きみの自販機
@SapporoArtForest
第0話
私だって自分が欲しい。正直テンプレすぎる並び方に飽き飽きしている。数字もくだらない。一度公取委に怒られてみてほしいほど、どこに行っても見慣れた数字表記。新鮮味があるのは富士山みたいな高所とオリエンタルランド夢の国だけ。出来ることならば、そういった所に産まれたかった。管理会社ガチャ外れた。死んだ顔したサラリーマンは、購入後の7777見てくれないし。
爽健美茶が、麦茶に取って代わられた。私でしか買えなかったからこそ、私は大切に思っていたのに、最近の流行ということで日本の素晴らしい伝統的なティー〈麦茶〉に交換させられた。あー管理会社万歳万歳。こうなればもう私だろうが他の誰だろうが売ってるものはほとんど変わらない。客が私を使う意味がない。いえば、アイデンティティーを失ったと同じほど、寧ろ私は消滅した。
向かいの自販機は私と違う。あいつコーヒーしか売ってない。驚くべき陳腐な品揃えに嫉視する。富士山のやつだって、4枠使って1つの綾鷹売ってる。私の綾鷹は1枠しかないし、ましてや隣にからだすこやか茶Wまで置いてる。流石にからだすこやか茶はコンビニでいいじゃないか。夢の国に至ってはまず5枠しかない。それでいて筐体がベイマックスだ。羨ましいにもほどがある。下唇を嚙んでも嚙み切れない。私もそこまで自分を出してみたいものだ。世間に最適化した結果無個性になった私と、独自の軸と好みをもっているからこそアイデンティティーを決して失わないあいつ。わざわざ比べたくはないが、そうともいかないものである。
読者、きみはどんな自販機かな。
きみの自販機 @SapporoArtForest
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます