まほろば

与太売人

まほろば

 2124年、人類は回復不可能なほどに環境が破壊された地球を捨てて別の惑星に移住する計画を進めていた。とてつもなく高倍率な天体望遠鏡で移住先の候補となる惑星を探していた天文学者たちは、100光年の彼方にとある惑星を発見した。惑星の公転の中心となっている恒星の規模や惑星と恒星との位置関係から、惑星は人類をはじめとした地球生物の生存に最適な温度帯に存在すると考えられ、スペクトルデータから生物の生存に必要な物質が揃っていることも予測された。発見された惑星はあらゆる面で理想的な環境であり、人類にとってのまほろばであることを疑うものはいなかった。しかし、その惑星への移住は不可能だとすぐに判明した。惑星の周囲に見える星々は空のちょうど反対側に見える星々と同じもので、その姿は小さく、惑星から離れるほど歪な形をしていた。望遠鏡が捉えたのは50光年先に浮かぶ巨大な球形の鏡と、それに映る100年前の地球の姿だった。

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