第8話

偵察



村が再建に向けて動き出してから数日が経った。デバッグたちは、次の行動の準備に集中していた。防衛の先にあるのは攻勢――奴隷商人の拠点を叩くことが今回の目的だ。


ある朝、デバッグ、ガルズ、ロア、リズの4人は準備を整え、村を出発した。リズが指し示した地図を頼りに、目的地を目指す。


「奴らの拠点は、森の中の高台にある。木々に隠れているが、物資の動きが多い場所だ。」


リズが説明すると、ガルズが槍を握りしめながら尋ねた。


「見張りはどれくらいいると思う?」


「最低でも10人、多ければ20人以上。奴隷たちを見張る連中も含めるとそれくらい。」


デバッグは頷きながら、全員に指示を出した。


「まずは周辺を調査する。見張りがいれば排除し、拠点の状況を把握する。無理はするな。」


全員が了解の意を示し、森の中へと足を踏み入れた。




森の中は薄暗く、木々が密集しているため視界が悪かった。デバッグたちは一列になって静かに進む。


「ここからは声を出すな。足音にも気をつけろ。」


デバッグの低い声が緊張感をさらに高めた。その時、リズが手を挙げて止まる。


「待って……あそこ。」


彼女が指差した先には、木々の影に人影が見えた。槍を持った奴隷商人の見張りだ。


「見張りだな。一人だけか。」


デバッグは素早く状況を把握し、ガルズに目配せをした。


「静かに後ろから回り込め。声を出させるな。」


ガルズは無言で頷き、物音を立てずに見張りの背後に近づいた。そして、そのまま腕を締め上げて気絶させる。


「うまくいったな。」


ロアが小声で感心する中、デバッグは見張りの持ち物を調べた。そこには簡単な地図があった。


「これは……奴らの拠点の配置図か?」


地図には建物の位置と物資の倉庫が記されていた。


「これで奴らの規模がわかる。次の行動に役立つな。」


デバッグは地図を丁寧に折りたたみ、全員に先を急ぐよう指示を出した。




拠点に近づくと、木々の間から奴隷商人たちのキャンプが見えてきた。数棟の小さな建物が並び、その周囲を見張りが巡回している。中央には物資の倉庫と思われる建物があり、奴隷たちが繋がれている姿も見えた。


「全部で15人くらいか。武器を持っている奴が10人、他は奴隷の監視役だな。」


デバッグは状況を把握しながら、計画を練り始めた。


「夜まで待つ。見張りの数が減ったところで動く。」


リズが建物を指差しながら言った。


「中央の倉庫が物資の集積地よ。あそこを狙えば奴らを混乱させられる。」


「まず見張りを排除する。その後、物資を破壊して奴隷たちを解放する。」


デバッグの言葉に全員が頷き、それぞれの役割を確認した。




夜になると、拠点は静かになり、見張りの数も減った。デバッグたちはその隙をついて行動を開始した。


「リズ、音を立てて見張りを引きつけろ。ガルズとロアで無力化する。」


リズが木の枝を折る音を立てると、見張りがその方向に近づいてきた。隙を見てガルズが槍を構え、素早く動きを封じる。


「これで一人目だ。」


次々と見張りを排除し、物資の倉庫に近づく。中を確認すると、食料や武器が山積みになっていた。そして、その奥には繋がれた奴隷たちの姿があった。


「助けて……誰か……」


弱々しい声に、デバッグは静かに答えた。


「安心しろ。俺たちは敵じゃない。」


彼は奴隷たちの縄を解きながら指示を出した。


「ここから静かに森に逃げろ。大声は出すな。」


奴隷たちは頷き、指示通りに行動した。




デバッグたちは物資に火を放ち、奴隷商人たちの注意をそちらに向けた。その間に奴隷たちを安全な場所へ移動させる。


「これで奴らの物資は台無しだ。」


ガルズが笑いながら言うと、ロアも槍を肩に担ぎながら答えた。


「奴らの顔が見たいもんだな。」


デバッグは冷静な表情で全体を見渡した。


「物資を失った奴らは混乱する。次の一手を考える時間を稼げる。」




夜明け前、デバッグたちは奴隷を解放し、村へ戻った。村人たちは彼らを暖かく迎え、手当てや食事を提供した。


「助かったよ……ありがとう。」


解放された奴隷の一人が涙を流しながら礼を言う。その姿を見て、デバッグは静かに言った。


「これが俺たちの役目だ。」


だが、その目には次なる戦いへの決意が宿っていた。


「これで終わりじゃない。奴らを完全に排除するまで、俺たちは進む。」


第8話(完)




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

- デバッグ帝国記 ~転生した軍参謀、荒地を統べる~ 桓譲 @sometime0428

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画