第7話 脅威の根を断つために

村が復興に向けて動き始めた頃、デバッグは新たな計画を胸に抱いていた。エナの死から得た教訓は、ただ守るだけではいずれ限界が訪れるという現実だった。彼は村を守るためには、外部の脅威を根本から取り除く必要があると考えていた。


ある夜、村の広場に村人たちを集め、デバッグは静かに口を開いた。


「皆、聞いてくれ。この村を守るために、俺たちは動かなければならない。」


彼の言葉に村人たちはざわめいた。


「動くって、どういうことだ?」


ロアが尋ねる。


「防衛だけではいずれ限界が来る。次に奴隷商人が来る前に、俺たちが先手を打つ。」


その言葉に村人たちは驚きと不安の表情を浮かべた。しかし、誰も反対の声を上げなかった。エナの死が村全体に刻まれたからだ。


「奴らの拠点を見つけ、壊滅させる。それがこの村を守る最善の方法だ。」


デバッグの強い意志を込めた言葉に、村人たちは静かに頷いた。




翌朝、デバッグはガルズを伴い、村を出発した。目的は奴隷商人の拠点を探ること。


「情報を集めるためには、まず奴らが辿った道を追う必要がある。」


ガルズは槍を肩に担ぎながら頷いた。


「どんな連中か分からないが、見つけ次第俺が始末してやる。」


デバッグは冷静に答えた。


「感情で動くな。まずは情報が必要だ。」


二人は焼け跡のある廃村にたどり着いた。そこには、かつて人々が住んでいた形跡が残されていた。


「ここは……奴らが襲った村か。」


ガルズが呟く。デバッグは地面に残る足跡や車輪の痕跡を調べながら言った。


「この方向に進んでいる。追ってみよう。」




さらに進むと、一人の若い女性が姿を現した。彼女は疲れ切った表情を浮かべ、ボロボロの衣服をまとっていた。


「お前たち、何者だ?」


彼女の問いに、デバッグは冷静に答えた。


「村を守るために動いている。お前は?」


彼女はしばらく警戒していたが、やがてポツリと答えた。


「リズ。奴隷商人の捕虜だったけど、逃げてきた。」


その言葉にガルズが目を見開いた。


「一人で逃げたのか?」


リズは小さく頷いた。


「必死だった。でも、奴らの仲間が近くにいるかもしれない。」


デバッグは彼女に手を差し出し、提案した。


「リズ、俺たちに協力してくれないか? 奴らの拠点を探すためには、お前の情報が必要だ。」


リズは一瞬驚いたようだったが、やがて力強く頷いた。


「分かった。奴らを倒せるなら、協力する。」




村に戻ると、リズの存在に村人たちは驚きながらも受け入れた。


「彼女も奴隷商人の被害者だ。みんなで支えよう。」


デバッグの言葉に、村人たちは静かに同意した。


リズは少し戸惑いながらも、村の暖かさを感じ始めていた。


「こんなに優しい人たちがいるなんて、信じられない。」


その呟きを聞いたリクが笑顔で言った。


「僕たちは家族みたいなものだからね!」


リズはその言葉に微笑み、少しだけ肩の力を抜いた。




夜、デバッグはリズから情報を得た。


「奴らの拠点はこの地図のこの辺り。物資を運ぶ馬車が頻繁に出入りしているはずだ。」


デバッグは地図を見つめ、静かに頷いた。


「まずは偵察を行い、敵の数や配置を確認する。その後、奇襲を仕掛ける。」


ロアとガルズに計画を説明すると、二人ともすぐに立ち上がった。


「俺も行く。エナのためにも、奴らを許せない。」


ガルズもまた力強く言った。


「俺が前線に出る。奴らに思い知らせてやる。」


デバッグは二人を見て頷き、静かに言った。


「これが俺たちの第一歩だ。必ず成功させる。」




翌日、デバッグ、ガルズ、ロア、そしてリズの4人は偵察に向けて準備を整えた。村の若者たちは後方支援のための訓練を続け、村全体が一つの目標に向けて動き始めていた。


エナの死から立ち上がった村の人々は、未来への希望を胸に秘めていた。そして、その希望を現実にするための戦いが、静かに幕を開けた。




(第7話 完)




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