財閥令嬢専属執事〜荒川 刃執(バトラ)〜の1日

呉根 詩門

財閥令嬢のとある執事の1日

 

 今ここに記すのは、日本の何処かにある、とある執事の話である……


 荒川刄執(アラカワ バトラ)は、本当のプロフェッショナルだ。

 久菱財閥ご令嬢「久菱更紗」のお世話を始めて17年……刄執は、生まれたての赤ん坊の頃から西園寺女子高等学校2年生の今に至るまで24時間休みなくお世話をしている……


 そんな、彼の1日の一部を紹介しよう……


 刄執の1日は、早い。


 まず、刄執はお嬢様が起きる2時間前、午前5時に起床する。


 そんなに早く起きて何をするのかと言えば……


 刄執は、3分で身支度を済ませるとソッコーお嬢様の部屋に行く!


 そこで彼がする事は何か?


 みんなも疑問に思うことだろう……そんな彼がする事は……!


 お嬢様の寝顔をスマホで撮影する!


 彼曰く


「お嬢様の健康管理と成長記録!」


 いや、これを語っている僕も朝っぱらからどうかと思うが……刄執は、プロフェッショナルだ!

 間違いない!



 多分……


「はあ……はあ……お嬢様は、今日も……いや……更にお美しい……」


 何かこの執事……よだれを垂らして興奮しながら、写真撮りまくっているが……これもきっとプロフェッショナルの流儀なのだろう……


 多分……


 そして、刄執は心ゆくまで撮影を終えると、急に真剣な顔つきでクローゼットへと向かった!


 おお!

 お嬢様の着替えをご用意するのか……!


 ……ん?


 刄執は、お嬢様の制服を手に取ると、クンカクンカと匂いを嗅ぎ


「はあ……お嬢様の匂い……刄執は幸せでございます……」


 と、刄執は思う存分、匂いを堪能した……


 ここで、読書のみんなは、刄執を変態と思うのかもしれない……


 しかし、違うのだ!


 彼は、プロフェッショナルだ!


 彼の働く原動力は、お嬢様!


 プロの執事とはかくあるべきなのだ!


 と……言った僕も本音はこいつイッテルと思うのは……僕がプロフェッショナルじゃないからかもしれない……


 そんなこんなで、刄執は1時間はゆうに超えてお嬢様の部屋に滞在すると、部屋を出た!


 そして、キッチンへ行くと、コーヒーをハンドトリップで淹れた!


 おお!


 こいつ、やっとかまともに働き出した……


 ごめん、本音が出ちまった……聞かなかったことにしてくれ……プロフェッショナルに失礼……


 げげ!


 こいつ、お嬢様に飲ませるはずのコーヒー口にしやがった、


「これで……今朝もお嬢様とモーニング間接キス……」


 と、刄執はニヤリと笑った……!


 しかし! 彼はプロフェッショナル!


 そんな目で見ないでくれ……僕もどうかと思うよ……でも……それがプロフェッショナル!


 そして、刄執は何食わぬ顔でモーニングコーヒーを持ってお嬢様の部屋へと向かった。


 コンコン……


「刄執でございます……お嬢様、朝でございます。モーニングコーヒーをお持ちしました」


「入って……」


 と、蚊が鳴くような声で、色白で感情が読めない……能面の様な無表情の美少女が言った!


 そう「久菱更紗」が起きたのだ!


「本日のモーニングコーヒーは、モカでございます。今日の様な爽やかな朝にはよろしいかと……」


「ありがとう……」


 そして、刄執はさっきまで思いっきり、クンカクンカしていた制服を手に取ると


「お嬢様……飲み終わりましたら、お着替えを……」


 と、刄執は制服を畳んでテーブルに置いた。そして、いかにも執事らしく一礼した後部屋を出た!


 ごめん……らしくじゃなくて、プロフェッショナルでした……


 その後、刄執はテキパキと朝食の用意をして……毒味と言いつつ、もちろん全ての食べ物に口をつけたのは、言うまでもない……


 そして、刄執はお嬢様の登校の用意が完了すると、屋敷の前にリムジンを止めて


「お嬢様……それでは学校へ……」


 と、うやうやしく頭を下げた後ドアを開けてお嬢様をエスコートした。


 その間、更紗は軽く頭を下げた後、何も言わなかった。


「お嬢様……それでは、行きましょう」


 刄執は、運転しながらしょっちゅうバックミラーでお嬢様を見ると言う前方不注意を繰り返した。


 ここで、事故らないのことこそ……


 プロフェッショナル!


 そして、学校へお嬢様を送った後、普通の執事は屋敷へ帰る……


 しかし、刄執は、プロフェッショナル!


 刄執は制服に仕込んだ盗聴器を使ってお嬢様の様子を聞きながら、遠方から望遠鏡で警護と言う……ストーキング……げふん、げふん……と言う仕事もあるのだ!


 流石、プロフェッショナル!


 警護の最中も、刄執はお嬢様の友人、教師などがお嬢様に失礼な事をした奴の死刑リストを作るのも仕事なのだ!


 そして、学校が終わると刄執は今来ましたと言う顔でリムジンを学校前に止めると


「お嬢様、お迎えに上がりました……」


「ありがとう……」


 と、これから夕飯まで朝の繰り返しだが、最後に刄執1番のお楽しみがある……


 それは……お嬢様の入浴盗撮……もとい警護なのだ!


 プロフェッショナルは、もしかするとお嬢様の入浴中に覗きに来る破廉恥な輩がいるかもしれない……その対策なのだ!


 ……?な気がするけど、プロフェッショナルだから間違いない……はず!


「はあ……はあ……お嬢様……更に魅惑的な体に……」


 みんな、これは聞かなかったことにしてくれ……


 そして、お嬢様は就寝するのだが、刃執は1日最後の仕事がある……


 そう……


 日中、お嬢様に無礼を働いた輩を始末しに行くのだ……!


 あらゆる情報は久菱財閥の力で全て刄執の手中にある……後は、寝ている馬鹿どもにスナイパーライフルを使って消す……


 これを終えることで刄執の1日が終わる……


 これでプロフェッショナルとは、何か?


 みなさん、お分かり頂けただろうか?


 僕は、これを記すことで更にプロフェッショナルとは……

 

 イカれているのがわかった……


 刄執と言う執事が例外だと願いたいと、最後に僕はここに記す……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

財閥令嬢専属執事〜荒川 刃執(バトラ)〜の1日 呉根 詩門 @emile_dead

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画