九、【小五】大造じいさんとガン
狩人の大造じいさんは、ガンの群れの頭領「残雪」を狩るため、毎年さまざまな罠を仕掛けては、連敗を重ねていました。
ある時、捕獲して手懐けたガンを囮に使って、残雪の油断を誘おうと試みます。しかしそこへ予定外にハヤブサが乱入します。
残雪は、逃げ遅れた囮役のガンを助けるため、ハヤブサと交戦します。大造じいさんにとっては残雪を撃つ絶好の機会でしたが、銃を下ろします。
ハヤブサとの戦いで負傷した残雪は、大造じいさんを前にして、静かに死を受け入れようとします。
大造じいさんは残雪を手当し、ひと冬のあいだ面倒を見ます。そして次の春、「また正々堂々やり合おう」と見送るのでした。
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老狩人とガンの頭領の、種族を越えたライバル関係を描く、凄まじい傑作です。
正直、小五当時は「なんか渋い話だな」としか思わなかったのですが、大人になってから読み返して心のど真ん中を撃ち抜かれました。
兎にも角にも、山場のシーンが素晴らしいのです。
残雪を撃つために大造じいさんが囮役として手懐けたガンは、野生を失っていたせいでハヤブサの襲撃に対応できませんでした。
一旦は飛び去った残雪でしたが、逃げ遅れたその一羽を守るために戻ってくるのです。
残雪は非常に賢いガンです。人間を警戒し、入念な罠にも気付いて対処するほどの。
そんな残雪が、なりふり構わず、ただただ仲間を助けるために、身を挺して強敵ハヤブサに立ち向かう。
立派なリーダーです。このシーンを読むたび、私は涙が滲みます。大造じいさんが銃を下げた気持ちもよく分かります。
大造じいさん、残雪に対して卑怯な手を使おうとした自分を恥じるんですよね。残雪はただのガンではなく、敬意を持って接するべき相手なのだと。
残雪もまた、大造じいさんを好敵手と認識していたのではないかと思います。だから彼を前にして、堂々と死を受け入れる覚悟だった。
ひと冬を共に過ごし、春にはそれぞれの日々へと別れゆき、次に会う時はきっとまた真剣勝負をする。
「人とガン」ではなく。「狩るものと狩られるもの」でもなく。
「同じ世界で対面する命と命」として。
ふたりの間にしか存在しない、唯一無二の関係性です。
山場を最大限に盛り上げるための伏線が巧みであり、無駄のない構成で、惚れ惚れします。
読後感も清々しい。今後何度も読み返す作品だと思います。
作・椋鳩十、絵・水上みのり『大造じいさんとガン』 光村図書『国語五 銀河』2023年発行版p.220〜237
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