第4話 僕と俺


「うぐっ……ハァッ……うっ……!」


呼吸も絶え絶え、意識も朦朧としてくる


霞む視界、だがそこに誰かが来た。何か叫んでいるが、頭の痛みでよく聞こえない。


だがそんな状態でも、それがレイフィアだと気づくのに1秒もかからなかった。


レイフィアは焦った表情で手の少し前に魔法陣を出現させた。これは上位魔法のサインだ


パアアッ、と


僕の体が光る。頭の痛みがだんだんと、少しずつ良くなってくるのを感じる。すると、安堵からか、それとも今が夜中からなのか、まぶたがだんだん重くなって……………



【断章】―――――――――――


それはいつかの真夜中のことだった


頭を強くコンクリートに打ち付けた

もちろん、自分からではない。痛みに耐えられず、立っていることさえ厳しくなった結果である。


目線を下へ向ける


腹の傷口からから、ドロドロとしたどす黒い色をした血液がまるで滝のように流れてくる。

血ってこんなに流れるものなんだと、朧げに思う。


俺、もう死ぬのかな


そう思うと、目から涙が零れ落ちる。24歳にもなって情けない。だが、頬を滑り落ちる悲しみとは裏腹に俺の口には笑みが浮かんでいた。


この人生、裏切られたり家族は事故で死んだりで、もう最悪な人生だったし、やっと解放されて、嫌な気分じゃないのかな。


「あぁ……最悪な人生だったなぁ………」


ある男の最期だった



――――――――――――――



「…………ぁぁ」


暗闇が広がっていったはずの視界に、なぜか光が差し込む。まだぼやけていて、絵の具を水でとかして広げたような色しか見えない。


(もしかして、まだ生きていたのか?)


寝起きのように口は上手く動かず、しかし思考は加速する。


(あれ、刺されてそのまま死んだはずじゃないのか………?)


ぼやけた視界がだんだんと、輪郭を現していき、今まで聞こえていなかった音も聞こえてきた。


(ん?目の前に誰かいるぞ………もしかして救急隊員とかか?)


「――――ぶ!?」


「…………うぇ?」


まだ口が上手く動かせない、まずは状況説明をしなくては。たしか黒いフードの男が突然襲いかかってきて……


「だい―――ぶっ!?」


(……ああ、大丈夫か聞いているのか。耳がよく聞こえなくて気づかなかった)


「……だいっ……ぶ……」


(舌が回らない……うまく言葉を話せない………俺、今どんな顔してんだろう。きっとひどい顔だろうな)


しばらくして、感覚が戻ってきた。視界もスッキリと、耳もバッチリ聞こえる。体の感覚もある………が


「いや、誰だこの顔面偏差値エグい美少女は…………?」


そう、目の前にエグい程可愛い白髪の女の子が心配そうな眼でこちらを見てくるのだ。おそらく中学1年生か2年生くらいの


「えっ、ガンメンヘンサ………?何言ってるのロスタ?」


(ロスタ?あ、もしかして外国の方かな。ロスタって人と間違えられてるのか………?)


気恥ずかしくなり、彼女の顔から目を逸らすと、周りに広がっていたのはまるで………


(いや、どこだよこの異世界みたいな木々に、また異世界みたいなこの建物はーッ!)


俺は言葉を失う。まさか世界にはここまで異世界に似ている場所があるなんて、そしてここまで顔の整った美少女がいることにも。


「本当に……だ」

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俺のスキルのチートさを異世界人はまだ知らない。 ぽていと。 @never_Even

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