この時期の結露まじでやばいくない?

白川津 中々

「ちょっとまってくれ冗談だろ」


 朝起きてビックリ。部屋が浅瀬のようになっているのである。

ベッドから下は全て水。いったい何が起きたのかと飛び出しバシャバシャと見回るも流しトイレ洗面台風呂の配管に問題なし。じゃあどこからだと推理していると段ボールが流れ着いてきた。その流れ辿ると、発見。結露だ。窓の結露が滝となり水流を作っているのだ。


 そんなことあるぅ?


 非常に非現実的な事態だが実際に起こっているのであるからこれはもう事実であり現実なのである。目を背けたところで部屋は元には戻らない。解決しなくては。とりあえずベッドに帰還し、枕元に置いていたスマートフォンを手に取って管理会社に電話する。


 ……


「お世話になっております。ユーフラテスハウスでございます」


「あ、すみません。私そちらの管理物件、ハイツナイル501に住んでいる者ですが」


「はい、いかがなさいましたか?」


「あの、結露で部屋が水浸しになりまして」


「なるほど。水位はどの程度でしょうか」


「あ、ふくらはぎくらいです」


「なら大丈夫ですね。夕方には引くと思いますので、それまでおくつろぎください」


……切れた。


 え? これって普通なの?

 いやいやそんなわけないじゃん。もう一回電話だよ電話。


 ……


「お世話になっております。ユーフラテスハウスでございます」


「あ、すみません。先程お掛けいたしました、ハイツナイル501に住んでいる者ですが」


「はい、なにかございましたでしょうか?」


「いや、部屋が水浸しでですね……」


「先ほどもお伝えしましたように、夕方には引きますので」


「いや、そうじゃなくて、おかしいでしょこれ」


「は? 窓は結露しますよね?」


「え、いや、そりゃそうなんですが……」


「だったらしょうがないじゃないですか。水が引くまでお待ちください」


「あの、この物件って、こうなる事分かってお貸ししているんですか?」


「それは勿論です」


「あ、そうなんですね。あの、そのですね。部屋に支障きたすレベルは流石に看過できないといいますか、内見の時も契約の時も教えてくれませんでしたし、せめて借りる前にですね……」


「聞かれましたか?」


「え?」


「結露ってどのくらいですかねって、ご内見やご契約の際、聞かれましたか? 質問いただきましたか?」


「いや、それは……」


「どちらですか?」


「……すみません、してないです」


「左様でございますか。いやぁ、それはもう、そちらから聞いていただかないと。“結露大丈夫ですか”ってこちらにご質問いただきましたらもう、先程のように、正直にお答えしていましたのに」


「いや、あの、限度というか、まさか結露でこんなに水が出てくるなんて……」


「だから結露するのは当たり前だって言ってんでしょうが!」


「あ、あ、す、すみません……」


「お前はないんか? これまで生きてきて結露したとこ見た事ないんか? 窓からバーッて雫が落ちてきてるとこ見た事ないんか?」


「あ、あります、はい」


「だったら先に聞いてもらわないと。こっちでもお答えできませんよそりゃ。聞いてくれたら“結露えぐいっすよー、ははははー”ってお返しできたのに」


「はい」


「で、どうします?」


「え?」


「どうしますかって、これから」


「……夕方まで、待ちます」


「そうですか。それじゃ、もうよろしい?」


「はい。大丈夫です。すみません。失礼いたします……」


 ……


 スマートフォン操作。

 電話帳。実家。


……


「あ、もしもしお母さん。ちょっとごめん、俺、実家帰るわ」

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