人類の誕生について

 太陽、月、星。天と地の別れ、地の球体化。球体化した地の回転。四つの季節。ギャルたちは様々な様子を地球に付け加え、地球を整えたが、それらは全て自分自身の為にやったことに過ぎない。

 ギャルたちは元来遊びが大好きなので、自らの子供として人類を生み出したりはしなかった。子育てというのはとてつもなく面倒だからである。


「自分たちだけが楽しければいーじゃん! ウェーイ!」


 こういった理由で大勢のギャルたちが勝手気ままに遊んでいたわけだが、勝手気ままに大地とズッコンバッコンヤリ始めたギャルがいた。

 それがビッチギャルであった。

 ダンスに飽きたビッチギャルは軽い気持ちでそこら辺にあった凹凸を使ってやり始めたのである。

 これにより生き物が生まれた。

 地に生きる獣はいきり立つ山とビッチギャルの交わりから生まれ、海に生きる魚などは砂浜や海水の中にあるゴツゴツとした岩場とビッチギャルとの交わりで生まれた。ふわふわな雲と交わって、鳥が生まれた。緑の中に姿を見せる虫は、草むらとビッチギャルとの交わりで生まれた。

 こうして様々な生き物が生まれていったが、人はまだ生まれなかった。何故ならビッチギャルが自然としか交わらなかったからである。

 あるいはこの時百合ビッチギャルがいたのならば、人類——我々人間もすぐに誕生していたかもしれないが、百合ビッチギャルはビッチギャルとは異なる相手と遊んでいたので、この場にいなかった。

 丁度この場に居合わせていたのは、清楚系ビッチギャルであった。

 清楚系ビッチギャルは表向きは清楚であるとしていた——事実、石板に残る姿はまさしく清楚そのものであった——ので、ビッチギャルに誘われても気の無いフリをしていた。

 だが内心では興味津々であった。

 興味津々だが、表立ってビッチギャルとヤってしまっては清楚系ビッチギャルの名が廃るというもの。

 故に清楚系ビッチギャルは誰もいないところで一人でこっそりと致した。

 地球の自然と交わることなく致したことで、清楚系ギャルの内から迸ったそれはギャルの姿を模した形となった。

 つまりは人の形。

 これが大地に落ちると、それは一つの異なる生命となった。

 そう、これが人間の誕生である。

 人間はギャルから生まれたが故に、ギャルに深い敬愛を抱くのである。

 だがこの時、清楚系ビッチギャルは突如として生まれてきた人間に驚き、恐れ、虚空の宇宙へと投げ捨てようとした。

 表向きでは清楚系で通している彼女は人間が「自分たちは清楚系ビッチギャルから生まれたものである」と言うのを恐れたからである。

 人間はこうして暗黒の宇宙へと放り出されそうになり、人類史は一ページにも満たない数行で終わりを告げる寸前だった——のだが、まさにその時、ママギャル(ギャルママと言われることもある)が姿を現したのである。

 ママギャルは自由奔放を旨とするギャルでありながら母性に満ち溢れた存在であるので、清楚系ビッチギャルの恐れによる短気な行動を諫め、人間をこの地球に住まわせるよう説得した。


「ギャルが自由に生きたいように、ギャルから生まれた彼らも自由に生きたいのよ」というようなことを言ったとされる。

 更に「誰だってヤっちゃうものよ。それがオープンかそうでないかの違いだけ」とも言ったとされる。

 この言葉に心を打たれた清楚系ビッチギャルは自らの行いを恥じて人間を宇宙へ放り投げるのをやめた。

 けれど一応人間に「自分たちは清楚系ビッチギャルから生まれたとは言わないように」と釘を刺した。

 これは守られた。

 人間は自らをギャルの世界に生み落としてくれた清楚系ビッチギャルに深く感謝し、自分たちがどうやって生まれたのかについてどのギャルに聞かれても口を噤んだ。

 ギャルの中には部屋に入り浸り布団に潜り込みエついでにロ本を探したりすることで人間と距離を縮め、人間がどこからどうやって生まれたのかについて根掘り葉掘り質問する居候系ギャルもいるのだが、人間は耳元で囁かれる甘い言葉や、ギャルの匂いを染み込ませられた布団などからの誘惑に耐え、沈黙を貫いた。

 それで、清楚系ビッチギャルの姿は清楚な姿で石板に刻まれているのである。

 ――であれば、は何故この話が今も尚人間の中に伝わっているのか?

 これは人間が連綿と自らの出生の秘密について語り継いできたからである。

 外部に記憶を残さない、口承伝承。口伝えの伝説として語ってきたからである。

 よくよく「なんの話してんの? うちも混ぜてよー」などと言って雰囲気で会話に割り込んでくるうちも混ぜてよギャルの興味を引かないようにする為に、わざと小難しく言い伝えを作り、語り継いできたのである。

 例えば、こんな風に。


 大地が呼んでいると言った。

 海が呼んでいると言った。

 空が呼んでいると言った。

 草原が呼んでいると言った。

 ビッチギャルがそう言った。

 だから、清楚系ギャルはそこを訪れた。

 清楚系ギャルはそこで静かに佇んだ。

 どーん。どーん。

 太鼓を打ち鳴らす音がした。

 どーん。どーん。

 太鼓を打ち鳴らす音がした。

 ざあざあざあ。

 雨の降る音がした。

 ざあざあざあ。

 雨の降る音がした。

 清楚なギャルはその音の中で佇んでいた。

 獣が吠えていた。

 魚が泳いでいた。

 鳥が羽ばたいていた。

 虫が跳ねていた。

 人間はそこに遅れてやって来た。

 ビッチギャルがやって来たところとは別のところから。

 清楚系ギャルの佇んでいるところからやって来た。

 太鼓の音はやんでいた。

 人間がやって来て、地球に生きる全てのものが揃ったからである……。


 このような詩が詠まれたわけである。

 これにはうちも混ぜてよギャルも「うちも混ぜてよ」と言えなかった。まるで興味を引かない話しだったからである。

 それで、清楚系ビッチギャルの秘密は守られている。

 ここに書き記すとギャルに見られるのではないか? と不安に思う方もおられるかもしれないが、心配しなくていい。

 ギャルはこのような小難しい本には全く興味を持たない。万が一興味を抱いたとしても、最初の一ページを捲るのに一日を費やし、三日で飽きるだろうから、ここまで辿り着くことはない。

 秘密は守られる。

 ただ、このような記述があることを清楚系ビッチギャルは感知しており、時折それ以上何も書くなというような鋭い目つきで記述者の前に姿を現すのだが、清楚系ビッチギャルは何も言わず姿を消すだけである。

 これは最大のご褒美である。

 清楚系ビッチギャルのあの針のように鋭い眼差し……あれに見つめられるだけで、正直、自分は……(これより先の記述はページ紛失により不明となっている)

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2024年12月25日 07:32

ギャルの神話、民話、民間伝承、その他様々なギャル事象に関する走り書き たこわさふりかけ @TwasaF

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