ちいさくなっちゃった君へ ~ ダズンローズデイ

藤泉都理

第1話 サンタクロース






 感謝。

 希望。

 尊敬。

 誠実。

 愛情。

 栄光。

 幸福。

 情熱。

 努力。

 信頼。

 真実。

 永遠。


 これら十二の意味が籠められている十二本の薔薇を恋人や伴侶に贈る日を、ダズンローズデイと言う。






(伴侶どころか恋人ですらないけれどっ)


 サンタクロースの露衣ろいは忙しい仕事の合間を縫っては、十二本の赤色の薔薇の花束を用意して、意中の狼人間、冬和とわが働く警察署の前に立っていた。


 冷静沈着、泰然自若の四字熟語がこれほど似合う男は居るだろうか、否、居ないと断言できる冬和と出会ったのは、三日前。


 配達用のソリの具合を確かめるために、相棒のトナカイ、綾斗あやとと一緒に下界にまで下りて試運転した日だった。休憩中にコンビニの駐車場にソリを置いて、肉まんあんまんを買い求めたところ、駐車場に置いていたソリが見当たらなかったのだ。

 人化した綾斗と共に慌てふためていた時に声をかけてくれたのが、警察官の冬和だったのだ。

 落ち着いた雰囲気、切れ味の鋭い瞳、長身、つっけんどんな物言いながらも、目をじっと見て話を聴いてくれる冬和に、露衣は一目惚れしたのである。


(ソリもすぐに見つけてくれたし。かっこよかったなあ)


 冬和を思い浮かべては、顔を真っ赤にさせた露衣。暫し物思いに耽るも、意を決し、警察署の扉を押して開いたのだが。


「危ない!!!」

「べべっ!?」


 何かが胸に強く突進してきては踏み止まる事もできず。

 あわれ、露衣は道路に背中から身体を強く叩きつけてしまったのであった。


 はらはら、はらはらと。

 露衣は赤い薔薇の花びらがたくさんゆっくり舞う様をぼんやりと見つめてのち、気を失ってしまったのであった。











(2024.12.12)



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