6年後…
6年後、ロゼ=パーク 16歳──
ロゼ=パークは15歳で冒険者となり、今では16歳。
1年の間に彼は数多くの魔獣を討伐し、少しずつ冒険者としての名を広げてきた。
しかし、その名声はまだ遠く及ぶものではない。
ロゼは特別な力を持つものの、それを公にすることはなかった。
彼の腕に宿る魔獣の力、その正体を知る者はほとんどいない。
普段、彼はその腕を隠すために手袋をつけている。
魔獣の力を誇示することなく、あくまで素手で戦うようにしている。
周囲には、彼がただの若き冒険者だとしか思われていなかった。
だが、その戦闘スタイルは他の冒険者を圧倒していた。
魔獣の腕から流れる膨大な魔力を巧みに使いこなすロゼの戦いは、まるで魔法のように鮮やかで、力強い。
だが、同時にその力には危険が伴っていた。
魔力の質は依然として低く、そのため過剰に力を使うと暴走してしまう。
ロゼはそのリスクを抱えながら、戦い続けている。
ある日のこと、小さな村から依頼が舞い込んできた。
魔獣が現れ、村を脅かしているという。村の長老から依頼を受け、ロゼはその魔獣を討伐するために出発した。
だが、村の人々はロゼを知っている者などいなかった。
名もなき冒険者として、村に足を踏み入れる。
村人たちは、必死の思いで彼に頼んだ。
「頼みます、冒険者さん。この村を守ってください」
ロゼは静かに頷き、心の中で自らの使命を確認するように、その目を細めた。
彼の目に迷いはなかった。
魔獣を討伐し、その実績が少しでも自分の名を広げることを望んでいた。
そして、何よりも、シルヴァに再び会うために、自らの力を証明することを決意していた。
その日、ロゼは村を後にし、魔獣の足跡を追って森へと足を踏み入れる。
足元は重く、深い森の中はどこまでも静寂に包まれていた。
だが、その静けさの中に潜む、何かが不安を掻き立てる。
魔獣の気配を感じ取り、ロゼは息を殺しながら進んでいった。
やがて、深い森の中に魔獣が現れた。
巨大な爪を振るい、怒り狂ったようにロゼに向かって突進してくる。
魔獣の目は血走り、牙をむき出しにしてロゼを捕らえようとしていた。
だが、ロゼは動じなかった。
冷徹な表情で、その動きを見極める。
彼はあえて魔獣の前に立ち、身をかがめると、瞬時にその腕を使って身をかわしながら魔獣の背後に回り込んだ。
その腕に宿る魔獣の力が、まるで彼の意思の延長のように自在に動き、魔獣の動きに合わせて加速した。
「ふん来いよ。俺に勝てるわけがねえかよ」
ロゼは呟くと同時に、魔獣の背中に強烈な一撃を繰り出す。
その一撃が魔獣の皮膚を引き裂き、魔力が爆発的に魔獣の身体を貫いた。
魔獣はうめき声を上げながら崩れ落ち、地面に沈んでいった。
その瞬間、ロゼの心臓は静かな高鳴りを感じた。
魔獣の腕から流れる魔力が、どんなときでも暴走する可能性がある。
少しばかりの恐怖があった。
それが今、目の前に見えていた。
「これが、今の俺の力だ」
ロゼは戦いを終え、村に戻る。
依頼を完了させ、村人たちから感謝の言葉を受け取るが、心の中は静かなものだった。
名声を得るために戦っているわけではない。
彼の目的はただ一つ、シルヴァを見つけ出すことだ。
それが、どれほど遠くても、どれほど時間がかかろうとも、ロゼは歩み続ける決意をしていた。
村の外れで一人、夜の空を見上げながらロゼは呟いた。
「シルヴァ、お前は今どこにいるんだ…?」
あの日、シルヴァが儀式を行い、村が崩壊した。
それからずっと、ロゼは彼を追い続けていた。
親友に裏切られたことで、ロゼの心には深い傷が残っていた。
彼は決してシルヴァを許すことはない。
復讐のため、そしてシルヴァに再び会うために、ロゼは戦い続けることを誓った。
「お前を絶対に見つける。どんなことがあっても、俺はお前を許さない」
ロゼは手袋を外し、魔獣の腕を見つめる。
力は彼の身体の一部となっている。
しかし、その力が暴走しないように、彼は常に冷静でいなければならなかった。
手袋を元に戻すと、彼は再び旅路を歩き出す。
その足取りは重く、けれども確かなものだった。
「シルヴァ、お前のことを絶対に見つけて、俺はお前に復讐する」
ロゼは未来に向かって歩き出す。
そして、どんな困難が待っていようとも、決して足を止めることなく進み続けるのであった。
魔力の尽きない冒険者 〜赤ちゃんの頃から魔力を鍛え続けていたら尽きない身体になっていた〜 さい @Sai31
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