三、【小二】お手紙

 がまくんはお手紙を待つ時間が嫌いです。誰も彼にお手紙を書いてくれないからです。

 そのことを知ったかえるくんは、がまくんにお手紙を書き、かたつむりくんに配達を頼みます。

 二人は一緒にお手紙を待ちます。

 やっと四日後、かたつむりくんが到着します。かえるくんからのお手紙を手にしたがまくんは喜びます。


 ■


 『がまくんとかえるくん』シリーズの一作。有名な絵本のシリーズです。


 このお話。かえるくんはがまくんに、自分が手紙にどんなことを書いたか、前もって教えるんですよね。「僕は君の親友でいられて嬉しい」という。

 手紙が届く前に内容を教えちゃっていいの?と、学習した当時は思いました。

 だけどがまくんにとって大事なのは、「自分のことを思って手紙を書いてくれる親友がいる」ということなのでしょうね。

 私自身、本作で『親友』という言葉を知った記憶があります。


 ポイントとなるのが、配達をかたつむりくんに頼んだこと。彼は足がとても遅いので、がまくんの家に辿り着くのに四日かかりました。

 四日もの間、二人でお手紙を待っていたのです。

 冒頭でがまくんは「お手紙を待つ時間が嫌い」だと言っていました。

 その四日間は、どうだったでしょうね。


 注目したいのは、文末表現です。

 実は本作、地の文の末尾がほとんど「ました」で揃えられています。それはもう執拗なまでに揃えられています。訳者の意図が感じられるほど。

 これによって心地いいリズムができているのですが、唯一、違う文があります。


「かたつむりくんは、まだやって来ません」


 これです。この文、三回も出てきます。

 それだけ二人でかたつむりくんを待っていたのです。

 彼らにとって、とてつもなく幸せな時間だったに違いありません。




作絵・アーノルド=ローベル、訳・三木卓『お手紙』 光村図書『こくご二下 赤とんぼ』 2023年発行版 p.12〜23

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