02.綺麗な海?

「怖くない?」

「こ、怖いけど、大丈夫だよ!」

「偉いねぇ~、カリーナちゃんは。」


 そんなカリーナちゃんに癒されながら、ダンジョンを駆ける。

 ちなみに、なんでダンジョンって言っているかというと、私がカリーナちゃんをまたお姫様抱っこした時に、「じゃ、洞窟の案内お願いね!」「洞窟?ここ、ダンジョンだよ?」「へ?」ということがあったのだ。

 もう色々と最悪だ。

 この蟹がダンジョンの魔物だったとか、知りたくもなかった。

 まぁ、美味しいからいいけど……。

 ちなみに、「この蟹魔物だったみたい……。」とカリーナちゃんに言ったところ、私と同じく「美味しいからいいや!」とのことだったので、今もその両手には蟹の足が握られている。


「あ、魔物!」

「うん、そうだね!」

「戦うの?」

「いや、逃げるよ!」


 前方にいるのは、大きな蝶型の魔物。

 まぁ、確かに倒すだけなら多分蹴ればいいのだが、流石に子供にはグロいかもしれない。

 というわけで、ここは避けて進もう。


「大丈夫、お姉さんに任せて!」

『キェェェ!!』


 うん、なんか鳴き声きもいな。

 そうして魔物は私達を視認すると、口から何かを飛ばしてきた。

 汚いことこの上ない魔物である。


「捕まっててね!!!」

「フン!」


 ……いや、蟹まで掴まなくてもいいんだけど。

 というか、維持でも離したくないのか、めっちゃ蟹も掴んでるし。

 そんなに好きだったかな、蟹。

 

 そうして私は、ふわふわ飛んでいる魔物の唾液?をよけると、そのいきよいのまま魔物の下を潜り抜けた。

 そしてそのまま魔物に背を向けて走る。

 まぁ、逃げるだけなら楽勝だ。


 そうしてすぐ、ちょうどカリーナちゃんを拾ったところまでたどり着いた。

 ここからは、完全にカリーナちゃん頼りだ。


「カリーナちゃん、お願い!」

「うん、ここまっすぐ!」


 口から蟹を離し、カリーナちゃんがその方向に指を指す。


「次こっち!」

「うん!」

「次はこっち!」


 ―――――――――――――

 ―――――――――――

 ―――――――――

 ―――――――

 ―――――

 ――


「もうすぐだよ!」


 カリーナちゃんが嬉しそうに声を上げた。

 しかし、残念ながらそう簡単にはいかないらしい。

 いや、別に難しいわけではないのだが。


「あ、あれって……。」

「やっぱり、敵?」


 まだだいぶ遠いが、男三人の姿が目に入った。

 怖顔の三人組である。

 なので一様そう聞くと、カリーナちゃんは怯えた様子で頷いた。

 つまり、この可愛い子を殺そうとした私の天敵なわけで……。


「…………逃げるなら出来そうだけど?」

「……うん、お願い。」

「でも、どうせなら軽く遊んで遊んであげようかな。」

「え?」


 ――ドン!

 

 そう言って、私は走る速度をさらに上げた。

 怖さ倍増だろうけど、悲鳴を我慢しているカリーナちゃん偉すぎッ!!!。

 というわけで、相手もこちらを視認したのか、慌てたように剣をこちらに向けた。


「なんだあいつ!?」

「子供!?って、早すぎだろ!!」

「それに、抱いてるのはあの餓鬼か!?おい、逃がすなッ!!!」


 そうして剣先から何かが生まれて……。

 って、ん?何あれ?

 光り?

 赤い玉?


 そうして、そこから何か赤いものが……って、炎!?


 「って、危なッ!!」

 「ちっ、避けたか。」


 避けたかじゃないでしょ!?危ないッて!!!

 こちとらそっちに向けて走ってんだから、せめて近くまで待てよおいッ!!!!


「なんだよあの化け物ッ!!!さらに早くなったぞ!!」

「来るぞッ!!」


 何が「来るぞッ!」だ!

 来る前から魔法撃ってたじゃないかッ!!!

 こちとら魔法使えないんだぞ!?

 遠距離攻撃なんて卑怯だと思わないのかッ!?


「っっ…………。」

「あ…………。」


 少し、やりすぎてしまっただろうか。

 魔法の爆発音や急な回避が続いてしまったせいもあり、彼女は酷く震えていた。

 それでも声を押さえているのは、私の戦闘を邪魔しないためだろうか。


「………………お前たちのせいでっ!怖がってるじゃないかぁぁ!!!」

「はぁ!?」


 ――ドンッ!!


