第2話 調査
1期生
最初の年に製造された新人類。
本来ならば雌雄合わせて100体が想定されていた。
だが、雄50体は失敗。雌50体中、3体が不良で途中廃棄。5体が生育不良で廃棄となった。残ったのは42体。
施設維持のための人員を10体確保。
残りの32体を計画実行の為の人員とする。
オモイカネは着々と計画を進める。
32人の新人類は三つの部隊に分けられた。
第1部隊11人
彼女達は首都へと向かい、再興計画中枢の情報取得を目指す。
第2部隊11人
朝霞市の調査と開拓。
第3部隊10人
第1、第2部隊の支援。または朝霞市開拓。
今後は2期生、3期生が15歳に達したと同時に作戦に投じられる。
1期生第1部隊所属。
芹澤 桃花
黒毛のセミロングの頭に猫耳を立てている。尻尾も同じく黒だが、先が白い。
小柄な体躯の彼女だが、運動神経に優れる。これは元になった遺伝子が体操選手で有名な者だったからだろう。
その柔らかな肢体を存分に発揮する為、武器は9ミリ機関拳銃が渡されている。
小型な短機関銃だが、開発された当時でも諸外国で用いられる短機関銃より重いとか発射速度が速過ぎるとか不満は多かった。ライトなどがそのまま装着が出来ないので、ガムテープでグルグル巻きにして、ライトを固定している。
「桃花の銃だけ不細工なのは嫌にゃ」
本人もこの銃は嫌っていた。
「黙れ。基本的に閉所での作業になる。ましてや情報源となるコンピュータなどを破壊してはダメだからな。なるべく過剰な火力での戦闘は避けたい」
隊長の石嶺 優は厳しい表情で桃花に怒鳴る。
眼鏡を掛けて、いかにも真面目そうな彼女がこの隊を指揮する。
副官には白毛のロングヘアーの真壁 康子。
彼女達は42人の中でも運動神経、頭脳等が優秀だった者達。
簡単に言えば、成績順で部隊が決まっている。
決行日
朝8時にハンガーに集合が掛けられる。
朝食を終えた者達が完全武装にて、ハンガーに集まる。
桃花もそこに居た。
「第1部隊諸君。今日は初めての調査だ。我々は初めての外を経験する」
隊長がそう告げた。誰もが緊張した面持ちで聞いている。
「作戦は昨日のブリーフィング通り。今日はまだ、外を経験する程度である。無理は決してするな」
話は終わり、用意された車へと乗り込む。
この計画の為に用意されたのは元々ある自衛隊車両では無い。
かつての自衛隊車両はガソリンや軽油を使用するレシプロエンジンである。だが、15年の年月を経た場合、大抵の燃料は劣化して、使い物にならなくなると想定された。そこでここで使う車両は全て電気自動車が用いられる事になった。
固体バッテリーと燃料電池が用意され、これらは必要に応じて、簡単に取り換えられるシステムになっている。
装甲が全面に施された4輪トラックには運転手を含めて7人が搭乗が出来る。
1部隊、3台が割り当てられ、物資輸送にも用いられる。
車体上面には軽機関銃などが搭載可能な砲塔が設置され、荷台の各所にガンポートが設置されている。
運転手はシステムを起動させる。液晶メーターが輝き出す。
助手席に座る班長は通信機やナビなどのチェックを行う。
後部座席の一人は砲手として、踏み台を使って、砲台に上半身を晒す。
砲塔は手動でクルクルと左右に回る方式である。装着されているのはミニミ軽機関銃。
「砲手は全周囲を警戒しろ。どこから感染者が襲撃をしてくるか不明だ」
感染者
それはかつて人間だった者達の事。
その多くは生存しているだろうが、すでに人では無くなっている。
感染者は人とは違う生物へと変化を果たすが、必ずしも同じ生物に変化するわけじゃなかった。
オモイカネは15年間、ドローンなどを飛ばし、朝霞市周辺の情報を取得し、調査を続けていた。
感染者はかなり多岐に渡る変化を行った。
生物として別となると互いに人間としての認識は失われ、生存の為に捕食をするようになる。そして、すでに感染者同士の自然交配も確認されており、生まれて来た子どもも同様の生物であると判断されている。
感染者が変化した生物に対して、種族名が割り振られる。
その多くは見た目からファンタジー世界の名称が用いられている。
そして、オモイカネはそれらの種族から人間と同等の高い知能を有した種族の発見も期待している。
失われた世界の再興 三八式物書機 @Mpochi
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