スキミヤ

めいき~

なにやってんの


「こんばんわ~♪」今日もだれも居ないな……、私は底辺配信者のわさび。こうして、ライブ放送をつけたはいいが、今日も誰も来ないんだろうなぁと思いながら配信を始めいる。ショート動画の周りはいいし、サムネも頑張った。それでも、配信者なんて飽和も飽和で新規なんて殆どいない。今日もチェックを終わらせると、ゲームを始めた。アクションゲームなんかでは直ぐにコメントに反応できないし、流れるのが滝の様だとやはり反応できない事もある。私達みたいなソロ配信者はモデレーターなんかもほぼ居ないのが普通なのでどうしても一人で対応しきれない事がある。荒らしみたいなコメントや、ロクでもないコメントなんて世の中沢山ある。


<ピコン♪>


「こんばんわ~」「あっ、カイドウさんこんばんわ~」だが、こんな配信にも来てくれる人はいるもので、私が楽しく配信できているのはこうした少数の常連さんのおかげだ。


収益を考えるのなら、もっとコメント欄は溢れていた方がいい。でも、雰囲気を大事にするならどれだけコメント欄の質を維持できるかってのが重要だと私は思っている。


「ワサビさん、今日はギャロップ?」ギャロップというMMOの画面が今日の配信の内容だから私は「そうだよ~」と答える。


ギャロップは、話題にこそあがらないが七年もサービスをやっている老舗のMMOだ。当然老舗という事は画質もそんなに良くない。知っているプレイヤーばかりだし、随分前からクエストも更新されていない。


でも、何故か人はいるし。何故か運営されている。だから、私の配信ではギャロップの配信が毎週一回は必ずあるのだけど。ゲームの人気が無いと言う事は、ライバルもいない訳で必然カイドウさんの様なギャロッププレイヤーのたまり場と化していた。


(だから、ギャロップと雑談以外の放送だとまず帰っちゃうんだよね……)


そんな事を思いながらも、ギャロップの画面が映っていてギャロップの放送であればこうして見て行ってもらえる訳で。ギャロップのアーカイブだけは再生数も良いという。


「ウルプ? 手伝おうか?」「今日は視聴者参加枠じゃないからごめんね~」

カイドウさんは、いつもこうして手伝ってくれる。「おっすおっす」「あっ、ルッキーさん」「カイドウ氏、今日はわさびちゃん。ウルプであるか?」「そうらしいよ、参加枠じゃないみたいだから温かく見守るとしようじゃないか」「了解である」


カイドウさんと同じギルドのルッキーさんも、カイドウさんに紹介されて見に来てくれるようになった一人だ。行儀よく見てくれるし、ギャロップの雑談は凄く話題が豊富だ。


特に、失敗談などはこれでもかという程でてくるのにいつも楽しそうにコメントが進んでいく。ギャロップの放送はゲロゲロ動画にはここしかない、だから必然的に五、六人は平均来るし。多いと、何ギルドもここに集結している事がある。


そうなると、私はコメントをチラ見しながらただプレイするだけになる(笑)。


どっちが、視聴者か判らないプレイを強いられ。もはや遠慮もなくなって、離席やらご飯を食べながらすらためらわなくなってきたのが自分でも判る。


「へい、K。洞窟の進み方!」とかいうノリにもコメント欄で「hey、ワサビサンそこを左に行ってダイブだYO」と返してくれるノリ。「ダイブって穴じゃんか?」「そこがショートカットなのdash!」一瞬素に戻るも、「俺をシンジナサイ」まだそのノリを続けるのかと思いながらダイブするとゴールの手前に落ちたりして。


そんな、私達は今配信者として活動してはいるが。カイドウさんはリアルの隣でノートPCを開いて、コーヒーを飲みながらそしらぬ顔で「hey!」とか打っているのをみると実に笑いをこらえるのがいつも大変だったりする。音が入らない様に、お互い注意しながら私達は同棲していた。


他のコメント欄の人達は、これを知らない。


実は、カイドウさんは同じマンションの住人だった。私は三階、彼は一階。

ゴミ捨ての時に顔を合わせ、同じコンビニを利用していた。


私から声をかけたら最初は???という顔をしていたが、コメント欄みたいに話しかけたら「hey!」とか現実でやってて「カイドウさん?」と思わず言っていた。


ハンドルネームかと思っていたら、まさかの(本当の名字)だったのは痛恨の一撃だった。


私達は今、リスナーから徐々にシフトしている。


「わさびさん、コーヒーが切れてるから買ってくるよ」

「カイドウさん、いつもありがと♪」


「また、呼んでくれよ?」そういって、左手のグーを軽く突き出す。

「うん♪」私もそれに合わせてグーをこつんと合わせた。



「カイドウ氏~」「すまねぇルッキー、ちょっくらコーヒーきれたから買いに行ってくる!」「相変わらず、カイドウ氏はうっかりであるな。先にボス前まで進めるので、オートランだけセットして欲しいもじゃ」そのルッキーは……、私達と同じコタツに入っていて。「コメント欄と配信者でここに居ない同PTのメンバーは雪見さんだけとは思わないでござろうな」「雪見さんは、同じマンションじゃ流石にないだろうからな(笑)」


私は、実は言おうかどうか迷っていた。


(このマンションの大家さん、雪見さんなんだよなぁ……)


この事は、今このバカ話している二人には黙っておこうと思う。

だって、その方が面白そうじゃない?



<おしまい>

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どうでもいい話:花言葉は清純または寛大。

時期は11月蕾をつけるのは10月で開花は三月頃ミカン科の低木で色別に花言葉がある。別名はシキミアなどがあります。和名「深山樒(ミヤマシキミ)」

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