第2話
俺は動く気が全くなかった。毎日、同じところで寝て魚を釣って、野草を食べて寝る。その繰り返しだ。正直勇者なんてなる気が全く無いし、なれる気もしない。
『お前外でもほぼニートじゃねぇか。何か冒険でもしてみろよ(笑)』
草生やされるよりも(笑)て言われる方がムカつくよな。あれ、俺だけ?それに”冒険してみろよ(笑)”じゃねーんだよ。したくねーからこうしてこの森に居座ってんだろ。そもそも勇者になった原因のコイツに言われたく無い。
『あれ?もしかして褒めてる?ねぇねぇねぇねぇどうなの?』
「ウッッッッッゼ。褒めてねーよ」
マジで褒めてない。むしろキレてる。誰かこのふきだしを消せる魔法を教えて欲しい。それだったらマジで俺習得する。けど、勇者としてほっぽり出された以上俺は何かしらの成果をあげないと家に帰れないということになってしまった。母親も父親も泣きながら俺の出発を見送っていた。自分の息子のこと信じろよ、すぐ死ぬわけじゃねーんだし。
『そんな思考だからすぐ死にそうって思われるんだろ(笑)』
「いや、俺死にたく無いから!!絶対生き延びてやるから。そしてお前を見返す」
「見返すって…そんなお前に期待してないから頑張らなくていいよ(笑)」
頑張りたく無いが、こう言われると猛烈に頑張りたくなってしまう。そして怒涛の(笑)が猛烈に腹立つ。俺がムカつくとかいったからあえて使ってるんだろう。
(相っ変わらずムカつく…ちくちょう。なんで俺だけ苦しまなきゃいけないんだ)
『知りまっせーん。( ᐛ👐 )パァ』
「パァじゃねんだよくそが」
こうしてむかついているが、きっと本当に1人だったら俺の心は持たなかっただろうと確信している。だからこそ、コイツの存在があることによって心の平穏と身の安全が保たれていると思うからこそよりムカつくのだ。俺の邪魔というかウザいことしか言ってこないくせに俺を助けているという事実に。
「ちくしょう…俺だって、俺だってやればできるんだ!冒険してやるよ!この世界の魔王を駆逐してやる!長々と生き延びてやる!」
『どうせ口先だけで、やんねーんだろ。知ってるって』
「いや。俺はもともと家にいるのが好きなわけでもないし、長々とこのモンスターが蔓延るこの世界で生き延びてやるんだ…!」
そうだ。コイツのおかげで生きる気力がみなぎってきた。悔しい限りだ。だがしかしやる気は十分である。俺はこの世界で生き延びる、そう新たな目標を上げてこれからの生活を思うのだった。
俺の言葉にいちいち反応するふきだしが俺のダンジョン生活を邪魔してくる 蜜りんご @persica220
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