俺にいちいち反応するふきだしが俺のダンジョン生活を邪魔してくる
蜜りんご
第1話
俺はこの過疎りに過疎った50人程の人口の村から、魔王を倒すべく送り出された勇者だ。
「どうして…どうして、俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだ…!!!」
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時は遡り1ヶ月前。俺はあるものが見え始めた。幽霊とかその類ではなく、ふきだしのようなものだ。これが視界を邪魔している。しかも俺の発言に対して、ウザく挑発してくるような発言しかしてこない。しかも心の中まで読み取って発言してくる。正直言って害悪でしかない。俺が母親に飯まだーなんて言おうものなら『飯まだーじゃねぇよ、自分で作れ』だとか、村一番の美人に話しかけようものなら『よくその顔面で話せる立場だと思ったな』とか言ってくる。
これがきっかけで、俺は1ヶ月むしゃくしゃしていた。そんな最中村をモンスターが襲ったのだ。俺はむしゃくしゃしていた鬱憤を晴らすべく、モンスターへと立ち向かい棍棒を叩きつけまくっていたらモンスターは死んでいた。このことに感謝し、俺に過度な期待を寄せた村人達は俺が勇者であると崇め始めてしまった。そして村長から勇者として送り出されたのが今さっきのことだ。
「どうして俺なんかが!元はと言えばお前のせいだぞ!ふきだしめ!!」
『ははーん、さては俺のせいで村人からモッテモテになっちゃったことに怒ってるな?』
「ちげーわ、クソが!」
吹き出しはどうも俺しか見えないため、誰もいない今みたいな環境でしか吹き出しに対して文句が言えない。
『こんな羨望の眼差しなんてそうそう受けられないんだから感受しとけって、フツメンくん』
うっせーわ。好きでフツメンやってんじゃねーんだわ。理想は女の子からモテまくってるイケメンだったのに。
「うるせーよ!お前こそ俺のことどうとか言ってくるけど、お前も人のことどうとか言えないかんな?」
『はぁ?言えますぅ。それに誰がそんなこと言ったんですかぁ?地球が何回回って何時何分何秒のときですかぁ?』
「くっそ腹立つな、コイツ」
苛立ちを抑えつつも、一応授けられた刀片手に荒野を進んでいく。幸いにしてモンスターもいない状態であり、火もつけられそうな薪のある森に到達した。今はもう日が傾きかけてきているので、ここで夜を明かすかと思い薪を集める。火打ち石は預かったから、火をつけることに関しては心配なしだ。今は春だから昼はあったかいが、夜は寒い。凍え死にたくはないので、焚き火をつける。
「はぁ…あったけぇ」
『そんなもんいらないワイは勝ち組やな。何もなくとも夜は明かせるし、襲い来るモンスターに怯えながら寝る必要もねーしな』
たしかに。夜に襲われたらひとたまりもないな。襲われるだけ襲われて瀕死の状態で、ただ死を待つだけの状態になるだろう。
(ふきだしも偶には役に立つかもしれない…?)
『うわやっべ。いらんこと言った』
かくして俺の勇者としての人生はこの苛立つふきだしと共にはじまったのだった。
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