 そう、全部こいつらのせい。

 というわけで、殺っていきたいと思う。

 殴れる距離に入ったので、さらに速度を上げ、魔法を撃った男の懐に入る。

 そして、蹴るッ!!!


「はぁぁぁぁ!!!!!」


 ――ドゴォォォォン!!!


「よしっ!!!」

「な、なんだよこの化け物っ!!!」

「はぁ!?女の子に化け物とか失礼でしょッ!!!!」


 ――ドゴォォォォン!!!


「ちょ、まっ」

「誰が待つかぁぁぁ!!!!」


 ――ドゴォォォォン!!!


「よしっ!」

「………………ぇ?」


 すっきりしたぁ!

 至近距離で魔法を使われたらどうしようかと思ったが、幸いみんな剣で戦ってくれたのでお腹を蹴ったりするだけで済んだ。

 もし魔法なんて撃ってきたら、流石に動きが乱暴になるところだった。

 ちなみに、戦いではカリーナちゃんに負担がないように、蹴る時以外のジャンプを極力避けた。

 だけど……。


「…………あぁ、ちょっと…………力入れすぎちゃったかな……。」


 なんというか、地獄絵図である。

 殴って移動して、蹴る。

 そんな速さと力のごり押しだったのもあり、壁に激突した男達のいう腕やら足やらが魔物みたいになっていた。

 これは、とてもカリーナちゃんに見せられたものではない。


「…………よし、行こう!」

「え……、キャャ――――!!」


 そして私はまた走り出す。

 多分、戦っていた時よりも早く。


 ――――――――――

 ――――――――

 ――――――

 ――――

 ――

 

 「えっと…………ここら辺であってる?」

 「うん、ここのどこかに。」


 ダンジョンを抜け、木々を縫って走ること少し。

 私達は、広大な浜辺にやってきた。

 とても美しい、広大な海。

 

 ――そして、それを台無しにする戦場。


「あぁ?子供?ふざけて」

「うるさい」


 ――――ドゴォォォォン!!!


 先程からダルがらみも多く、せっかくの景色も台無しである。

 まぁ、海賊祭ってことは、この人達全員海賊なのだろう。

 よく見たら、怖い顔が多い気がする。

 

 私だって、怖い顔の人は怖いのだ。

 それが剣を振ったり、魔法を撃ったりしている。

 そんなの、怖いに決まって……。


「死ねや餓」


 ――ドゴォォォォン!!!


 ……………………怖いに決まってる。


「カリーナっ!!!!」

「え?」

「ん?」


 声の方を向くと、一人の女性がそう言ってこちらに走ってきた。

 その周囲には、仲間?と思われる者達が、襲ってくる海賊達を蹴散らしている。

 それも全員が凄い腕で、魔法やら剣やら多種多様だ。


「ママッ!!」


 すると、カリーナちゃんは私の腕から降りて走り出した。

 家族の再会、泣ける話だ。


 「子供っ!?」

 「なんでカリーナぐれぇの餓鬼がここにいんだぁ?」


 そして、驚かれる。

 まぁ、そうでしょうとも。

 子供を助けたのが子供とか、意味わからないよね。

 私もそう思う。


 「君、名前は?」

 「え?」

 

 すると、一人の男が私に話しかけてきた。

 金髪の目の穏やかそうな青年。

 耳が長いから、エルフだろうか。

 ただ、見た目に反して腹黒そうに感じるのは、私の気のせい?

 

 というか、名前?

 いや、名前って言われても…………うーーーん。


 「あのね!あの子が私を助けてくれたの!!」

 「カリーナ、あの子の名前分かる?」

 「ううん、知らない。」


 あぁ、可愛い。

 というか、カリーナちゃんお母さんとそっくりだ。

 お母さんと同じ海色の瞳に鮮やかな赤髪。

 お母さんが美人だから、将来この子も美人さんだろう。


「えっとー?」

「あ、ちょっと静かにしてもらえますか?今、鑑賞中なので。」

「え、あ、え?」


 なんかエルフくんが困っているが、どうでもいい。

 私はただ素晴らしい親子の育みを鑑賞していたいだけなのだ。


 「あのね、ママ!」

 「うん?なに?」

 「あの子、お水とご飯が欲しいんだって!」


 ………………ママ。

 ん?

 なんでだろう。

 なんで今私は…………。


「はぁ…………。とりあえず、水と食料はあげるから、話をきかせてくれないかい?」

「え?あ、はい。」

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2024年12月13日 00:00

記憶探し~記憶のない私は、新たな生を謳歌する~ 天宮まろん @amamiya_maron

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