に就いて食べていくための情報などは乏しい時代で、自分としても絵一本で食える画力には程遠いと思っていた。
漫画は志望者は多くても大概は一作も仕上げられない。
描き上げればそれだけで競争の優位に立てる。
一枚絵の絵描きの道よりは現実的かと判断。
自分に厳しく根性で描き上げよう...
まずは弱点克服の自主練。
中1から高校を出るまで睡眠時間を3時間くらいにまで削ってひたすら研究と修行。
学生時代は漫画のアシスタントを幾つもやって、ハードな所では毎日20時間労働。
そして漫画家になったけれど、漫画を創り上げるのって、一枚絵を納得いくまで描きたい自分にとってはやりたくない要素が一杯。
そして編集者さん達は、せっかく描けるんだからこういうのを描けと、北斗の拳のパクリやエロやラブコメなど自分には興味の無い物ばかりを要求。
それでも律儀に頑張っていたある日...
「今は若さで頑張っているけど10年後は力尽きて終わるだろうな」
そう思った途端に強烈なうつが降って来た。
今までの人生全て無駄、終わり、死ぬしかない…
心が別人のように冷え切って、身体が勝手に動こうとする。
高い所から飛び降りようとした。
死神に魅入られるというやつだろう。
ああ、これは危ない!と、わずかに残っていた理性で布団に潜り込んで寝た。
そして気がついた。
何でこんなに漫画をやっていくことに執着していたのだろう。
漫画というのは、子供の頃に絵で食べていきたいと願って、取り敢えず選んだ手段に過ぎなかったじゃないか…
それなのに、手段に精を出しているうちに、それを目的と思い込んでしまっていた!
振り返ってみれば、それまでの修行や仕事で腕もついている。
漫画以外の絵仕事の存在も見えてきていた。
そして直ぐに絵一本の道を見つけて幸せになった。
気付かなかったら危なかった。
何が望みだったのか?
無理して頑張っているのはそれなのか?
単なる手段なのか?
・・・手段を目的だと思い込んでしまう・・・
これは往々にしてある事らしい。
人間は案外愚かだ。
自分自身の事は見ているようで見えていない。
自分がやっている事を時々は振り返ってみるのも大事だろう。
(了)
手段を目的だと思い込んでしまうとマズイかもしれないという話 たま、 @hantutama
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