第2話 狼人間




 警察署内にて。

 何かと忙しい師走を乗り切るために欠かせない栄養ドリンクを飲んだ時だった。

 直接脳を鷲掴みされたかと思えば、思いっきり振り回されているような衝撃が襲いかかった上に、動きが激しくも熱くなる心臓と連動するように、ぐつぐつと煮え滾るお湯に浸されたが如く、全身が熱くて熱くて仕方なかった。

 思わず身体を屈めたが、実際にどのような体勢を取っているのかはわからなかった。

 もしかしたら苦しさと痛みのあまり、人化を解いては、床に倒れ込んでいるのかもしれないし、駆け回っているのかもしれない。


(なんだってんだ?)


 近くで打合せしていたはずの、自分と同じ狼人間であり同僚であり相棒の、銀牙ぎんがの声がどこか遠方からおぼろげに聞こえてくる。


(なんだ。なにをいっている?)


 わからない、わからない、銀牙が何を言っているのかも、自分の身に何が起こっているのかも、何もかも。


(………いや。そう言えば。押収物に、分析結果を待っている最中の。私が飲んでいる栄養ドリンクに外見がそっくりの物が。あった。ような、)


 目をかっぴらいた冬和とわはしかし次には、意識を手放してしまったのであった。




 最後に目にしたのは、赤い花びら雪だった。




(このにおいは、ばら………と、くっきーの、)




 最後に脳裏を掠めたのは、三日前に出会ったサンタクロース、露衣ろいだった。











(2024.12.12)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ちいさくなっちゃった君へ ~ ダズンローズデイ 藤泉都理 @fujitori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画