第二章 私の理解者
春
高校の入学式当日、私は私の理解者に出会った。
彼女はセミロングの黒々とした髪が特徴的な美少女だ。
ただ、彼女は普通の美少女じゃない。
凄く冷めてる美少女だ。みんなが浮足立っている中でひとり、彼女は地に足がついた服装をしていた。
それって、『これまでとこれから』が地続きになってることを分かってるってことだ。自分が特別じゃないって、自分は自分でしかないとわかってるってことだ。選ばれた存在だとか、選ばれなかった存在だとか、そういう心底くだらない価値観を捨ててるってことだ。
けれど、そんなふうに感性が冷めていても、独りぼっちは寂しかったらしい。
彼女は、白は、ぶるぶると震えながら、雲一つない春の蒼穹を見つめていた。
一般から外れた感性を持っているのに、一般と同じような感情も持っている彼女は、輝いて見えた。背反する感情の狭間で震える彼女はとても綺麗だった。
白は私が声をかけると、びくりと肩を震わせた。そして、いまにも泣きそうだった顔に、ぎこちない笑みを貼り付けて、体裁を取り繕った。
私は、私の『見た目』のせいで、白が怯えてしまったんじゃないかと思った。中学と同じだと思ってしまった。白もあいつらと一緒で、私を見た目だけで判断する奴だって思ってしまった。
ただ、それは勘違いだった。
白は私の冗談を受けると、私を『普通』のクラスメイトとして見てくれた。私を他の人と同じ、教室でがやがやとしている喧しい人と同じように見てくれた。
私の嗅覚は正しかった!
私の感性は正しかった!
私は私を褒めながら、私を見てくれる白と話した。彼女は私を一人の人間として見てくれた。呆れの溜息を吐いたり、会話に毒を混ぜたり、自然に笑みを浮かべたり、そんな普通の友達として私を扱ってくれた。
私は確信した。
白は私の理解者だって。
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白雪と造花 鍋谷葵 @dondon8989
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